【エルピス 第3話 感想】覚悟を決めた浅川、模索する岸本、2人の『正しさ』とは
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快挙を成し遂げた狩野英孝、帰国便の搭乗券をよく見ると… 「さすがJAL」の声ホノルルマラソンから帰国する狩野英孝さんに、JALが用意したサプライズとは…。
ロケで出会う人を「お母さん」と呼ぶのは気になる ウイカが決めている呼び方とは?タレントがロケで街中の人を呼ぶ時の「お母さん」「お父さん」に違和感…。ファーストサマーウイカさんが実践している呼び方とは。
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Twitterで人気ドラマの感想をつづり注目を集める、まっち棒(@ma_dr__817125)さんのドラマコラム。
2022年10月スタートのテレビドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』(フジテレビ系)の見どころや考察を連載していきます。
人それぞれに『正しさ』がある。そしてその『正しさ』は時に凶器へと変わる――。
『エルピス』第3話をあらすじとともに振り返る
三人の死刑執行が突然報道される。12年前の連続婦女殺人を冤罪事件として追う、浅川恵那(長澤まさみ)は、死刑執行が死刑囚となった松本良夫(片岡正二郎)でないことに安堵するも、一刻も早く冤罪証明が急がれた。
そんな中、当時の担当弁護士の木村卓(六角精児)から、首都新聞の記者・笹岡まゆみ(池津祥子)を紹介され、共に事件を追う岸本拓朗(眞栄田郷敦)も同席して会うことに。
笹岡のクセの強さに圧倒されつつも、新聞社が調べた過去の事件資料を手に入れた浅川達は早速、資料をもとに取材を行うことにした。
まず、事件の捜査に関わった八飛署の刑事・平川勉のもとを訪ねた。
岸本が真犯人が野放しになっている可能性があると必死に伝えるも、平川は完璧に解決済みであり、絶対にあり得ないとの一点張り。
だが当時の捜査のことは「正直、あんまり覚えていない」と言う。
覚えていないのにそう言うのは、最高裁の判決を信じているからなのだ。我が国の司法に絶対的正しさを求める彼にとっては、岸本が思う闇なんてどこにもない。
だが岸本は自分の正しさを見せつけるかのように言い返す。浅川に『空気の読めない人』だと言われたが、岸本は『空気を読む』ことを正しさと信じて人生を送ってきたのである。
「空気ってどうやったら読まないでいられるんだろう」
そう呟く浅川も空気を読んでばかりだった。自分が我慢さえしておけば、世界は勝手に動いていく…そう思うのだった。
マスコミが被害者に与える罪
その後、当時取り調べを行った山下守にインタビューを敢行できることになる。この人物こそ、松本の自供を引き出したとされる人間だった。
身に覚えのない罪で連行し、暴力を振るい、脅し続けた結果、松本が漏らしてしまった「もう許してください」を自白の代わりとした人間だ。
山下は言葉を濁しながら、「それはやったということです」と正当化する。もう私には関係のない話だからこれ以上聞くなという空気がそこにはあった。
『空気が読める』浅川は言い返すことができなかった。
それから撮影した映像を編集していた際に、斎藤正一(鈴木亮平)から被害者遺族を味方につけるというアドバイスを受け、ご遺族の居場所を探すことに。
これが難航するかと思われたが、事件の捜査を行った刑事を見つけるよりずっと簡単だった。
それは被害者のプライバシーなど、全然守られちゃいないということを意味していた。
事件が起こるとマスコミは被害者近辺を漁る。交友関係を探り、家を囲み、採れたてホヤホヤの情報から無神経な質問ばかり投げかける。
被害者の心配をしている者などほとんどおらず、ネタの鮮度ばかり気にして大スクープだと騒ぎ出すのだ。
12年前の事件の被害者の遺族も同じだった。
井川晴美が下着を売るためにあの山に入ったと報道されたことを受け、次々と不躾な質問を投げかけられた。マスコミにはもう懲り懲りだった。
