京急電鉄「多額の現金をお持ちのお客様へ」 貼り紙の意味深いメッセージに「天才だ…」
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主に高齢者が、事件や事故に対する示談金などを名目に、親族を装った犯人から金を騙し取られる『オレオレ詐欺』。
広く知られている特殊詐欺の1つですが、被害の勢いはとどまることを知りません。
警察などが注意喚起に苦心する中、2025年9月、東京都品川区にある京浜急行電鉄の北品川駅構内で、特殊詐欺への注意を呼び掛ける貼り紙が、SNS上で注目を集めました。
思わず気になり、実際に駅へ足を運んだ筆者。貼り紙を見て「これは効果的かつ、優しい注意喚起だ…!」とうなりました。
SNS上でも「天才」「詐欺師も嫌がりそう」などと絶賛の声が相次いだ秀逸な貼り紙が…こちらです。
多額の現金をお持ちで、息子さんやお孫さんと、北品川駅でお待ち合わせのお客さま!
伝言がございますので、駅事務室へお越しいただき、駅係員にお声掛けください。
お分かりでしょうか。実はこの貼り紙の内容は、犯人に現金を手渡すために駅で待ち合わせをしている人に向けた注意喚起なのです!
『オレオレ詐欺』の主なパターンが、犯人がトラブルに巻き込まれた孫や息子を装って電話をかけ、駅で待ち合わせる『受け子』に現金を受け渡すもの。
もし犯人とやり取りをしている人が貼り紙を見れば、「まさに自分の状況そのものだ…。おかしい」と平静を取り戻し、詐欺を未然に防げるでしょう。
構内の貼り紙は、券売機の隣のほか、渡り廊下など計4カ所に掲示されていました。
文章は、太い赤字やアンダーラインで強調しており、目に留まりやすいですよね。
秀逸な貼り紙を考案した京浜急行電鉄を取材すると…
実際の貼り紙を見て「どのように思いついたのだろう」と気になった筆者は、京急電鉄の広報担当者を取材。
貼り紙の掲示を始めたいきさつを聞くと、次のような回答がありました。
2017年頃から、駅員が高齢の利用客から公衆電話の場所を聞かれることがあったんです。事情をうかがうと、ほぼ『オレオレ詐欺』で、そのたびに警察に連絡をしていました。
コロナ禍で改札口に駅員が常にいられなくなると、公衆電話の場所を聞く利用客はいなくなりましたが、利用客の詐欺被害に関する警察からの問い合わせは減らなかったんです。
駅として『オレオレ詐欺』を防止できる手立てがないかと考え、この貼り紙を掲示することになりました。今は北品川を含む6駅で掲示しています。
どうやら北品川駅は、高齢者が犯人に現金を受け渡す場所として指定されることが多かった模様。
駅員を頼った高齢者は携帯電話を持っておらず、親族を名乗る犯人とやり取りをするために、公衆電話の場所を探していたのでしょう。
貼り紙の掲示後、高齢者が実際に駅員に相談した事例はなかったといいますが、利用客が安心できる環境作りにひと役買ったことは間違いないですね…!
また、貼り紙の文章を考える上で工夫した点を聞くと、このように答えてくれました。
文章は駅員が作成しました。「詐欺」という言葉を使うと被害に遭いかけている利用客が駅員への声かけを躊躇(ちゅうちょ)するのではないかと考え、あえて「伝言があります」という文言にしましたね。
「伝言があります」という柔らかい言葉には、「駅の利用客を傷つけず、さりげなく守りたい」という思いやりが感じられるでしょう。
京浜急行の駅員たちは、多くの人が安心できる環境づくりのために、日頃から利用客とのコミュニケーションを重視しているといいます。
常に利用客を気にかけている駅員だからこそ、工夫と優しさが詰まった貼り紙のアイデアがひらめいたのかもしれませんね…!
[文・構成・取材/grape編集部]