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【石子と羽男 第8話 感想】明かされた石子と綿郎の過去 なぜ敬語を使うのか…

By - grape編集部  公開:  更新:

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Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。

2022年7月スタートのテレビドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』(TBS系)の見どころや考察を連載していきます。

何かを守り、理解するためには『知る』ことが絶対なのだろうか。8話のウェブサイト情報削除請求の物語から見えるのは、『知られない権利』について。

グルメレビューサイトをめぐる事件

うちの店がグルメサイトに載ったんだよ…。

石子(有村架純)と羽男(中村倫也)ら潮法律事務所に、創作料理店『インサイド』の店主・香山信彦(梶原善)から依頼が入る。

店はいわゆる『隠れ家』で、これまで取材を断り秘密保持に努めてきたものの、大手グルメサイト『うまレポ』にレビューが掲載され、運営会社に削除申請したが受け入れてもらえなかったという。

その会社の顧問弁護士は羽男の因縁の相手・丹澤(宮野真守)だった。

羽男は営業権の侵害を訴えるが、丹澤は投稿者の表現の自由とユーザーの知る権利を主張。

対抗心を燃やす羽男のやる気そのまま、裁判のため店側に有益な情報を集め始めることに。

まずは店の仕入れなどに携わっていた常連客・沙月(橘美緒)に証言をお願いしようと考えるも、レビューを投稿した『おかわり名人』は沙月だと判明する。

「閲覧数を増やすために投稿した」と話し、削除依頼には応じない姿勢を見せた。

みな誰にも知られていないものにはかなり敏感であり、その特別感に魅力を見出す人が多い。

だから今回も大衆に注目されたのだが、これは常連にベストなものを提供したいという店側の気持ちとは大きく異なっている。

しかし、このレビューが威力業務妨害に当たる可能性があるにしても、誰にも知られたくないというのは店主の気持ちの部分であり、法で取り締まることは難しい。

裁判での勝ち目は、隠れ家の良いアピールを見つけることだった。

石子が父・綿郎に敬語を使う理由

そんな中、3年前に香山と大喧嘩したまま、疎遠になっていた息子夫婦・洋(堀井新太)と蘭(小池里奈)に事務所で会うが、洋は店の情報がオープンになることに賛成すると話す。

採算度外視のやり方に疑念を持っていた洋は、3年前、家庭のためダブルワークを続けた母親が死去したのをきっかけに、父に意見した。しかし、父親に反論されて口論になり、それから会っていないのだという。

