ペットショップで買わないで、って言うけれど 里親になる条件が厳しい理由
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ペットショップのショーウインドウでは、子犬や子猫たちが遊んだり、眠ったり。
休日のペットショップは家族連れやカップルたちで賑わい、「あの子、可愛いね」「飼いたいなぁ」と口にする声が聞こえるでしょう。
ですが近年、動物愛護の観点から、こんな訴えが広まりつつあります。
「ペットはペットショップで買わないで」
ペットショップで買う以外の選択肢として、ボランティアが運営する保護団体や、自治体の動物愛護センターから引き取ることが勧められています。
日本で殺処分されている犬と猫は、8万頭を超えているのが現状です(環境省発表、2015年度)。
保護された犬や猫を引き取る人が増えていけば、いつか、殺処分数がゼロになる日もやってくるでしょう。
とはいえ、保護動物の里親になるのではなく、ペットショップで買う、という選択を取る人がいるのにも理由があるようです。
保護動物の里親になる条件が厳しすぎる
犬を飼うことに決めた、ある家族。
ペットショップで購入するのと違い、保護犬を引き取る場合は『代金』は必要ありません。ワクチン代や去勢代、エサ代などの実費の負担のみで済むケースがほとんどです。
安価で済み、さらに動物愛護につながるのであれば、保護犬を引き取るという選択肢を取らない理由はありませんでした。
家族はさっそく里親募集サイトを通じて、保護団体に里親になる申し出をします。
しかし保護団体から返って来た返事は、こんな理由で「No」でした。
里親になる条件は保護団体ごとに異なります。
家族はほかの団体にも申し込みをしましたが、条件に合わなかったり、希望する犬にほかの里親が決まってしまったりと、なかなか飼う犬が決まりません。
結局、その家族はペットショップで見かけた犬を飼うことにしました。
単身者であれば、条件はなおさら厳しい
上記の例は夫婦と子どもの家族でしたが、単身者の場合は、さらに里親になる条件は厳しくなります。
この2点は、里親になるにあたって重視される大きなポイントです。
さらに単身者の場合は「何かあった時、近くに世話をしてくれる近親者がいるか」という条件も加わる場合があります。
「残業が多く、家をあける時間が長い」「一人暮らしなので、部屋にそれほどの広さがない」「両親や親戚とは遠く離れて暮らしている」…こんな人は、里親になることを断られるケースが多く出てきます。
個人情報の提出を求められる
里親になるための審査として、住所、氏名、家族構成、家の間取りなどの情報を保護団体に伝えます。
また、実際に動物が暮らす環境を確認するために「家の中を見せてほしい」と求められることもあります。
公的な機関ではなく、個人が運営している保護団体に自分の情報を提出しなくてはならないことに、抵抗をおぼえる人も少なくありません。
もちろん、保護団体は個人情報については入念な取り扱いをしているはずです。ですが、国や企業が行っている管理と比べると、不安をおぼえるのも無理はありません。
「だったら、あれこれ条件が厳しくない、ペットショップで買ったほうが手っ取り早い」
そう考える人も多いでしょう。
なぜ、こんなにも条件が厳しいのか
「殺処分される不幸な命を救うために、保護動物の里親になってください」
そう呼びかけられているにも関わらず、なぜ、こんなにも里親になる条件が厳しいのでしょうか。
里親を探している動物たちは、一度は不幸な目に遭っている
里親を探している動物たちは、さまざまな経緯で保護団体の元にやってきました。
一度、つらい目に遭っている動物たちを、二度も不幸にするわけにはいきません。
「里親になる人物が、終生、動物を愛してくれるかどうか」
保護団体はそれを見極めるために、慎重にならざるを得ないのです。
飼い猫として引き取られたのに…
こんな、不幸な例がありました。
面談をし、身分証明書の提示を受けて、保護団体はある男性に数匹の猫を譲渡しました。
ところがあるとき、猫カフェのホームページに譲渡した猫の写真が掲載されていることを保護団体は知ります。
調べてみると、「自宅で飼う」と里親になることを申し出たにもかかわらず、男性は猫たちを猫カフェで働かせていたのです。
やわらかかった肉球がひび割れて傷だらけに
また、こんな例もあります。
近年では、猫は『完全室内飼い』が求められています。かつては、家と屋外とを自由に行き来させる飼いかたが一般的でした。
屋外は病気にかかったり、事故に遭ったりする可能性が高くなります。また、迷子になって帰って来られないケースもあります。
保護団体は里親に、必ず家の中で飼い、屋外に出さないことを条件に提示しています。
猫を譲渡したある里親と連絡がつかなくなったことを不審に思った保護団体は、必死に行方を捜しました。その結果、別の人物に断りなく譲渡され、遠く離れた地で猫が暮らしていることがわかったのです。
猫は屋外で飼われていました。
柔らかかった肉球は、地面を踏んで暮らしているため固くなり、ひび割れていました。
元は野良猫で衰弱していたところを保護され、ようやく健康を取り戻した猫です。
また再び外で暮らすはめになってしまったことに、保護団体の担当者は涙をこぼしました。
「もう二度と、固い外の地面は踏ませないと、この子に誓ったのに」
「譲渡条件を、もっと厳しくしなくてはならない…」保護団体が慎重になるのは、すべて動物たちの幸せのためなのです。
条件をクリアする覚悟がないと、飼うことはできない
保護動物の里親になるには、保護主が提示する条件をクリアしなくてはなりません。
それは時に、「そこまで厳しくしなくても」と感じるものかもしれません。
ですが、条件に見合わなければ、それは「縁がなかった」のです。
例えば、マイペースで、長時間の留守番ができる性格の犬や猫もいます。あまり活発に動くほうではなく、狭い部屋でも十分、ということもあるでしょう。
飼い主となる自分の環境に合う性格の動物は、きっといます。ただ、出会うまでに時間も根気も必要かもしれません。
それでも探し出して、一生家族として暮らす…その覚悟がなければ、里親になる資格はないといってもいいでしょう。
※記事中の写真はすべてイメージ
[文・構成/grape編集部]