30代から待ち受ける中年期の危機『ミッドライフ・クライシス』をチャンスに変える
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
『自分という物語を生きる』
ミッドライフ・クライシスを自分らしさを取り戻すチャンスにする
その年頃になれば身体が変化する、とわかっていれば、胸が大きくなっても白髪になっても驚くことはありません。思春期も更年期も、その年代になれば体験すること、その変化に戸惑いや大変さはあったとしても、受け入れながら過ごすものです。
「私の人生、このままでいいのだろうか」
それまで順調に歩んできた道の途中で立ち止まって動けなくなる時期があります。30代から40代、多くの人が自分というものに対する迷いや不安、疑問を持つものです。
私も30代の初めの頃、この生き方が本当に自分の成長につながるのかどうか疑問を持ち、(何かが違う)という思いをどうしても拭えずに、トンネルに入ってしまいました。作詞に加え小説やエッセイを書き始め、仕事は順調でした。でも、何かが違う…。着心地の悪い洋服を着ているような違和感を、だんだん拭えなくなっていったのです。
自分自身を問い直す。人生の意味を問い直す。30代に味わったトンネルのような時期が『ミッドライフ・クライシス』だと知ったのは、数年前のことです。
10代の初めに身体の急激な変化と心の成長のアンバランス、そして親の価値観の中にいた殻を破ろうともがく思春期。自分は何なのか、どう生きたらいいのか。そんな本質への関心が高まり、悩みます。これは大人になるための通過儀礼であり、ここでしっかりともがくことで、自己を確立することにつながります。
30代、40代に待ち受けるのが中年期の危機、ミッドライフ・クライシスについて、多くの心理学者やユング派の分析家の臨床研究によって明らかにされてきました。
働き盛りの中年期、人生の選択、ストレス、プライベートの変化、責任、悩みや落ち込むことが多い年代です。少しずつ身体も変化してきます。そんなストレスフルな状況がトリガーとなることが多いのですが、(このままでいいのだろうか)(自分とは何者なのか)という根本的な問題に突き当たってしまうのには、もう1つの理由があります。
大人になるにつれ、私たちは『役割』を生きるようになります。妻として、夫として、親として、子どもとして、社会人として。すると、もっとも根源的な『自分』という存在が埋もれてしまうのです。いくつもの役割を生きているうちに(これは本当の自分ではない)ということに気付いてしまう。そして、本来の自分と、生まれてから身につけてしまったさまざまな役割や価値観を持った自分との乖離が起こり、それを無視できなくなる…これが、ミッドライフ・クライシスなのです。
私たちは生きているかぎり成長過程にあります。年をとって衰えていくのも、ある意味成長なのです。身体は衰えても、心も生き方も成長しつづけることができます。ミッドライフ・クライシスは成長のための通過儀礼です。それを知っていれば対処できるのです。(このままでいいのだろうか)(自分とは何者なのか)というテーマに積極的に取り組むことで、後半の人生の生き方が変わってくる。そう、どう乗り越えるかということが、自分の物語になるのです。
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」