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備前長船の刀鍛冶がプレゼントして話題に 熱く燃えたぎった玉鋼から生まれる「安産のお守り」とは?

By - grape編集部  公開:  更新:

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岡山県瀬戸内市にある備前長船刀剣博物館。その鍛刀場で毎日作刀している刀鍛冶 安藤広康(@AndoYusuke819)さんが、ある日Twitterにこんな投稿をしました。

これは、刀を作る材料の玉鋼(たまはがね)を火床(ほど)と呼ばれる炉の中でじっくり熱を通す「沸かし」という工程の中でできる小さな黒い玉です。

じっくり熱せられた玉鋼は赤く柔らかくなり、炉から出される時にその表面の溶けた部分がぼたぼたとこぼれ落ちます。それらが冷えて固まり、たくさんの大小の玉になるのです。その大きさは直径1mm〜1cm程度で、形も丸いものから卵型のもの、瓢箪型などさまざま。

通常は廃棄してしまうものですが、安藤さんはこの玉を「安産のお守り」として訪れる見学の方にプレゼントしているのです。

なぜこの玉が「安産のお守り」なのか…お聞きすると、『「たたら」では、鉄は「生まれる」というのです』と安藤さん。

「たたら」とは、古来より受け継がれてきた伝統的製鉄法 「たたら製鉄」のこと。鉄や玉鋼の原料を炉で熱して精製する日本独自の製鉄法です。

さらに、たたら製鉄で生まれる鉄の塊は「金(カネヘン)」に「母」と書いて「鉧(ケラ)」と呼び、この中から質の良いものが「玉鋼」として刀の材料になるのです。鉧は文字通り「鉄のお母さん」。だから「鉧」は昔から「安産のお守り」とされてきたのだそうです。

※写真は刀鍛冶 安藤広康さん

この話をたたらで聞いていた安藤さんは、玉鋼を使って作刀する中で生まれ出る玉を「安産のお守り」として、見学に来る方に紹介するようになりました。そして2019年4月にTwitterに投稿したのです。

軽い気持ちで投稿したのにあっという間に品切れになってしまって。反響の大きさに驚きましたね。

以来、玉がある程度溜まるとTwitterで募集をし、欲しい方に無料でプレゼントされているそうですが、最近は直接DMでの問い合わせの方も多いのだとか。

「コロナが流行する前にはお守りをプレゼントして無事に出産された方が、赤ちゃんを連れて来られることもありました。喜んでもらえて嬉しいです」と安藤さんはにっこり。

この玉は、数に余裕のある時には博物館の受付にも置いてあります。新型コロナウィルス感染症の感染拡大で遠出は難しい状況ですが、博物館を訪問した際は、受付で声をかけてみてください。ストックがあればもらうことが可能です。

遠方でなかなか訪問は難しいという方は、ぜひ安藤さんのTwitterを覗いてみてください。「安産のお守り」だけでなく、失敗した作品の鋒(きっさき)をキーホルダーにして1名にプレゼントするという企画も不定期で行っています。

「100か200くらい応募が来たらいいかなと思っていたら1万リツイートされて、ものすごく確率の低い抽選になってしまったのでちょっと申し訳なかったです」と安藤さんはいいますが、当たれば銘を切ってプレゼントしてくださるのですから反響が大きいのも当然ですね。

商品として発売しないのかという問い合わせもあったそうですが、「失敗したものを加工しているので、それを商品にするのは…」とのこと。

ただ、失敗作ではあるけれどせっかく刀として作りあげたので、その鋒を生かしてキーホルダーにしてみたということで、すでに2回このプレゼント企画を行っています。もしまた失敗作ができた時には募集することがあるかもしれません。興味のある方は、時々安藤さんのTwitterをチェックすることをお勧めします。

安藤さんが作刀されている備前長船刀剣博物館では、工房の見学はもちろん、いくつかの体験講座もあります。4回程度通って製作する「小刀製作講座」から、2時間程度で完成する「ペーパーナイフ製作講座」など、刀匠が直接指導してくれます。訪問した際はぜひ挑戦してみてください。

ただし、コロナ禍で博物館自体が休館になったり、体験が臨時休止になることもありますので、あらかじめ確認してからお出かけくださいね。


[文/ハラアキコ・構成/grape編集部]

出典
@AndoYusuke819

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