【妻、小学生になる。第10話 感想】『つま、しょー』が視聴者に伝えたメッセージ・ネタバレ
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Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。
2022年1月スタートのテレビドラマ『妻、小学生になる。』(TBS系)の見どころや考察を連載していきます。
家族にもう一度会いたい。そう思いながら消えてしまった貴恵(石田ゆり子)に訪れたのは、万理華(毎田暖乃)がもたらす、再びの奇跡だった。
「あんな別れ方、あなたらしくない。会っておいでよ」
千嘉(吉田羊)は貴恵を抱きしめる。今二人の間に紡がれるのは、この奇跡がもたらした確かな友情だ。
万理華と千嘉がくれた1日。ついに最終話、貴恵は愛する家族のもとへ再び駆け出していく。
「これからは、なくしたものじゃなく、ママがくれたものを見つめて、生きていかないか?」
貴恵が亡くなって10年目の結婚記念日。
圭介(堤真一)と麻衣(蒔田彩珠)が迎えるいつも通りの朝に、チャイムは鳴った。あの日、死んだはずの貴恵が、小学生の姿で帰ってきた朝と同じように。
「今日で最後、楽しくさよならしましょう」
貴恵と過ごす最期の1日
貴恵と過ごす最期の1日が始まる。
早速、麻衣の春服を買いに三人でお出かけ。
爆買いも程々に…と思うが、愛する娘が買ったものを身につけている姿を貴恵は見ることはできないからこそ、思い出と合わせて残そうとしたのかと思う。
帰ったら掃除と洗濯。最期の一日だというのに買い物と掃除なんて普通すぎる気もする。
しかし、このありふれた日常は、貴恵にとっては特別な日常なのだ。
家族や我が家のため、そして大切な人達の明日や未来のために、今したいことをする。気づいたら後回しにしない。
これも、この家族が私たちに教えてくれた、すぐ近くにありすぎて見えない日々の過ごし方だった。
『妻、小学生になる。』最終話で、にくい演出
何もしてあげられなかったことを後悔していた麻衣に、貴恵は恋人の蓮司(杉野遥亮)に会いたいと頼む。
家に来てくれたとき「一人になりたい」と壁を作ってしまった麻衣をそっと後押しする貴恵。蓮司と出会うきっかけを作ったのは、同じように引っ込み思案な娘の背中を押した貴恵だ。
「やりたい遊びがある」と切り出した貴恵が始めたのは、まさかの両親への結婚挨拶ゲーム!
こんな時だけ小学生ぶる貴恵の無邪気さにも乗ってくれる蓮司の優しさを、貴恵は確かめたかったのかもしれない。ただの遊びでよかったのだ。
しかし、麻衣との将来を約束する真剣な蓮司。貴恵の目に涙が溢れる。
「思いもよらないことも起きるかもしれないけど、麻衣と一緒に色んな幸せをたくさん見つけていってください」
ここで万理華の姿ではなく、貴恵に戻るのが刺さる演出だった。
本当のその時を迎えることができないとしても、今確かに麻衣の母親として、大事な娘の幸せな未来が見えたのだ。
一方、読み切りが決定した友利(神木隆之介)は加筆のために出版社から出られないでいたが、窓越しに万理華の姿を見つけ、駆け寄る。
貴恵は、万理華として話をする。
もう一度戻ってきたのだから貴恵として話をしないのかと思ったが、小さい頃から語っていた夢が叶おうとしている瞬間を邪魔したくなかったのだろう。
帰っていく友利に、貴恵と同じ強さを確かに感じた。
圭介は今までを振り返っていた。
圭介の記憶の中の貴恵は、ずっと笑顔だ。最初に会った時から、ずっと励まし、家族の幸せを考えていてくれた。
最後にしてあげられること…。ハッと思い出した圭介は慌てて守屋(森田智望)に電話をかける。
「僕の亡くなった妻が帰ってきたんです!」
