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【TOKYO MER感想 10話】くもりのない生き方と引き換えにするもの・ネタバレあり

By - かな  公開:  更新:

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Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。

2021年夏スタートのテレビドラマ『TOKYO MER』の見どころを連載していきます。

かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。

人生で恐ろしい不条理にみまわれる。仕方なかったとは思えない。しかし往々にしてその不条理の引き金は過去の自分のどこかから繋がっている。

多分悪いのは自分ではない。でも、こんな行動をしなければ避けられたのではないかという余地がある。

人を深く傷つけ、しかも傷をいつまでも化膿させるのはそんな「自分にも落ち度があったのではないか」という悔いだ。自分は100%悪くないと思えたら少しは救われるというのに。

2021年の夏を走り抜け、好評を維持し最終章に入ったテレビドラマ『TOKYO MER』。

最終章前編、予想だにしなかった過酷な展開が待っていた。

厚労省の策略で逮捕歴が暴かれた上にテロリストの協力者である汚名を着せられてしまったMERチーフの喜多見。更にかつて喜多見が治療した国際テロリストのエリオット椿(城田優)は、恨みか友好的な感情なのか、不明瞭な動機で喜多見の周辺に出没している。

そんな中、喜多見が待機している総合病院近くの医大に爆弾を仕掛けたと、椿から犯行声明が入る。

駆けつけた喜多見と音羽尚(賀来賢人)の目前で爆発が起き、更に椿からは次の爆弾の予告と、建物内の医学生たちを人質として閉じ込めること、中に1人の内通者がおり逃亡は不可能であることが宣告された。

喜多見はテロリスト関係者だと思われたまま、敵対心を剥き出しにする医大生の一切の協力を得られない状態で、音羽と2人で負傷者の治療に当たることになる。

これまでも恵まれた環境で救命治療をしてきたとは言えないMERだが、今回は激しい敵意の中で、時に閉じ込められたり詰め寄られたりと、喜多見と音羽の治療は遅々として進まない。

それでも喜多見は「俺は医者です。命を救うのが仕事です」と誠実な言葉だけを伝え、ひたすら治療を続ける。

白眉は、学生たちが喜多見をテロリストだと思い込んで空室に閉じ込めた時、常に冷静な音羽が叫んだこの言葉だった。

「喜多見チーフがいればこの人(瀕死の患者)を救える、下らない噂に振り回されていないで、あの人が何をするのかその目で見て判断しろ!」

その言葉で解放された喜多見は、自分を閉じ込めた学生たちを責める言葉1つなく患者の元に駆け戻り、音羽と連携して当然のように治療の続きを始める。

互いに信頼を語る言葉を掛け合うことなどなくても、バディとしてここまで来たと胸が熱くなる名場面である。

そして、喜多見が学生たちに語りかけた言葉もまた、印象的だ。

「俺たちは応援をされるためにやってるわけじゃない。どんな非難をされても構いません。だけど命を救うことには手を貸して欲しい」

この言葉こそ、新型コロナウィルス感染症と泥沼の戦いを続ける今の社会の中で、価値観や利益関係の相違から時に激しい批判に晒されながらも、懸命に対策のための情報を発信し、声を上げ続けている医療従事者の言葉そのものなのだと思う。

結果的に内通者は医学生の1人で、感染症を契機に経済的に逼迫(ひっぱく)して医大からの退学を余儀なくされ、その悲痛を椿につけ込まれたということが明かされる。

若者たちの学びの場が奪われ、経済的な弱者に真っ先に皺寄せがいく。

医療従事者を早く増やせと声高に言われても、あまりにもその土台は脆い。これもまた、このドラマがいくつも描き出すコロナ禍の社会の写し絵である。

ここまでどんな現場でも死者を出さず乗り切っていたMERだが、今回のエピソードでそのジンクスは破られる。

死者1名と無情に表記される名前は、チーフドクターである喜多見幸太の妹であり、離婚した今は唯一の家族の喜多見涼香(佐藤栞里)であった。

テロリストと知らずに手渡されて、なんの疑いもなく兄に渡すべく持ち歩いていたその水筒には爆弾が仕込まれていた。人を疑わず、ただひたすらに兄の身を案じた結果の惨劇だった。

どんな患者でも救ってきた辣腕の医者が、ただ1人の家族を救えない残酷を見せつけて最終章の前半は幕切れとなる。

妹を死なせ、絶望に突き落とされる喜多見に追い討ちをかけるように、椿からかつて喜多見本人から妹の写真を見せられて顔を覚えていたこと、美しい理想論を語る喜多見にいつか世界の不条理を見せつけてやろうと思っていたと語られる。

悪いのは椿であるのは間違いない。だが、しかし……。

境界線なく、どんな思想信条でも、どんな人生の患者でも治療の手は差し伸べられるべきだという医療従事者の願いと、ただ暴力で人の心身を棄損することを介して支配し、それを秩序とするテロリストの暴論は正反対に見えて、いや正反対だからこそ背中合わせのようなものかもしれない。

1年前に消毒液を詰めて思いやりとともに渡した水筒が、爆薬を詰められて返ってくるように。

果たしてどんな状況、どんな人格の患者にもその場で可能な限りできる治療をという、MERの博愛は絶望の闇から再起するのか。次週ついに最終回である。

TOKYO MER/TBS系で毎週日曜・夜9時~放送 最終回は15分拡大

過去のTOKYO MERドラマコラムはコチラから


[文・構成/grape編集部]

かな

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