「甘える」ことと「依存する」ことは違う 甘えることを自分に許すことで、生きることが少し楽になる
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
『甘えること』を自分に許してみると
先日、体調をひどく崩し寝込んでいると友人から連絡がありました。「何か作って持っていこうか?」と言うと、「Uberで頼むから大丈夫」と。
友人は娘を一人で育て上げ、経営者であり、責任感が強く、何もかも自分でやってきた人です。人に迷惑をかけたくない、と思う気持ちがわかると同時に、生きづらさがあるのではないかなあと思いました。
30代を過ぎた頃、(このままの自分でいいのだろうか)という漠然とした違和感が湧き、生きづらさを感じるようになりました。
ひとりで生きていく力はそれなりにあり、仕事にも恵まれて、何の問題もない。人からは何の不自由もないように見えていたと思います。でも、(何かが違う)と思いを、無きものとすることができなかった。
その違和感が何なのか。答えを探すことは、『トンネル』の中を出口を求めて歩いていくような感じでした。気づきを求めて心理学や自己啓発の本を読み、講演会を聴きに行き、さまざまなワークを受けました。
パワースポットと呼ばれるところにも行き、イルカとも泳ぎました。知識と楽しい思い出は得たのですが、私が求めている『答え』には辿り着かない。
答えは自分の中にあるのに、探り当てることができない。喉に何かが詰まっているような、そんな状態が数年続きました。
小さい頃から『夢』に興味があり、『ドリームセラピー』を学びました。その学びの中で、幼い頃に見た忘れられない夢を通して、違和感の原因がストンッと見えたのです。
腹に落ちるとはこのこと。喉に詰まっていたもやもやとした違和感が、まさに「腹に落ちた感」があったのです。それは、ある幼い日に決めてしまった「甘えてはいけない」という、自分に対する決め事でした。
しっかりしなくてはいけない。人に頼らずに自分でしなくてはならない。しかし、人生のいろいろな場面では、自分で抱えきれないことが起こるものです。ひとりでは引き受けられないことがあります。
大切なことは、安心して甘えられる環境を作ること、助けてください、と言えるようになることだと気づいたのです。ですから結婚は、私にとって他人に委ねることができるようになるためのチャレンジでもあったのです。
「甘える」ことと「依存する」ことは違います。甘えることは、自分の足で立っているからできること。依存は、自分の足で立たずに相手に乗っかっていくことです。
「何か作って持っていくよ」
もしも私だったら何て答えるだろう。今の私は、その申し出を受け取りたい。
「こういうときは、人に甘えていいのよ」
友人に、そのままの気持ちを伝えました。
消化のいいものとフルーツを見繕って、友人に届けました。
「由美さんの言葉、心にすっと入ってきた。これまで、甘えるなんて考えたことなかった」
甘えることを自分に許すことで、生きることが少し楽になる。そして人と優しさと感謝でつながることができるのではないか。
この複雑になってしまった世界の中で、そんなシンプルなことを考えてみるのです。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」