コロンビア大学が3Dプリンタで『人工筋肉』の開発に成功!
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アメリカのコロンビア大学・工学部(The Fu Foundation School of Engineering and Applied Science)は、ロボットの駆動装置として使える『柔らかな合成筋肉の生成(Soft Material for Soft Actuators)』に成功したと、専門誌『ネイチャーコミュニケーションズ』に発表しました。
この人工筋肉はシリコンゴムに特殊な素材を混合させて3Dプリンタで出力させたもので、外部駆動装置につながずにさまざまな形状に変形が可能のうえ、通常の筋肉の15倍のひずみ密度(グラム当たりの膨張)を持ち、自分の体重の1000倍の重さも持ち上げることができるようになります。
これまでの人工筋肉は、空気または液体がそれらに供給されるときに膨張するエラストマースキンの空気圧または水圧膨張によって伸縮させるなど、電極やエアコンプレッサーなどの装置をつなぐ必要があり、独立して動くことができず、ロボットの小型化などを妨げていました。
今回の新素材では、素材に含まれる細い抵抗線に低電力(8V)を流し電気的に発熱させるだけで、自由自在に変形させることができるようになったそうです。
そして今回の実験では温度を80度まであげると、常温に比べて9倍もの伸縮性を計測したということです。
つまり何にもつなげずに、人間の筋肉と同様の仕組みで骨格を動かすことができるロボットが作れるようになるということです。
ちなみにこの素材は1グラム当たり約3セントと、とても安価に作ることができるというメリットもあるそうです。
同様の研究では『生きた細胞組織を利用したロボット』に関する研究が世界規模で急速に広まるなか、2016年ハーバード大学・ワイス応用生物学エンジニアリング研究所で、生物工学者、ケビン・キット・パーカー氏がチームと共に、ラットの心臓から鼓動する細胞を取り出し、いかにして人工の有機体を柔軟に動かせるかを実証しました。
それがラットの心臓細胞で泳ぐ『人工エイ』として話題になりました。
これは、金でできた柔軟性のある骨格に、柔らかく弾力性のあるシリコンを何重にもコーティングし、そこにさらにラットから取り出した20万個の生きた心臓細胞を単一層にして付け加え、ヒレの形にして人工エイに仕上げます。
普通の心臓細胞は自発的に収縮と拡大を繰り返しますが、このラットの心臓細胞は藻類の遺伝子を加えて遺伝子を組み換えており、一定の青い光の波長にさらされた時に収縮するようにしてあります。
そのため、人工エイに光を当てるとラットの心臓の筋肉細胞が光に反応して収縮と拡大を繰り返し、エイの尾ひれを上下に動かして泳がせることに成功。なんと光の当て方でスピードまでコントロールできるようになったとの報告もあります。
しかしながら今回の『柔らかな合成筋肉』はこんな涙ぐましい努力などせずに、3Dプリンタで簡単に熱や光に反応する人工筋肉の生成に成功したというわけです。
今回の『柔らかな合成筋肉』研究グループのリーダーHod Lipson(ホッド・リプソン)氏は「(人工知能の進歩により)ロボットの”心”になる部分は大きな進歩を遂げている、しかし、ロボットの身体の部分はまだまだ原始的だった。この素材により、我々はまるで生きているかのようなロボットを作り出すための大きな壁を乗り越えることができた。」と語っています。
今後はこうした柔らかな人工筋肉を持つロボットに人工知能を搭載して、よちよち歩きから2足歩行できるようになるまで自分で学習できるロボットなども実現できそうです。
[文・構成 土屋夏彦/grape編集部]
土屋夏彦
上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。