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「間違った判断をしたつぐない」 絵本作家・加古里子の原動力に、心を打たれる

By - grape編集部  作成:  更新:

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出典:偕成社『からすのパンやさん』のスクリーンショット

絵本作家の加古里子(かこ・さとし)さんが、2018年5月2日に亡くなりました。享年92歳です。

この知らせを聞いて、加古さんの作品を思い起こした人も多いのではないでしょうか。

1973年に刊行されてから長く愛されている絵本『からすのパンやさん』は、加古さんの代表作。40年経ってから、続編が出版されるほど人気があります。

絵本を描いてきた想いを、加古さんは出版社のインタビューでこのように語りました。

昭和20年から思いがけず長生きさせて頂きましたが、生物ですから当然、目は悪くなるし物忘れはするし、順調に老化鈍化の道をたどっています。間違った判断をしたつぐないを少しでもしたいと思ってきましたが、そんなことをしないかしこい子になって、未来をひらいてゆくように祈念しています。そういうかしこい子を自らの生活と態度で応援する、かしこい大人になって下さるよう心から願っています。

偕成社 ーより引用

自分のつぐないで、子どもや大人たちが賢くなることを願っていた加古さん。

加古さんが述べた「間違った判断をしたつぐない」とは、一体何なのでしょうか。

『からすのパンやさん』の内容と合わせてご紹介します。

『からすのパンやさん』のストーリー

【内容紹介】

「いずみがもり」には、カラスの夫婦が営んでいるお店がありました。

夫婦の間には4羽の赤ちゃんが生まれるのですが、みんな色違い!可愛らしい名前を付けて、夫婦は大事に育てます。

赤ちゃんのお世話は大変で、パンを焼いても失敗してばかり。

どんどん貧乏になってしまうのですが、成長した子どもたちや、ある騒動のおかげで大評判のお店に成長するのでした。

赤ちゃんが泣いたら、仕事や家事を放り出して駆け付けなければいけない親の苦労が描かれていて「リアルだなあ」と感じられるシーンも。

絵本を子どもに読み聞かせている、親の心にも響くのではないでしょうか。

たくさんの魅力的なパンや、何十羽といる個性あふれるカラスたちは、もちろん子どもたちを喜ばせます。

魅力的なファンタジーの世界…ですが、ほかにも「地に足の着いた絵本だ」と感じる場面があちこちにあるのです。

そのワケは、加古さんの戦争体験が関係しているのかもしれません。

後悔した過去

1926年、福井県武生市(現在の越前市)に加古さんは生まれました。青春時代は戦争一色です。

家が貧しく、学費を出せなかったため軍人になる道を選んだ加古さん。飛行機が好きな少年だったため、将来は航空士官になろうと思っていました。

しかし近眼になってしまい、航空士官の夢は叶いませんでした。そのために、特攻隊として戦死することはなかったのですが…。

ぼくも本当は、目がよかったら、死んでいる人間なので、よかったね、という人もいるのですが、それは違うのです。親には最後許可を受けましたが、自分で判断したわけですよ。世の中が軍国主義になったので、私のせいではないという人もいますが、ぼくは自分で判断したので、だれが悪いかといえば自分が悪かった。

偕成社 ーより引用

戦争に参加することを選んでしまったことを、心から悔やんだ加古さん。

原因を探って、自分が無知で判断能力を持たなかったことに思い至りました。

そこから、加古さんは次のような決意をします。

子どもさんたちが、自分でしっかりできるようになるためのお手伝いをしようと思ったわけです。それくらいしかもう生きている意味がないと。

偕成社 ーより引用

加古さんは、子どもたちが自分と同じような過ちを犯さないように、またしっかりと1人でも生きていけるようにと、願いを込めて絵本を描いていました。

だから、現実を見つめた描写が絵本に登場しているのでしょう。

また、加古さんは子どもたちについて、このように考えていました。

子どもさんはちゃんとこれから生きていくために、まわりの大人がどんなことをやっているか、この中で自分のプラスになるものはどれだろうと思って、まわりの世界からいろんなものを得よう得ようと、密かに思っています。それをくださいとはいわないのだけれども、密かに思っているのです。

偕成社 ーより引用

そんな期待に応えるためにも、子どもたちの人生にプラスになるようなお話を生涯描き続けたのでしょう。

想いを知ったいま、改めて加古さんの作品を読みたくなりますね。

『からすのパンやさん』

偕成社 かこ さとし 著

『からすのパンやさん』をAmazonで見る。


[文・構成/grape編集部]

出典
偕成社

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