【下剋上球児 第4話・ネタバレあり】『犯罪者になること』とは 南雲の周囲に見る、その現実
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ブログやSNSでドラマの感想や情報を発信して人気を博している、蓮花茶(@lotusteajikkyou)さん。
2023年10月スタートのテレビドラマ『下剋上球児』(TBS系)の見どころを連載していきます。
犯罪を犯すことがどんなに周囲の人達を傷つけるのか、丁寧に描写された回だった。
越山高校野球部は三重県大会第一回を迎える。南雲脩司(鈴木亮平)の指示により、事前の相手校の研究の成果が出て、部員たちのプレイはそれまでの場当たり的なものではなくちゃんと『高校野球』だった。
南雲の作戦も要所要所で功を奏し、結果的には2-1と負けたものの、初めて途中コールドになることなく、9回までプレイすることができたのである。
逆転できなかった原因も相手の超ファインプレーだった。次はきっと勝てる、と部員たちは手応えを覚えたのだ。南雲さえ監督としていてくれれば…と。
南雲が野球部のためになればなるほど、彼らへの裏切りが積み重なっていく。
部員たちが彼を慕えば慕うほど、いずれ判明する真実が彼らを傷つけることがわかっているので、見ていて本当につらい回だった。
三年生の日沖誠(菅生新樹)が最後の夏にも関わらず、出場しないまま終わってしまった。それでも彼はみなと一緒に野球ができたことを喜んでいた。
彼がどれだけ試合に出たかっただろう。誠の無念さを誰よりも知る壮磨(小林虎之介)はようやく野球部に参加する。
潔く笑顔で去っていった誠と彼の意志を受け継ごうとする壮磨の姿を見ると、南雲のしていることの罪深さがより際立つ。
それは美香(井川遥)の連れ子の青空(番家天嵩)にとっても同じだ。
青空は当初、東京へ行きたいと南雲や美香に訴えていた。しかし今は、かつて仲が良かった東京の友達とは中学受験のせいで、話が合わなくなってきていたのだ。
練習試合には観戦に来なかった青空だが、予選には祖父の七彦(中村シユン)とともにやってきた。彼は野球に興味を持ち出したのである。青空はもう南雲を父親として受け入れていたのだ。
青空は大人の都合で父親を一度失っており、これで二度目になってしまう。
一度は乗った電車から降りて、祖父の家に戻った青空を迎えたのは誰も迎えてくれない家だった。呆然としている青空の絶望が痛いほど伝わってくるシーンだった。
子どもたちだけではなく、南雲の影響で変わったのは犬塚樹生(小日向文世)もだ。あれほどワガママ放題だったのに、翔(中沢元紀)にも南雲や山住香南子(黒木華)、横田宗典(生瀬勝久)たちにも、これから余計な口出しはしない、勝手なことをしないと約束をする。
これだけ生徒たちにも息子にも大人にも良い影響を与えたところで罪を償うために人々の前から去らなければならない。だが、南雲が貫く沈黙は自分を信じて受け入れてくれた人々を傷つけるだけだった。
これこそが『犯罪者になること』なのだ…。
南雲脩司という人物像を見ていると、そもそもどうしてこの人が生活のためとはいえ、教員免許偽造などしてしまったのか全く信じられない。
皮肉にも警察に出頭したときに、警察官と顔なじみになるほど生徒のために何度も来て尽力していたことがわかる。まごうことなく、彼は理想的な教師である。
犯罪行為というのは『ちゃんとした人』ならどんなときでも犯さないものだと思う。だけど、『ちゃんとした人』でも誘惑に負ける一瞬があるのかもしれない。
だがその一瞬が求めてくる代償はとても重い。生徒たちを、同僚たちや保護者たちを、家族を裏切ったことをどう償っていくのだろう。
落ちこぼれの野球部を3年で甲子園出場させる、理想的で完璧なはずの南雲脩司という教師につけられた『無免許教師』という大きな傷。
この消えない傷と、彼と彼の周りの人たちと視聴者はどう向き合うべきなのだろうか。
どうやら、ただ痛快なだけの成り上がりストーリーをこのドラマは描くつもりがないようだ。この先、南雲脩司と周囲の人たちが直面する大きな試練を見守るしかない。
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