言葉は、生きる力を育てる 心に留まる言葉に出会えるのは、幸運なこと
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
言葉を生きる力を育てる
12歳のとき、『生きがい』という言葉に出会いました。もう半世紀も前のことですが、その言葉を見つけたときの衝撃は今でもよく憶えています。
『私の生きがい』
これは、小学校の卒業文集の中にあった友達の作文の題名です。その中で友達はこう思いを書いています。
「自分の生きがいはピアノ、将来はピアニストになって演奏旅行に行きたい。その日のために、今日も練習を頑張ろう」
何かになりたいと漠然と思っていた私は、『生きがい』という言葉に揺さぶられました。
小学6年生にして、ピアノという生きがいに出会い、ピアニストになる決意をした友達を心から尊敬しました。と同時に、自分の生きがいを探す旅が始まったのです。
大学を卒業し、広告代理店に就職して、思いがけず作詞家という道が開けました。
自分を生かして生きるという実感を味わえる仕事に出会い、40年近く経った今でもその実感は変わりません。
それは『生きがい』という言葉に支えられてきたからだと思うのです。
言葉と出会う。人生を変える言葉、つらいときに希望の在処を教えてくれる言葉。
日々、私たちは言葉をシャワーのように浴びています。会話で、街の中で、テレビで、ラジオで。本、広告、SNSの中で……。
その中で、ふと心に留まる言葉に出会えるのは、幸運なことだと思うのです。
無意識に自分が必要としていた言葉に出会うのではないか。だからインパクトがあるのではないか。ですから出会ったその瞬間を逃さないように、立ち止まって胸に刻むのです。
心の杖としている言葉がもうひとつあります。会社に勤めながら作詞の勉強をしている頃でした。
忙しい部署だったので、会社を辞めて、アルバイトをしながら自由に作詞の勉強をしたいと、ある先生に相談すると、先生は優しく、そしてきっぱりとこう言いました。
「辞めてはいけません。ジャンプするときにはしゃがみますよね。今は、しっかりしゃがんでください」
この言葉に、私は目が覚めるような思いでした。耐えること、それをバネにしてジャンプすること。
これも40年ほど前のことですが、その後、困難なことがあるたびに先生のこの言葉に支えられています。
言葉には力がある、とよく言われます。確かにあるのです。でも、それを『力』にできるかどうかは、人それぞれの覚悟や生き方によるのではないかと思います。
言葉に出会う。言葉は、生きる力を育てます。そして胸に刻んだ言葉は、共に人生を歩んでいく友でもあるのです。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」