ライオンとホワイト・タイガー 種を超えて、永遠の愛で深く結ばれる
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大型のネコ科の動物といえばライオンとトラが代表的。とはいえ、同じネコ科といっても、彼が行動を共にすることはありません。
動物園でライオンとトラが同じオリに入っているところや、アフリカのサバンナで、2頭が仲よく一緒に遊んでいるのを見たことはないでしょう。
しかし、ここでご紹介するオスのアフリカ・ライオン『キャメロン』と、メスのホワイト・タイガー『ザブ』は、種の壁を乗り越えたカップルです。
キャメロンとザブはアメリカ、ニュー・イングランド州のとある動物園で一緒に育ちました。
しかし、この名ばかりである動物園のオーナーは、彼らをかけあわせた『ライガー』という種の動物を繁殖しようと企んでいたのです。
『ライガー』とは、野生動物にはいない種の動物です。単なる人間のエゴによって作り出されるこうした種類の動物は、先天的な欠陥を多く抱えて生まれてきます。
『ライガー』という種の動物はこうした観点から、決して繁殖してはなりません。
また、ザブのようなホワイト・タイガーは美しく、毛皮業者が無節操な狩猟を行うため、野生で生き延びることは大変困難です。
そのため、世界各地で人工的な繁殖が盛んに行われているといわれています。私たちが動物園で見かけるホワイト・タイガーも、その1頭かもしれません。
※写真はイメージ
『ビッグ・キャット・レスキュー(BCR)』はそうした状況を悲しむ人々によって、2004年、フロリダ州、タンパに設立されました。
BCRのスタッフがニュー・イングランドの悪質な動物園を訪れた時、キャメロンは体重が90kgしかなく命の危険にあり、ザブは薄汚れて不潔な状態でした。しかし、2頭はぴったりと寄り添っていました。
2頭を見たBCRのスタッフは、ただ彼らの命を救うだけでなく、「明らかに特別な絆で結ばれたこのカップルがいつも一緒にいられる環境を作ってあげなくては」と思ったそうです。
選択肢は2つありました。1つは、彼らにとって害を及ぼす繁殖を防ぐため、2頭が離れて暮らすこと。
もう1つは、2頭それぞれに避妊・去勢手術を行い、一生子どもを作れなくなっても、2頭がいつも一緒にいられる環境を作ること。
2つの選択について、BCRのスタッフに迷いはありませんでした。
去勢手術によって、キャメロンは繁殖の能力を失いましたが、それによって愛するザブと、生涯にわたって共に暮らすことができるようになったのです。
とはいえ、もともとが違う種である彼らは、行動パターンが異なるようです。
キャメロンは野生のライオンがそうであるように、1日のほとんどをウトウトと眠って過ごそうとしています。
ザブはいつもそんなキャメロンに対して、精力的に「遊んで、遊んで」とアプローチしているそうです。
まるで、休日にTVを見ているゴロゴロしている夫にちょっかいを出し、「出かけましょうよ」と催促している妻のよう。人間の夫婦に置き換えて想像すると、なんとも微笑ましいですね。
活発で元気いっぱいのこのカップルは、いまやBCRを訪れる客やスタッフの人気者。
彼らの存在は、見ていて楽しいだけではありません。乱獲や望まれない繁殖など、大型のネコ科動物が直面している問題を、世界の人に発信する役割も果たしています。
[文・構成/grape編集部]