その時、隠れ家を貫く思いの裏にある、母親の犠牲を訴える洋が父に意見するも反論され、口論になり、それから会っていないのだという。

なぜアドバイスに耳を傾けようとしないのかが気になる石子に、綿郎(さだまさし)は「お客さん第一にっていうのは、僕もよくわかる」と反応する。

それに対し、石子が続ける。ここから描かれるのが石子と綿郎、家族の過去だ。

「ずぶ濡れの人に傘を差し出すことで、他の誰かが濡れることになってもいいんですか?」

石子には、綿郎の言葉を聞き流すことができなかった。依頼者家族の関係と、通ずる部分があるのだ。

綿郎が採算度外視で依頼を引き受けてきても、母は何も言わず、事務員とダブルワークで働いたが、その生活も限界を迎え、離婚。

誰かを助けるために綿郎が傘を差し出した後ろで、一人ずぶ濡れになりながら、亡くなるまで石子を支えた。

だが石子も、法に携わる人間として、多くの人を助けてきた。

綿郎の背中を見て、依頼者のお手伝いができる弁護士になることを決めたのも事実である。

しかし苦しんだ母親のことを思うと、綿郎への尊敬の気持ちがすぐには戻ってこないのだ。ずっと敬語なのもそれが理由だった。

その夜、階段に腰をかけ一人寂しい背中を見た羽男が夜食を持って来て、わざと話題を避けるよう、声をかける。

石子はその気遣いに謝るが、羽男は「別に?」と優しく答える。

相手が知られたくないと思う一線は超えることなく、気持ちに寄り添い、羽男は言葉をかけるのだ。

そして羽男が、インサイドが情報発信をおこなった証拠が出て弱気になったとき、その尻を叩いてやる気を出させるのは、代わって石子だ。

バディとしてお互いの性格をよく知る信頼関係からつくられる二人の距離感がいつも心地良く思える。

忘れてはいけない、石子と大庭の恋の行方

一方でその関係とは違った石子と大庭(赤楚衛二)の交際も順調そうだ。

事務所を訪れた塩崎(おいでやす小田)に、交際報告という特大パンチをお見舞いし絶句させた後、羽男も交えて三人で『うまレポ』の評価が高いお店へご飯に。

その店のレビューの中に偶然おかわり名人を見つける石子。そして羽男は他のレビューの記憶から、記事によって書き癖などが違うことに気づく。

事情を聞くと、元々沙月と蘭で共同で書いてたレビュー垢で、情報が広がることで売上が増えれば洋の言い分が伝わると考えた蘭が沙月に依頼したのだという。

良い店だからこそ皆に知ってもらいたいという思いと、隠れ家でありたいという思い。それぞれが店を思う結果のすれ違いだった。

しかし知ってもらうのはそう容易いものではなかった。店に来たのに入れなかったと悪評レビューする人が増え、沙月達は後悔していた。

そして沙月が投稿削除を受け入れ、レビューは削除される運びとなったが、店舗情報自体の削除はできないと言われてしまう。

ここからの巻き返しの糸口…。石子が目をつけたのは世間の注目度の高さだった。

いざ法廷。全ての弁論が終わった後、羽男がこう切り出す。

「私は知る権利があるように、知られない権利もあるのではないかと思っています」

一人ひとりに合った料理とお酒をつくり、喜ばせたい。そして客を守るために、情報が広がらないでほしいという香山の思いを代弁する羽男。

「目の前のお客様を、幸せにしたいということはいけないことなのでしょうか?」

3話と同じように、石子と羽男の掛け合いが重なり合う。見物人だった視聴者を、当事者にする。

今一度、皆様に考えてほしいという『皆』は情報社会にいる『私たち』だ。

今回は、世間の知りたいを上手く利用し、企業相手に負けそうになることで世論を味方につける狙いだった。

知られない権利は守られないでいいのか。ネットは同情のコメントで溢れた。そして同様の立場にいる店が声を上げる。大きな存在に勝つために、小さな力が集まる。

そして判決が出る前に、丹澤から全情報を削除すると一報が入る。世の中勝ち続ければ良いわけではない。ときには負けることが勝ちへの大きな一歩となり得るのである。

知りたいと思う気持ちは間違いではない しかし…

そして、香山が隠れ家に拘っていた理由。妻に背中を押され夢だった店をはじめたが、店が忙しくなるといけないからと隠れ家を勧めたのだ。

知られないことで守りたかったのは、お客様と妻の思いだったのだ。

そして香山はこれからは洋の考えも取り入れ、新しいやり方で妻の思いを守っていくと決めていた。

知らせるも、知らせないも、どちらも間違ってないのだ。お互いが歩み寄って、譲り合っていくことが何より大事だ。

そして、この親子も。綿郎は苦労させてきたことを謝る。石子は弁護士である憧れ、そしてこれからも綿郎らしくいてほしいという願いを伝える。

「和菓子買ってきたんだ、食べるか?」

いつもの綿郎の気遣いに、石子はこう返す。

「お父さん、座ってて。私が出すよ」

この瞬間、弁護士として石子の憧れだった綿郎の背は、間違いなく石子のたった一人の父親だった。

依頼者の息子夫婦も石子も、母親の思いや理由を知らなかったから、わだかまりができてしまった。

このように、何かを知ることで、自分が思っていた世界とは違った見え方になることもある。

知りたいと思う気持ちは間違いではない、知ることで相手の心を理解することができる。だがそれが全てで構築されるわけではない。

羽男や石子のように、知られたくないという自由を尊重しつつ、紡がれる信頼関係だってあるのだ。

8話から見えてきたのは、情報を手に入れ知ることが容易くなった時代における、知られない権利や自由への訴えだ。

そして物語は最終章。最後に放火事件の件で…警察に連行される大庭の姿が。次回も見逃せない。

『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』/TBS系で毎週金曜・夜10時~放送

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[文・構成/grape編集部]

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