松山ケンイチ×篠井英介、化学変化の妙を感じる 『クジャクのダンス、誰が見た?』第8話 By - かな 公開:2025-03-17 更新:2025-03-17 かなクジャクのダンス、誰が見た?ドラマドラマコラム広瀬すず松山ケンイチ Share Post LINE はてな コメント SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。 2025年1月スタートのテレビドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。 かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。 松山ケンイチが演じる弁護士の松風が、ヒロインの山下心麦(広瀬すず)を相手に何気なく「うん?」と聞き返す表情がとてもいい。 それは相づちと質問の間にあるような、柔らかいアクセントだ。 そして心麦がいかにも生意気を装って松風に言う「ラーメンおごってあげてもいいと思ってます」「今日だけは、助けてあげてもいいと思ってます」という言葉も、とてもいい。 成人ではあるけれど、まだ『おとな』とは言えない相手を尊重しながら案じている松風と、松風を信じて頼りながらも、その思いが重荷にならないように少しの距離をあける心麦の心情がよく出ていると思う。 物語が終盤に入り、二人の信頼関係が強固になっていることを実感できる8話だった。 クリスマスイブの夜に何者かに殺害された心麦の父・春生(リリー・フランキー)は、一通の手紙を残していた。 逮捕された容疑者・遠藤友哉(成田凌)は『冤罪である』という父の言葉を信じ、弁護士の松風とともに事件を調べ始めた心麦は、父の殺害に20年前の殺人事件が深く関わっていることを知る。その事件は、心麦自身の出生にも絡んでいた。 画像を見る(全15枚) 今週、地味ながら興味深いセリフがひとつある。 それは刑事の赤沢(藤本隆宏)が検事の阿南(瀧内公美)に「私は被害者から見て正しい捜査をしているかを矜持(きょうじ)にしている」と主張した言葉である。 それは赤沢という無骨な男なりの、被害者を思う優しさなのだろう。 だが決して『真実』と同義ではないし、その正しさには知らず知らずのうちにズレが生じているのではないかと、どうしても胸にひっかかる。 ここで対になるように思い出すのは、第1話で松風が心麦に言った「1人の無実の人が苦しむ可能性があるならば、10人の真犯人を逃がす方がはるかにマシなんです」という言葉だ。 治安や社会の安心感をより重視する赤沢の価値観と、あくまで真実を最優先する松風の価値観のぶつかり合いこそが、このドラマに流れ続けている通底音なのである。 今回、松風は赤沢の過去を知るために、長らく会うことのなかった両親に会う。 福岡に母親を訪ねる時には、トレードマークの眼鏡を珍しく掛けていなかったのが印象に残った。 いつも何種類かの洒落た眼鏡を使い分けて関係者に会い、被疑者との面会に向かう松風だが、彼にとって眼鏡は鎧のようなものなのだろう。 波佐見(森崎ウィン)と眼鏡を競う様子は、まるで互いに新しい武具を披露しあうかのようだ。 父親に会う時には眼鏡をかけていた。そして仕事で来たと、わざわざドライな前置きを告げていた。 だが、徐々に父親への気持ちがほどけていく様子は、松山ケンイチと名バイプレーヤーである篠井英介との化学変化の妙を感じさせる素晴らしいシーンだった。 問いかけることなく無条件に父親の無罪を信じて詫びた息子の言葉に、かつて冤罪を飲み込んで逃げた父は「ようやく救われたよ」と感無量になって応える。 子供の生きざまや幸福が、喜びも苦難も愛も罪も含め、親の人生を救うのだとしたら、心麦の両親、とりわけ父・春生は、その救いを十分に得る前に心麦の前からいなくなってしまった。 娘は、両親の人生が正しかったと証明して見せる機会をすでに永遠に失っている。 心麦が前回、両親の早すぎる死を「悔しい」と泣きじゃくったことを思い返して、切なくなった。 そして今回、ついにここまでに見え隠れしていた『カラビナ付きリュックの男』の正体が鳴川(間宮啓行)だと明らかになった。 娘であろう阿南との関わり、元検事という経歴を考えると、おそらく鳴川は東賀山事件の裁判に関わったのだろう。 過去の冤罪事件の隠蔽のために暗躍しているとして、果たして動機はそれだけなのか。 半ば引退している法曹のエリートが冤罪の隠蔽のためだけに、深刻なリスクを承知で20年後に何人もの人間を殺害出来るものなのか。 何かがまだ隠されている。 その最後の鍵は、記者の神井(磯村勇斗)が見つけ出した『水』の縁に隠されているのだろう。 面会している神井と友哉の奇妙な会話と、最後に神井が「差し入れられるか!」と苦笑いした表情に、この2人もまた松風と心麦のような「名前のつかない信頼」の関係なのだと思った。 『クジャクのダンス、誰が見た?』第9話あらすじ 心麦は、松風と鳴川とともに、手紙に書かれていた最後の人物、廣島育美のもとへ。 一方、刑事・赤沢は、神井からある資料を見せられ、その内容に驚愕し、その場を走り去る。 『クジャクのダンス、誰が見た?』は、『TVer』で最新話を無料配信中。動画配信サービス『U-NEXT』『Netflix』では、最新話まで全話配信中です。 この記事の画像(全15枚) [文・構成/grape編集部] かな SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。 ⇒ かなさんのコラムはこちら ギャル曽根流のポテサラに「今日の夕飯決まった」「その発想はなかった」ギャル曽根さん親子が教える、ポテトサラダレシピに「奥が深い」「その発想はなかった!」の声が上がりました。 「本当に天才」「ペロッと完食」 ロバート馬場が教えるこんにゃくレシピが、激ウマ!味見のはずが…手が止まらない!馬場裕之さんが教えるこんにゃくレシピが絶品です。 Share Post LINE はてな コメント
SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2025年1月スタートのテレビドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
松山ケンイチが演じる弁護士の松風が、ヒロインの山下心麦(広瀬すず)を相手に何気なく「うん?」と聞き返す表情がとてもいい。
それは相づちと質問の間にあるような、柔らかいアクセントだ。
そして心麦がいかにも生意気を装って松風に言う「ラーメンおごってあげてもいいと思ってます」「今日だけは、助けてあげてもいいと思ってます」という言葉も、とてもいい。
成人ではあるけれど、まだ『おとな』とは言えない相手を尊重しながら案じている松風と、松風を信じて頼りながらも、その思いが重荷にならないように少しの距離をあける心麦の心情がよく出ていると思う。
物語が終盤に入り、二人の信頼関係が強固になっていることを実感できる8話だった。
クリスマスイブの夜に何者かに殺害された心麦の父・春生(リリー・フランキー)は、一通の手紙を残していた。
逮捕された容疑者・遠藤友哉(成田凌)は『冤罪である』という父の言葉を信じ、弁護士の松風とともに事件を調べ始めた心麦は、父の殺害に20年前の殺人事件が深く関わっていることを知る。その事件は、心麦自身の出生にも絡んでいた。
今週、地味ながら興味深いセリフがひとつある。
それは刑事の赤沢(藤本隆宏)が検事の阿南(瀧内公美)に「私は被害者から見て正しい捜査をしているかを矜持(きょうじ)にしている」と主張した言葉である。
それは赤沢という無骨な男なりの、被害者を思う優しさなのだろう。
だが決して『真実』と同義ではないし、その正しさには知らず知らずのうちにズレが生じているのではないかと、どうしても胸にひっかかる。
ここで対になるように思い出すのは、第1話で松風が心麦に言った「1人の無実の人が苦しむ可能性があるならば、10人の真犯人を逃がす方がはるかにマシなんです」という言葉だ。
治安や社会の安心感をより重視する赤沢の価値観と、あくまで真実を最優先する松風の価値観のぶつかり合いこそが、このドラマに流れ続けている通底音なのである。
今回、松風は赤沢の過去を知るために、長らく会うことのなかった両親に会う。
福岡に母親を訪ねる時には、トレードマークの眼鏡を珍しく掛けていなかったのが印象に残った。
いつも何種類かの洒落た眼鏡を使い分けて関係者に会い、被疑者との面会に向かう松風だが、彼にとって眼鏡は鎧のようなものなのだろう。
波佐見(森崎ウィン)と眼鏡を競う様子は、まるで互いに新しい武具を披露しあうかのようだ。
父親に会う時には眼鏡をかけていた。そして仕事で来たと、わざわざドライな前置きを告げていた。
だが、徐々に父親への気持ちがほどけていく様子は、松山ケンイチと名バイプレーヤーである篠井英介との化学変化の妙を感じさせる素晴らしいシーンだった。
問いかけることなく無条件に父親の無罪を信じて詫びた息子の言葉に、かつて冤罪を飲み込んで逃げた父は「ようやく救われたよ」と感無量になって応える。
子供の生きざまや幸福が、喜びも苦難も愛も罪も含め、親の人生を救うのだとしたら、心麦の両親、とりわけ父・春生は、その救いを十分に得る前に心麦の前からいなくなってしまった。
娘は、両親の人生が正しかったと証明して見せる機会をすでに永遠に失っている。
心麦が前回、両親の早すぎる死を「悔しい」と泣きじゃくったことを思い返して、切なくなった。
そして今回、ついにここまでに見え隠れしていた『カラビナ付きリュックの男』の正体が鳴川(間宮啓行)だと明らかになった。
娘であろう阿南との関わり、元検事という経歴を考えると、おそらく鳴川は東賀山事件の裁判に関わったのだろう。
過去の冤罪事件の隠蔽のために暗躍しているとして、果たして動機はそれだけなのか。
半ば引退している法曹のエリートが冤罪の隠蔽のためだけに、深刻なリスクを承知で20年後に何人もの人間を殺害出来るものなのか。
何かがまだ隠されている。
その最後の鍵は、記者の神井(磯村勇斗)が見つけ出した『水』の縁に隠されているのだろう。
面会している神井と友哉の奇妙な会話と、最後に神井が「差し入れられるか!」と苦笑いした表情に、この2人もまた松風と心麦のような「名前のつかない信頼」の関係なのだと思った。
『クジャクのダンス、誰が見た?』第9話あらすじ
心麦は、松風と鳴川とともに、手紙に書かれていた最後の人物、廣島育美のもとへ。
一方、刑事・赤沢は、神井からある資料を見せられ、その内容に驚愕し、その場を走り去る。
『クジャクのダンス、誰が見た?』は、『TVer』で最新話を無料配信中。動画配信サービス『U-NEXT』『Netflix』では、最新話まで全話配信中です。
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[文・構成/grape編集部]
かな
SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。
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