『日本の国花』の菊 その美しさ、艶やかさに心奪われる By - 押阪 忍 公開:2021-10-21 更新:2021-10-21 エッセイ押阪忍 Share Post LINE はてな コメント こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。 ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。 秋の花 菊を愛(め)でる 春は桜、秋は菊、秋は日本の『国花』とも言われる菊の季節です。菊は皇室の象徴でもあり、パスポートに菊があしらわれるなど、日本を象徴する花でもあります。 各所で始まる『菊花展』の案内が届き始めています。 ところで、この菊、どうやら日本原産ではなさそうです。というのも『万葉集』には、菊を詠んだ和歌は、一首もありません。つまり飛鳥、奈良時代には、菊は無かったということです。 おそらく奈良末期か、平安の初めに中国から入って来たものと思われます。 それは、『古今和歌集』に、菊が盛んに詠まれるようになったことからも頷ける訳ですね。九月九日の『重陽(ちょうよう)の節句』菊の宴(うたげ)は、平安時代から宮中の行事として行われて来ました。 さらに、日本で菊の栽培が盛んになったのは、理由があります。それは、冬に芽(め)を取り、春に植え、夏に成長させ、秋に鑑賞する! これは米、稲(いね)の栽培と似ているからなのです。 端正に育てられた菊は『菊花壇』『菊人形』のように仕立てられ、鑑賞用の花として発展して来ました。 今では 一年を通して栽培される菊ですが、本来は秋の花です。『三段仕立』などの様式で季節を彩ってくれる菊、時間があれば、『菊花展』に足を運んでご覧になると、その美しさ、艶(あで)やかさに心奪われ、これは間違いなく『日本の国花』だと納得されることでしょう。 当方は、11月3日、菊香る文化の日に、必ず菊を活け、その美しさを楽しむようにしております。 菊の香や 奈良には古き仏達 芭蕉 黄菊白菊 其外の名は無くもかな 嵐雪 しらぎくの夕影ふくみそめしかな 万太郎 <2021年10月> フリーアナウンサー 押阪 忍 1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。 日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。 快挙を成し遂げた狩野英孝、帰国便の搭乗券をよく見ると… 「さすがJAL」の声ホノルルマラソンから帰国する狩野英孝さんに、JALが用意したサプライズとは…。 ロケで出会う人を「お母さん」と呼ぶのは気になる ウイカが決めている呼び方とは?タレントがロケで街中の人を呼ぶ時の「お母さん」「お父さん」に違和感…。ファーストサマーウイカさんが実践している呼び方とは。 Share Post LINE はてな コメント
こんにちは、フリーアナウンサーの押阪忍です。
ご縁を頂きまして、『美しいことば』『残しておきたい日本語』をテーマに、連載をしております。宜しければ、シニアアナウンサーの『独言』にお付き合いください。
秋の花 菊を愛でる
春は桜、秋は菊、秋は日本の『国花』とも言われる菊の季節です。菊は皇室の象徴でもあり、パスポートに菊があしらわれるなど、日本を象徴する花でもあります。
各所で始まる『菊花展』の案内が届き始めています。
ところで、この菊、どうやら日本原産ではなさそうです。というのも『万葉集』には、菊を詠んだ和歌は、一首もありません。つまり飛鳥、奈良時代には、菊は無かったということです。
おそらく奈良末期か、平安の初めに中国から入って来たものと思われます。
それは、『古今和歌集』に、菊が盛んに詠まれるようになったことからも頷ける訳ですね。九月九日の『重陽の節句』菊の宴は、平安時代から宮中の行事として行われて来ました。
さらに、日本で菊の栽培が盛んになったのは、理由があります。それは、冬に芽を取り、春に植え、夏に成長させ、秋に鑑賞する! これは米、稲の栽培と似ているからなのです。
端正に育てられた菊は『菊花壇』『菊人形』のように仕立てられ、鑑賞用の花として発展して来ました。
今では 一年を通して栽培される菊ですが、本来は秋の花です。『三段仕立』などの様式で季節を彩ってくれる菊、時間があれば、『菊花展』に足を運んでご覧になると、その美しさ、艶やかさに心奪われ、これは間違いなく『日本の国花』だと納得されることでしょう。
当方は、11月3日、菊香る文化の日に、必ず菊を活け、その美しさを楽しむようにしております。
菊の香や 奈良には古き仏達 芭蕉
黄菊白菊 其外の名は無くもかな 嵐雪
しらぎくの夕影ふくみそめしかな 万太郎
<2021年10月>
フリーアナウンサー 押阪 忍
1958年に現テレビ朝日へ第一期生として入社。東京オリンピックでは、金メダルの女子バレーボール、東洋の魔女の実況を担当。1965年には民放TV初のフリーアナウンサーとなる。以降TVやラジオで活躍し、皇太子殿下のご成婚祝賀式典、東京都庁落成式典等の総合司会も行う。2021年現在、アナウンサー生活63年。
日本に数多くある美しい言葉。それを若者に伝え、しっかりとした『ことば』を使える若者を育てていきたいと思っています。