ニッチとは？　分野別の意味やビジネスでの使い方を分かりやすく解説

『ニッチ』という言葉をご存じですか。ビジネスにおいて『ニッチ市場』という言葉を耳にしたことがある人もいるでしょう。最近では、『ニッチな趣味』『ニッチな商品』など、一般的にも広く使われています。

『ニッチ』はさまざまな分野において、それぞれの意味を持っているのです。この記事では、『ニッチ』の意味や類語を紹介するので、理解して日常生活で使いこなせるようになりましょう。

ニッチとは何？分野別の意味

『ニッチ』とは『隙間（すきま）』や『くぼみ』のことで、『狭い場所』全般を意味する言葉です。ビジネスを始め、建築や生物学、日常生活で用いられます。この章では、それぞれの分野における意味を説明していきましょう。

ビジネスにおける『ニッチ』

『ニッチ』は、ビジネスシーンで使われることが多い表現です。以下のようにさまざまな表現で用いられます。

特に中小企業にとって、既存サービスや商品における穴場は無限の可能性を秘めているマーケットです。生き残るためは、このような市場の隙間を狙うマーケット戦略がカギになります。

建築における『ニッチ』

建築における『ニッチ』とは、壁の一部をくり抜いて作られるくぼみ部分のことです。下駄箱や造り付けのキャビネットの上、間接照明を設置する部分など、さまざまな壁面にくぼみを取り入れている家が多く見られますね。

そのくぼみ部分に、例えばアート作品や花、小物などを置くことで、空間を有効かつおしゃれに演出できるメリットがあります。

生物学における『ニッチ』

生物学では『生態的ニッチ』という表現があり、生態的地位を意味します。これは、生物、植物などの特定の種が占める役割や、環境条件のことです。

このように、食物連鎖や繁殖場所など、その種に適応した生態的役割を決定づけることに使われます。

日常における『ニッチ』

日常でも、一般的に知られていないことに興味を持つことを『ニッチ』と表現します。個性的かつマニアックな趣味を『ニッチな趣味』、マニアックな人や風変わりな人は『ニッチな人』というように使われることがあるようです。

ニッチの類語と言い換え

ビジネスにおける『ニッチ』にはさまざまな言い換えがあります。この章では、類語と言い換えを紹介するので、参考にしてください。

差別化

よく聞く言葉として『差別化』があります。これはほかのサービスや製品と異なった特徴をアピールして、優位性を打ち出す戦略です。この戦略によるサービスや製品の提供によって、ニッチ市場での成功が決まるといっても過言ではありません。

ブルーオーシャン

競争の激しい市場を『レッドオーシャン』といいますが、その対極にあるのが新しい市場を開拓する『ブルーオーシャン』です。既存市場の隙間をターゲットするニッチと異なり、未開拓の市場を開拓し事業を展開する戦略になります。

そのため、他社との競合がなく未知数ではあるものの、高成長や高収益の可能性があるのです。

傍流

傍流とは、本流から分かれた独自の方向性や特徴を持つ分野や市場のことを指します。ほとんどのニッチ市場は、このような『傍流』に位置づけられるといっていいでしょう。

ビジネス用語としてのニッチの条件とは

『ニッチ』をビジネスで使う条件は大まかに３つあります。

それぞれ説明するので、上記に当てはまらない場合は使用を避けましょう。

ビジネスとしてまだ大きく成長していない

大企業や多数の競合が参入しないニッチ市場は、将来の成長が期待できます。競合が少ないぶん、初期参入者が独自のポジションを確立しやすい利点もあるでしょう。

市場規模が小さい

ニッチ市場は潜在需要があるものの、市場規模が小さいため誰も手をつけていません。そのため、少数の顧客に特化したサービスや商品を提供したビジネスを展開できます。

競合が少ない

ニッチ市場は大企業など競合他社が少ないため、独自の顧客基盤を築きやすい状況です。この環境が、ビジネスの成功につながる可能性を秘めています。

ビジネスにおけるニッチのメリットとデメリット

この章では、ビジネスにおけるニッチ市場のメリットとデメリットを解説します。正しい使い方をするために、しっかり理解しておきましょう。

メリット

ニッチ市場のメリットは、市場の隙間を専門にするため競合が少ない点です。大企業のサービスや商品に満足していない顧客を取り囲み、さらに大きなビジネスに展開する可能性を秘めています。

競合が少ない

ニッチ市場は、大企業や多くの競合が興味を持たない小規模なレベルです。そのため、競合が少ない環境でビジネスを展開できます。競合が少ないことによるメリットは以下の通り。

特定の需要に対応しやすい

特定のターゲットや顧客の要求に対して、きめ細かく対応できるのも、ニッチ市場ならではの特徴。例えば、特定のアレルギーに対応した食品や、趣味に特化したサービスや商品など、個別のニーズを満たすことが可能です。

独自性や専門性をアピールできるため、顧客満足度やロイヤルティを高められます。

利益率を維持しやすい

ニッチ市場では、ほかでは手に入らないサービスや商品を提供するため、価格競争に巻き込まれにくい利点があります。そのため、プレミアムな価格設定が可能です。

特定の顧客は、多少高額でも自分のニーズに合ったサービスや商品を選ぶ傾向があります。このように、特定の市場に集中して効率的なマーケティング戦略を展開し、高い利益率を維持しやすくなるのです。

デメリット

特定の市場をターゲットにするため、市場や収益の規模が限られる点が何よりデメリットともいえるでしょう。展開次第では他社が参入して競合が激しくなる可能性があるため、事業を進めるにあたってはマーケット動向の観察が必要です。

市場規模が小さい

ニッチ市場の最大のデメリットは、市場規模が小さいこと。特定のニーズに限定された市場のため、ターゲットとなる顧客数や取引量が少ないのがほとんどです。大規模な成長や拡大のための戦略が必要で、場合によっては売上の伸びが頭打ちになるリスクがあります。

ある程度の専門知識が必要になる

ニッチ市場で成功するためには、顧客のニーズに対する理解と専門的な知識が不可欠です。そのため、企画開発や販売戦略などマーケティングにおいて、高度な専門性を身につけなければなりません。

市場状況により利益が減少する可能性がある

ニッチ市場は、特定の顧客層やニーズに依存するため、市場の変化に左右されやすい面があります。経済状況の悪化や顧客嗜好の変化などにより、ニッチ市場自体が縮小する可能性が否めません。

例えば、特定のスイーツや食品が流行している間は高い需要があっても、競争激化や需要減少によって利益が減少してしまう、などがあげられます。

『ニッチ』の意味を知って正しく使いこなそう

本記事では、ビジネスで多く使われる『ニッチ』を中心に、言葉の持つ意味や類語だけでなく、ニッチ市場のメリットやデメリットも解説しました。

『ニッチ』はさまざまな分野で使われる表現です。ビジネス、建築、生態学、日常におけるニッチの使われ方は、それぞれ意味が異なります。正しく理解し、シーンごとに適切に使いこなしていきましょう。

---

[文・構成／grape編集部]