そんなところで「別に真犯人がいる」などと今更言われたって、最愛の娘は帰って来やしないのだ。浅川達は案の定門前払いされてしまう。
浅川が偶然出会った店主は、キーマンとなりえるのか
取材を諦めた浅川がその近くを歩いていると、偶然怪しげな路地裏に迷い込む。
そのシャッター街の中で、その店は開いていた。浅川は恐る恐る、店主らしき男に、事件について覚えているかと尋ねる。
その長い髪を結んだ男は、何かを知っているような反応を見せた。
「あなたがお知りになりたいことは、言語なんて目の粗い道具だけですくいきれるものではありませんよ」
男は浅川に徐に近寄った。男の瞳はまばたきさえせず、静かに浅川を捉えた。
電話が鳴ったため、浅川は一度その場を離れるも、岸本を連れて戻った時にはその店はもう、そこにはなかった。
何かある。あの人は何かを知っている。浅川は静まり返った路地裏を振り返った。この人物がキーマンとなるのだろうか…。
そして、遺族のインタビューに既に諦めムードな岸本に、浅川は同じマスコミである自分達の過ちは自分達で挽回するしかないと一喝する。
それからも取材に奔走していると、被害者の井川晴美の姉・純夏から電話が入る。
純夏は事実は別にあるかもしれないという言葉に救われていた。
あの日の夜、姉妹で八頭尾山へ流星群を見に行く約束をしていたこともあり、晴美が下着を売るために山に入ったという説明もどうしても信じられなかった。
「純夏さんのお姿とお声は、私たちがどれだけ言葉を並べたって伝えられないことを、一瞬で伝えてくださると思います」
『言語という目の粗い道具』では掬いきれぬくらいの純夏の思いを乗せたインタビューは、浅川の正義感を奮い立たせ、感化されやすい若者の中にある正しさを目覚めさせた。
「正しいことなら味方は勝手についてくる」という浅川の言葉は本当だった。
しかし、ぬるま湯に浸かり続けてきた者たちは最も変化を恐れる。番組の体制自体に問題があると念を押すも、製作陣は難色を示していた。
だがプロデューサーの村井喬一(岡部たかし)は賛成する。
当時の刑事の顔出しNGを指摘するなど、ジャーナリズム心に火が着いたかのように思われたが、局長に却下されることを見越してただ投げやりになっただけらしい。
一方の浅川もそれは何度も経験したことで分かりきっていた。
正しいと思うことを貫きたいマスコミだっているのだが、そこには腐りかけた世の中が作り上げてきた壁があるのだ。
覚悟を決めた浅川の『正義』が視聴者を動かす
その夜、話したいことがあると、浅川の自宅に斎藤が尋ねてくる。お酒を飲んでぐったりする浅川の前で、斎藤は一人煙草を吸い始めた。
食べ物すら喉に通らない浅川はまた吐き出してしまう。権力に敵わないと思い知ったとしても、どうしても飲み込みたくはなかったのだ。
浅川は声を上げて泣き出し、斎藤の優しさを求めた。
酒と煙草に縋るしか落ち着いてはいられない二人は、互いを求め合った。今この時に湧き上がる欲望と気持ちに正直になったのである。
そして浅川は一人、覚悟を決めた。
翌日、『フライデーボンボン』で放送されたのは、冤罪特集の映像だった。いつも通り浅川が笑顔を見せて始まるコーナーの中身は、パンドラの箱。
それはまるでEDでチェリーこと大山さくら(三浦透子)がテレビ越しに浅川を見ていたように、受け取る視聴者に浅川の正義は広まって行く。
混乱に包まれた現場を置き去りにして、そのVTRは流れ続けた。
浅川と岸本、2人の『正しさ』とは
人それぞれ『正しい』と思うことがある。
浅川はもはや何かに取り憑かれているようだ。「自分たちの過ちなんだから、自分たちで何とか挽回するしかない」という言葉は、根底にある正義なのだ。
同じく、いじめの加害者として友達を見殺しにした岸本も、とにかく正しいことがしたいのだ。
冤罪を暴くことも、披露宴で楽しくなくても笑い、祝福する気がなくても話を合わせて空気を読み、未だに墓参りに行くのも、自分は正しさの中にいるのだと気持ちよくなりたいのだ。
浅川恵那、岸本拓朗。二人の正しさは『救い』か『凶器』か。
新たなフェーズを迎える次回も必見だ。
[文・構成/grape編集部]