革財布の値段の差を老舗『山藤』5代目が解説 職人の手間と素材の違いとは
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独特の風合いを持ち、使えば使うほど年季が入って味が出る革製品。みなさんの中でも革製の財布を使っている人もいるでしょう。
ひと口に革財布といっても、売り場には高価なものと安価なものが並んでいますよね。
では、この値段の差はなぜ生まれるのでしょうか。
1899年に初代・山本徳太郎さんが革財布の工房を創業したことに始まる老舗『山藤』(やまとう)に取材しました。
ちなみに、『山藤』は、2代目の山本藤次郎さんの氏名の山と藤を取った屋号です。
現在は5代目の山本浩司さんが当主、代表取締役社長を務めており、伝統の技術と熟練の技で確かな製品を生み出し続けています。
話をうかがった『山藤』5代目当主・山本浩司代表取締役社長。
工程によってさまざまな工夫と苦労がある
革財布がみなさんの手に届くまでには、以下のような工程を経ています。
山本社長によれば、それぞれの工程で熟練者の技が問われ、最終的な値段に影響するとのこと。
工程の数が多いほど、それだけ職人の手が入る時間も増えます。高価な革財布ほど、こうした手間のかかる工程を丁寧に踏んでいるわけです。
【革財布の作業工程】
・革の仕入れ
・裁断
・箔押し
・革漉(かわすき)
・縫製
・仕上げ
・流通へ
いい皮をいい『革』にする!
まず、皮と革の違いです。原材料の牛などの皮をなめし、実際に製品に使用できるようしたものが革です。
皮の時点で、高級なものとそうでないものがあり、アメリカ合衆国、ヨーロッパ、日本など皮の産地は多様。中でも、原皮としてはヨーロッパ産が一般的に高価となっているとのこと。
いい皮は繊維が細かく目が詰まっており、これがいい革に仕立てられます。この作業も時間が掛かり、熟練者の腕が必要な作業です。
丁寧になめされて皮が革となり、ここから革製品のパーツが切り出される。
中でも『タンニンなめし』という革は、タンニン、つまり渋(シブ)を使って腐らないようにしながら3か月ほどかけて仕上げます。
時間をかけてじっくりなめされた革は繊維がしっかりと引き締まり、使い込むほどに色が深まるエイジング(経年変化)が楽しめるのが特徴です。
タンニン革を使った財布
塩基性硫酸クロムという、化学薬品を使ったクロムなめしの革財布。
最近では、ドラムという装置でなめすものもあるそうですが、山本社長によるとやはり性急に行った場合、肌目が違ってきたり、コシが弱くなったりするのだとか。
「材料の加工段階が手作業なので、やはりその職人の趣が出るし、でき上がりの精度が変わってくる」そうです。
なめしの段階から既に仕上がりの品質に差が出始めており、原材料の選定とその加工だけで、最終的な製品の価格差の多くが決まってくるわけです。
それぞれのパーツに最適な裁断を行う
次は、それぞれ風合いが違う革を特性に合わせて仕入れて、財布になるようにパーツを裁断。
裁断では革を見る目が要求され、革のどの部分をどのパーツに使うのかという目利きも重要となります。
山本社長の話によると、同じ革でも元は生き物なので、部位によって向いている『使いどころ』が違うのだそうです。
例えば、よく曲がる首の場合には皮も目がその方向に走っており、財布にする時も目に沿って曲がるようにパーツ取りをするとのこと。
また、お腹の部分の皮は柔らかいので、こちらも財布になった時に柔らかさを生かせるパーツ取りをする必要があります。
つまり、単純に洋服の型紙に従って布地を裁断するような方法ではないということです。
この目利きができるかどうかで、完成した財布の使い心地が大きく変わります。同じ革を使っても、パーツ取りの巧拙で製品の品質に差が出るのです。
『箔押し』や『革漉』に求められる熟練の技
『箔押し』は、革の上に刻印を転写すること。革の上に『箔』と呼ばれるシートを乗せ、その上から刻印を押し当てます。
これを小さな文字まできれいに転写するのは、なかなか難しいのです。
革が紙のように滑らかでつるつるであればスタンプ押しのようにできますが、革は表面に立体的なシワがあります。
きれいに転写するには、ここでも技術が必要とされるのです。ちなみに、革の表面にあるシワ模様のことをシボといいます。
また、革製品の場合、裁断した各パーツに革漉(かわすき)という作業を施さなければなりません。
パーツによっては漉いて薄くしながら厚みを変えていくといいます。
革漉が行われたパーツ。真ん中が盛り上がっている。
下の写真も裁断されたパーツですが、四角い真ん中以外の周辺は漉かれて厚みが薄くなっていますね。
でき上がりが想定できていないと、「ここは薄くして…」という判断はできないため、革漉でも職人の経験と技が必要です。
革漉が不十分だと縫い合わせた部分が分厚くなりすぎてしまい、使い勝手が悪くなるだけでなく見た目にも影響が出ます。仕上がりのきれいな革財布の裏には、こうした細かい下準備が積み重なっているわけです。
このようにして作られたパーツを組み合わせて縫製し、最終的に製品になります。手作業であれば、もちろん職人の腕が求められます。
山本社長によれば「職人の人となりが全部出ます」とのこと。
購入時は実際に手に取ってみよう!
原材料の皮の高い安いから、革にする工程での労力の差、また熟練の職人が関わっている分の差などが積み上がって、製品の価格差が生まれることが分かりましたね。
さらには、製作会社からメーカー、メーカーから流通、小売店へと流れる過程でそれぞれの利益が乗ります。ここも価格差となる部分です。
裏を返せば、同じ価格帯の財布でも、流通段階の少ないメーカー直販と多段階の小売りでは、製品そのものにかけられているコストが変わってくるわけです。
『山藤』の場合には、製作会社兼メーカーとして自社ブランドで革財布を販売しているので、比較的安く質の高い製品を提供できるというわけです。
関東大震災を生き残った当時の半纏。こうした貴重な物が現在に伝わっているのも老舗ならでは。
最後に、山本社長からは以下のようにアドバイスがありました。
お話したとおり、もともとの皮から1つと同じものはありませんし、なめし方だけとっても同一の仕上がりはありません。
革製品というのは、時期によって染まり方も違う、作る職人の技量によっても違う、同じロットでも一つひとつの製品は異なります。
革財布とひと言でいってもまったく同じものはできません。逆に同じものを作ることはできないのです。
ですので、もし革財布を購入されるのでしたら、一つひとつ実際に手に取って、見比べて、楽しみながら選んでいただきたいです。
さわり心地、質感、色合いを確かめてみてください。使っていくうちにその人になじんで、使いやすくなっていくのが革製品です。
その人の味が出て完成していくのが魅力。ぜひみなさんに合った革財布を選んでください。
どの工程でも経験に裏打ちされた、目利きと技術が要求される革財布。
「革財布が欲しい」という人は実際に手に取り、自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。
移動販売車でも革製品をお届け!
「革小物を全国にお届け!」という試みを行っている『山藤』。
自社運営のオンラインショップのほか、移動販売車でその地域に出向き、実際に製品を見て、触って購入してもらうことが目的だそうです。
山本社長が語るように「一つひとつ手に取って選んでほしい」という思いが、この移動販売という形につながっているのかもしれません。
移動販売車の内装は見事な製品ギャラリーとなっている。
2023年10月27~29日には、静岡県沼津市に移動販売車が出動します。興味をもった人は以下のウェブサイトで確認してください。
山藤
[文/高橋モータース@dcp・構成/grape編集部]