【石子と羽男 第2話 感想】親ガチャというテーマに切り込む第2話・ネタバレあり
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Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。
2022年7月スタートのテレビドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)の見どころや考察を連載していきます。
ガチャをする時、なんとも言えないドキドキとワクワク感を味わえるだろう。
欲しいもののためについ何度も回してしまうものだ。だが近頃は、『親ガチャ』という、人生で一度しか回せないガチャの名前をよく聞くようになった。
第二話ではその『親ガチャ』という言葉が大きなテーマとなっていく。
『石子と羽男』第2話のテーマは『親ガチャ』
「息子が無断でゲームに課金してしまったんです!」
パラリーガル・石子(有村架純)と弁護士・羽男(中村倫也)、バイトとして新しく仲間に加わった大庭(赤楚衛二)が務める潮法律事務所の法律相談会に訪れたのは、母・相田瑛子(木村佳乃)と、息子・孝多(小林優仁)の親子。
塾へ通うための連絡手段用のスマホでゲームに無断で高額課金してしまい、返金請求するも、親会社がそれに応じてくれない…という相談だった。
小学生であっても自分用のスマートフォンを持つのが当たり前になってきた時代、こうした未成年者による無断の課金が増えており、 身近な事案だろう。
早速この案件を請け負うことにした羽男達は、ゲーム運営会社の顧問弁護士を訪ね、強気な姿勢で『未成年者取消権』を主張する。
しかしその担当弁護士は羽男の元同僚・丹澤文彦(宮野真守)だった。
いかにも曲者全開の丹澤は、成人だと自ら偽ったことに落ち度があると主張。二人を圧倒し、またも羽男は何も言い返すことができなかった。
そして石子達は顧問弁護士との話し合いの結果を伝えに相田家を訪れる。
説明の間、瑛子の隣でただ黙っていた孝多だったが、突然、受験が嫌で課金をしたと言い出す。
「そんなこと嘘でしょ!」と瑛子に強く問い詰められ、顔を背ける孝多。家中、受験に向けた張り紙で溢れている。
孝多が「良い学校に入って楽をさせたい」と言ったと瑛子は話していたが、もしかしたら自分の願望を押し付ける『お受験ママ』の毒親なのではないかと疑ってしまう。
その後二人は塾を訪れ、孝多から「受験が嫌だと主張するために課金をしたというのは本当だ」と聞く。
中学受験を経験していた羽男は、受けたくなくても、親のために受験する子どもの気持ちが痛いほどわかっていた。
塾に通う生徒達の中にも自分の意志には反し、親からのプレッシャーをかけられている子ども達が多いだろう。
『親ガチャ』という言葉を小学生が軽く使っているのには驚くのだが、気軽に使われるようになった今だからこそ、子どもでも自分の生まれた落ちた環境に憂うのだ。
高額請求を仕組んだ真犯人とは
返金のため調査を続けていた石子達だったが、事態は思わぬ方向に進む。
事務所に突然駆け込んできた相田親子から告げられたのは、ゲームアカウントの乗っ取りと25万円の高額請求の発覚だった。
直ぐに警察の協力を要請したが、情報開示を待つ傍ら、石子は調査を続ける。
気になるのは母・瑛子の生活だが、石子が見たのは、ダブルワークで夜まで懸命に働く瑛子の姿だった。
一方の羽男は、ドロパズで遊んでいると見せかけて、孝多のアカウントを乗っ取った人物とゲーム内でコンタクトを取ることに成功する。
その人物は意外にも塾に通う孝多の友人だった。
話を聞くと模試でカンニングをダシにされ、孝多のアカウントで課金し続けろと脅迫されていたという。
このことから、カンニングとパスワードを知り得ることのできる人物に絞り込まれる。
そしてお互いの得意を生かして、石子と羽男がお互いにヒントを見つけ、25万円の高額請求を仕組んだ真犯人を突き止めた。
『石子と羽男』第2話で改めて気付く根幹のメッセージ
事務室で友人が誤ってパスワードを口にしたのを耳にし、授業中預かっているスマホのロックを解除できた人物は一人だけ。その時スマホを管理していた塾の職員・深瀬(富田望生)だ。
深瀬は以前、勤めていた塾で同じような問題を起こしていた。
その動機は、自分は親から高校を出たら働けと育てられ大学にも行けなかったその腹いせだという。
受験する子どもの足を引っ張っても、何も生まれないし、自分の過去は変えられるはずもない。
だが、深瀬は自分のこの行いを正当化し、満足しているような態度でこう言い放った。
「みんな親ガチャで当たり引き当てた勝ち組でしょ?」
生まれ落ちたその瞬間から、他人と何かしら差がついているのは否定はできない。
人は生まれながらにして経済力や容姿による様々な格差を感じずにはいられないのである。
だからこそ誰しも『親ガチャ』を盾に、人生における失敗を『全て』生まれ落ちた環境のせいにしたくなってしまう。
ひどい親が存在するのも事実、経済格差で学びの機会の幅に差があるのも事実。簡単に変えることのできない現実がそこにはある。
だが石子の言う通り、生まれ落ちた環境を受け入れる必要はないし、家族であっても無理して家族でいなくて良い。
だが、ガチャが当たりだ外れだと言い訳をしても何も生まれない。
だったら、その前に自分だけの価値を見出せるよう行動を起こすことの方が、きっと自分の人生のためになる。
たとえそれが誰かを頼る行動でも良いのだ。そのために石子や羽男という、暮らしを守ってくれる存在がいる。
自分や誰かを恨む前に声を上げること。二話でも物語の根幹にあるメッセージを強く感じることができた。
相手に抱く第一印象は、切り取られた1ページにすぎない
そして返金の目処が立ったことを親子に報告しに行った石子達だったが、瑛子から返金は求めないと言われる。
我が家のルールとして、お互いの罰と責任として受け止めることにしたのだ。
母を幸せにするために決めた受験が、かえって負担になっているのではないかと孝多はずっと悩んでいた。
そして、自然に塾をやめるため思いついた最善の方法が『受験ノイローゼ』だったのだ。
取り返しのつかないことをしたのはもう変えられないと、受験を諦めると言う孝多に瑛子は、「孝多がしたいならやっていいんだよ」と笑顔で伝える。
初め瑛子に感じた不穏は、切り取られた1ページにすぎなかった。
仕事の合間を縫って一人でも寂しくないように動画を撮るなど、孝多のためを思い『母親』を頑張っていた。
そして孝多もそれを受け取り、自分のため、そして親のために前向きに中学受験に取り組もうと頑張ってきた。
石子はそんな親子を見て、一人で自分を育てくれた母親を重ねていた。
石子は瑛子に母子家庭を支援する制度があることを紹介するのだった。
今話も重いテーマとなったが、重くなりすぎず、後味良く終われるのは、『声を上げる』というメッセージがブレずにあるからなのだと思う。
一番欲しいものであっても、簡単に手に入るくらい人生は上手くいくものではない。
だが、だからこそ、土砂降りの雨が降っても傘を差し出してくれる存在と共に、『出会い』という素敵なガチャで、価値ある何かと出会う人生を送っていきたいと思わせてくれる第二話だった。
『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』/TBS系で毎週金曜・夜10時~放送
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[文・構成/grape編集部]