思えば最初の頃は、周りの目を気に留めない圭介に危機感を持ってほしいと思う人も多かったと思う。
しかし二話でのこの言葉。
「君と一緒にいるこの時間を、嘘やごまかしで費やしたくないんだ、一分一秒も」
圭介は馬鹿がつくほど真っ直ぐなのはずっと変わっていない。ただ、周りのことも考えられるようになった。
守屋にこの事実を伝えられたのも、頼み事ができるのも、家族という殻に篭っていた圭介に信頼できる人ができたという証拠なのだと思う。
圭介たちから貴恵への『プレゼント』
買い物から帰ってきた貴恵を出迎えたのは、圭介と手作りのレストランだった。
貴恵の笑顔を巡る中で思い出したこと、圭介達がしてあげたいこと、それは貴恵の夢を叶えてあげることだった。
寺カフェの弥子(小椋梨央)、マスター(柳家喬太郎)に常連の中村(飯塚悟志/東京03)。ラビットフーズの守屋、宇田(田中俊介)や副島(馬場徹)、詩織(水谷果穂)や蓮司も。皆、貴恵が帰ってきたからこそ繋がれた人達。
シェフとして調理場に立つ貴恵は、沢山の笑顔の中にいる圭介と麻衣を眺めていた。
もう、私がいなくても孤独じゃない…。
秒針が、動く。別れの時が、音を立てて、近づく。
こういう時こそ、1日は短いのだ。あっという間に過ぎていく。
貴恵はふと10年間荒れ放題の農園のことを思い出す。「いつか気が向いた時でいいから」と言う貴恵に圭介は「いつかじゃなくて、今やろう」と前向きに言う。
あれほど後ろを向いていた二人から、今できることをしたいという言葉がすぐ出てくることこそが、貴恵が帰ってきた意味を強く感じさせる。
本当の『永遠の別れ』の瞬間、3人が交わした言葉は…
夜明けの空。三人で過ごす、最期の時。貴恵は二人を抱き寄せる。
思い出も、貴恵の優しさも、笑顔も、この一苗のハバネロに込めて。
「ママ、大好き。会いにきてくれてありがとう」
「ありがとう貴恵、帰ってきてくれて。ありがとう。僕の妻でいてくれて」
そして、「おやすみ」。
夜明けの時。貴恵は、目を閉じる。最愛の貴恵との永遠の別れ。しかし、それはさよならではない。
その愛はこれからもずっと変わらず続いていく。
朝日が昇る。太陽のような貴恵のいない、新しい明日が始まる。
10年前、止まってしまった風車は、貴恵が会いに来てくれて勢いよく回りだした。
一度、いなくなってしまった時、また止まってしまった。
でも貴恵がいない今も、風車は回り続ける。
最終話までこの奇跡を見守ってきた人だけが気づくこの変化に涙が溢れた。
妻を亡くし生きる希望をなくした夫と娘が、最愛の妻に再会し、人生に希望を見出す新島家の愛の物語。
しかし、それを超える意味があった。この奇跡は人と人との繋がりを確かに築いていった。
『妻、小学生になる。』が伝えてくれた大切なメッセージ
最後に、劇中に登場する生まれ変わりを描いた一冊『君と再び』の言葉を引用する。
後悔や反省を乗り越えない限り時間が進んでも人生は進まない。
あの時、こうしておけばよかった。あの時もっと考えれば別の可能性があった。
そんなことを思わないための人生の選択肢が人生には必ず残されている。
大切なものはいつか壊れるし、失うくらいなら現実から目を背けたくなってしまう。
しかし、いつまでもなくしたものを見ていては、ずっと暗い絶望のままなのだ。
迷いながらでも、前を向き、大切な何かのために今できることをすることが、残された人生の選択肢だと思う。
この物語が私達に伝えてくれた大切なメッセージ。
目の前にある小さな奇跡を、幸せのきっかけを見つけられますように。
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[文・構成/grape編集部]