【『大奥』感想1話】 冨永愛の鮮烈さと中島裕翔の純粋さが奏でる極上の協奏曲
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Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2023年1月スタートのテレビドラマ『大奥』(NHK)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
小説やコミックを映像化したドラマや映画を見るたび思う。
文字や紙面が動画としてあるいは実写として動けばインパクトは大きい。とりわけ原作に対して愛情が注がれていると分かる実写化には感動するし、深い感謝の念がわく。
それでも、その原作者が最初に作品世界を構築しようとした衝動と情熱、一つの世界を立ち上げ、最後に閉じるまでの膨大なエネルギーは、やはり原作者の中にこそあるものだろうと思う。
原作の映像化は、その無二の情熱をより触りやすい形で解釈し、視聴側に提示するものだ。作曲者と演奏者のようなものだと思っている。
だからこそ、そこに楽譜があれど決して誰が弾いても同じではない。
ストーリーは決まっているから脚本は誰でも大差ないなんてことはない。
衣装を整えて無難に演じればそれで良しでもない。
冨永愛と中島裕翔の魅力
NHKドラマ10『大奥』(火曜22時)初回を見た。
何はともあれ冨永愛、である。
NHKから最初に配役の発表があった時、なるほどという感触はあったし、おそらく原作ファンの多くが同様に感じたと思うが、今回その『なるほど』のレベルをはるか斜め上に超える八代将軍・徳川吉宗を魅せてくれた。
衣装に吞み込まれない立ち姿、歩く姿、鋭い目線、迫力ある一喝。とても初めての時代劇とは思えない堂々たる存在感である。
インタビューで冨永本人も歴史や時代劇が好きで、いつかオファーが来る日のために乗馬や殺陣の練習を積んでいたと語っていた(通常の乗馬に加えて、今回時代劇としての乗馬も訓練したとのこと。さもありなんの人馬一体の疾走だった)。
※写真はイメージ
美しい束髪をなびかせて馬を駆る姿一つで、彼女は原作のファンも、時代劇のファンも、ここから男女逆転大奥の世界を見るファンも、がっちりとわしづかみにしたのである。
全編に哀切漂う原作において、吉宗はある意味清涼剤のような存在であり、見る側を特殊な物語世界に手引する『掴み』の役割でもある。見事な初手だった。
そして、中﨟・水野祐之進として、冨永愛の将軍吉宗の強烈な魅力に寄り添った中島裕翔の素直な演技も讃えたい。
昨年、テレビドラマ『純愛ディソナンス』(フジテレビ系)での怪演が評判高かった中島だが、過去に『デート〜恋とはどんなものかしら〜』(フジテレビ系)や『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)等の助演で見せた、好青年として癖のないまっすぐな演技も魅力的だ。
今作では月代も似合う涼やかな立ち居振る舞いで、時代劇との相性の良さも証明してみせた。
演技派のジャニーズタレントとして、もっとその実力を知られてもいいのにといつも思う。
※写真はイメージ
初回は脚本・演出ともに原作の世界観を最大限に尊重した美しいトーンだったが、原作では吉宗が『ご内証の方』は死罪となると知った上で水野を慈しんで抱くが、ドラマではそれを知らずに2人は惹かれ合って関係を結び、後で知るという違いがあった。
「そなたは私の男じゃ」というインパクト特大の名台詞もドラマのオリジナルで、全体的によりロマンチックな方向に振ってある印象なのも、今後楽しみだ。
ちなみに、水野が死罪に見せかけて赦免される場面、原作では大岡越前らしき女性が登場して、吉宗と「ただでさえ数少ない男子をこんなことで殺しては勿体ない」と久通の前でコミカルに愚痴る場面がある。
ドラマでは登場しなかった大岡忠相だが、登場するならどんな俳優が演じただろうかと想像してみるのも楽しい。
※写真はイメージ
今回、脚本を担当する森下佳子は、いうなれば原作ものを解釈し脚本に起こす『名指揮者』である。
過去にはテレビドラマ『JIN−仁−』(TBS系)や、『義母と娘のブルース』(TBS系)等、原作ものの脚本を手掛けてその魅力を大輪の花として咲かせた。
原作をどう解釈し、どう魅力を伝えるか。
そのさじ加減に加え、森下佳子が手がける原作ありのドラマで重要な点は、原作を読んでいなくても、一つのドラマとして完結して魅力が伝わる再構成の妙だと思う。
今作もまた、初回を見たところ間口は広い。
原作未読でも存分に魅力が伝わるドラマなので、是非多くの人に鬼才・よしながふみが紡ぎ上げた渾身の人間賛歌を堪能してほしいと願っている。
そして次週から始まる家光編は、作中でも屈指の哀切とロマンスの濃度が高い章だと思っている。早くも次の火曜が待ち遠しい。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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