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汗で発電!?伸縮自在のバイオ燃料電池を開発!

By - 土屋 夏彦  公開:  更新:

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出典:UCSD Jacobs School of Engineering

カリフォルニア大学のサンディエゴ校の開発チームが、人間の汗に含まれている乳酸を酸化させる酵素を使うことで、人間の汗を電流へと変換できることを発見し、『Energy & Environmental Science』6月号に論文が発表されました。

以前にも体に貼れる電子回路というのが話題になっていましたが、今度は、体に貼って汗からエネルギーを抽出できる燃料電池を開発したとのこと。

開発では、『体に貼れる電子回路』の際も貼りやすい素材にする点で苦労したというエピソードがありましたが、今回も素材の伸縮性の維持がどこまで可能かは大きな課題だったそうです。また面積あたりの電気量の増加についても、小さくしても大きな電気量を出せるようにするための方法にかなり難航したようです。

そして開発されたのが、3D印刷された『Islands and bridges』と呼ばれる構造を活用した、ドットの列をバネのようなものでつなげたバイオ燃料電池。従来のウエアラブルデバイスなどに使われているバイオ燃料と比べると、同面積当たり約10倍の出力を確保できるようになっているそうです。

今回の論文の著者の1人であるAmay Bandodkar氏によれば「使用する材料とその使用比率のベストな組合せを見つけ出すことがもっとも苦労しました」と話しています。エネルギー密度の増加は、バイオ燃料電池の性能向上の鍵であり、汗が生成するエネルギーが多ければ多いほど、よりパワフルなバイオ燃料電池になります。

実験では、4人の被験者にこの体に貼れるバイオ燃料電池を装着し、静止型自転車で運動させたそうです。運動に伴う発汗でなんと、青色のLEDを4分間点灯することに成功したということです。

ちなみに『バイオ燃料』とは生物が持つエネルギーのことで、主に炭水化物に含まれる糖類を原料とする燃料のことをいいます。人間の体の中ではいとも簡単に糖質からエネルギーが生成されているわけですが、これを人工的にやろうとするとかなり複雑な過程が必要になるのだそうです。

またサトウキビやトウモロコシなどからバイオ燃料を生成するためには、食料の生産と畑で競合するため、なかなか採算を合わせるのが大変なんだそうです。そんな中最近注目されているのがミドリムシを材料にしてバイオ燃料『ユーグレナ』。石油や石炭などの化石燃料に代わるバイオ燃料は、いまもっとも注目を集める科学分野のひとつでもあります。

今回の汗からエネルギーを抽出できるバイオ燃料の今後の課題としては、現段階では光で劣化してしまう材料を使用しているため、劣化せず安定的に利用できる材料の探求と、汗に含まれる乳酸の濃度は長時間維持できないため、どうやって長時間維持できるようにするかの方法の模索も課題になっています。

こうした課題を克服して、さらに開発が進めば、人間の発汗作用を応用するだけで、Bluetoothのヘッドフォンを常時充電できたり、腕時計の電池に活用したり、スマートフォンの充電にも使えたりと、さまざまな身近な電池駆動の電源として活用することも可能になるかもしれません。

災害の際にもっとも忘れがちで必要不可欠なもの、それは身近な道具のための『電池』だということをご存知でしょうか。東日本大震災の際も、停電になってしまった地区での電気の利用は、自家発電で満たされる量はほんのわずか。トランジスタラジオは長い間ラジオ放送を聞くことができましたが、スマートフォンや携帯電話の類は、1週間も持ちませんでした。

こんな時肌に貼れるバイオ燃料電池があればどんなに助かることでしょう。災害場所での運動も兼ねて生活者のための蓄電までできてしまうという汗からエネルギーを抽出できるバイオ燃料電池は、災害時はもとより我々の生活のいたるところで活躍できることは間違いありません。


[文・構成 土屋夏彦/grape編集部]

土屋夏彦

上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。

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