『配膳ロボット』と働く、すかいらーく 導入後に現場で『起きた出来事』とは?
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料理を客席まで運ぶ自動配膳ロボットの導入が進んでいる昨今。
みなさんも、ファミリーレストランなどで見かけたことや、実際にロボットから料理を受け取ったことがあるのではないでしょうか。
こうした自動配膳ロボットは、ファミリーレストランの『ガスト』や『しゃぶ葉』を展開する『すかいらーくグループ』が積極的に導入していますが、導入の決め手はなんだったのでしょうか。
ロボット導入の責任者である花元浩昭さんにお話をうかがいました。
ロボット導入がサービスの質向上に貢献!
――現在『すかいらーくグループ』では何台の配膳ロボットを導入している?
すかいらーくグループ全体で2千店舗あり、約2千800台の配膳ロボットを導入しています。グループ全体で約3千店舗なので、3分の2の割合で導入していることになります。
『ガスト』だけで見ても約1200店舗に導入しており、高売上の店舗では2台、3台導入しているケースもあります。
――配膳ロボットを導入することになった理由は?
お客さまの満足度向上と従業員の働きやすい環境づくりを目指し、客席注文タブレットの導入といったデジタル技術を用いて業務の改善などを進めておりました。
その一環として、2021年夏頃にロボットの導入実験を開始したのです。
当時はすでに導入しているほかの業界を視察したり、複数の配膳ロボットを用いて実証実験を行ったりしました。
最終的に『BellaBot(ベラボット)』の導入が決まり、同年11月から導入がスタートしました。
――導入の決め手は?
最初に導入したのは『しゃぶ葉』でしたが、正直、配膳ロボットの導入に半信半疑でした。
しかし、実際にロボットが働く状況、データを分析したところ、予想以上に業務に対してポジティブな結果が得られました。
例えば、『しゃぶ葉』は従来、人がお肉のおかわりを運んでいましたが、ロボットが代わりに運ぶことで、スタッフを別業務に充てることができます。
従業員がこれまで以上にドリンクバーを保清する時間やトイレ清掃の時間に充てられるほか、レジや下げ物をする業務をタイミングよくできるようになるわけです。
業務を効率的に実施できるようになると、次のお客さまをご案内する時間も短縮できます。
――ホスピタリティーを高められる?
そうです。結果的にサービスの質向上につながります。
サービスの質がアップすれば、お客さまの満足度も上がり、客数も伸びます。
実証実験ではこうしたポジティブな結果が得られたので、「じゃあ導入しよう!」となりました。
ロボットは人の代わりではない
――ロボットを導入することの利点は?
ロボットは、プラスアルファの働きをしてくれることが魅力だと思っています。
よく「人件費が削減できるのか」と聞かれることがありますが、人が行う業務をまるまるロボットに任せることはできませんし、我々も人の代わりにロボットを入れようとは考えていません。
――確かにロボットが自律的に料理をピックアップして、客席まで行くことはできない。
ロボットに料理を乗せるのも人ですし、どの席に持って行くかを指示するのも人です。
客席まで運んだ際も、やり方がわからず受け取れないことや、体が不自由なお客さまもいらっしゃいます。
その場合はスタッフが必要になりますよね。ロボットがスタッフ1人の代わりになることはできません。
ロボットにすべて任せるのではなく、ロボットを上手に使って、スタッフの負担を減らすことが大事です。
ロボットの得意分野、人でしか表現できないホスピタリティを分担することで、サービスの質は確実に上がるものと考えています。
――実際に従業員の負担は減っている?
ホールで接客をするスタッフの歩く距離が大きく減りました。
例えば、面積の広い店舗では、忙しい時間帯だけで見ても1万歩以上歩きます。しかし、ロボットを活用することで歩く歩数が半分に減りました。
スタッフも客側も好意的に受け入れている
――配膳ロボットに対して、店のスタッフの反応は?
当初は「本当に使えるのか」「うちの店には必要ない」という声も少なからずありました。
ただ、実際にロボットが配膳する場面を目にして、一気に目の色が変わりました。
導入して1か月も経つと「ロボットを入れる前は、どんなオペレーションだったのか覚えていない」「前の状況が考えられない」といった状況になりました。
導入から1年経過した今では、良好な受け入れ体制が築けています。
――ロボットも大切な仕事仲間になった?
以前、スタッフがロボットにねぎらいの言葉をかけている瞬間をお客さまが見ていて、その模様がSNSにアップされて話題になったことがありました。
こうした心温まるエピソードも、ロボットを導入したことで生まれたものです。
――客側の反応は?
ロボット導入後にアンケートを取り、80%以上のお客さまから好評をいただくなど、多くの人に支持をいただきました。
当初は新宿や秋葉原など、ロボットを受け入れてもらいやすそうな環境の店舗から導入実験をスタートさせましたが、今となってはどの店舗でも好意的に受け入れていただいています。
ロボットの導入を「待ってました!」と歓迎してくださるお客さまも多いですね。導入日には多くのお客さまでにぎわうなど、導入初期と比べて環境が大きく変わったと感じています。
ただ、ロボットによるサービス自体に指摘をいただくこともありますね。
スタッフによるサービスを求めるお客さまがいることは当然だと思うので、その場合はスタッフによるサポートを行うなど、オペレーションを工夫して対応していきたいところです。
――ロボットの接客を望む声は多い?
実際に「ロボットに運んできてほしい」という声は少なくありません。特にお子さまからは、そのような声をよくいただきますね。
――なくてはならない存在になりつつあると。お客さんに受け入れられた決め手は何だった?
『BellaBot』は猫型で、画面にさまざまな表情が映し出されます。
このかわいらしいキャラクター性は、スムーズに受け入れていただけた一因なのかなと思います。
店側としては、業務上で手の届きづらかったサービスに力を入れられるようになったので、スムーズに受け入れられたのではないでしょうか。
ロボットと一緒にホスピタリティーを高める
――配膳ロボットが間違って別のところに行ったり、迷ったりしないかという心配は?
ロボットですから、なんらかの不具合が起こる可能性はゼロではありません。しかし、万が一でも事故やトラブルを起こさないよう、安全性を担保しています。
例えば、迷子になると立ち止まるようになっていますし、段差や階段付近には行かないようになっています。
また、ロボット同士でコミュニケーションを取り、お互いの位置を確認してぶつからないようにしています。
――お互いの位置を確認して動いているとは面白い!
人間にとっては、なんでもない段差もロボットにとっては無視できないものです。
人間とは勝手が異なるので、ロボットがスムーズに動けるような工夫をしないといけません。
今後新しくオープンする店舗や、改装する店舗では、ロボットの運用を最初から想定した設計をするといったことが求められるでしょう。
――今後の展望は?
私たちの仕事は、人と人とのコミュニケーション、ホスピタリティーを重視する業種です。
新型コロナウイルスの感染状況が落ち着いたとしても、新しいサービスの価値を提供し続けることが大切と考えており、ロボットを上手に活用し、業務を効率的に運営していけるような工夫を模索したいと思います。
導入が増えている配膳ロボットですが、『すかいらーくグループ』では現場も客側も非常に好意的に受け入れているようです。
実際に『ガスト』で働いているロボットの模様がSNSで話題になったり、テレビで紹介されたりと、以前よりもロボットの存在が身近になっているように感じますね。
今後はより一層、人とロボットとの協力、共存が進むことでしょう。
[文/デジタル・コンテンツ・パブリッシング・構成/grape編集部]