両目を失った愛犬のために 犬と一緒にハイキングをする男性 その理由に感動
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アメリカに住むカイル・レーリッヒさんはハイキングが大好き。本格的なハイカーである彼はこれまでにアパラチアン・トレイル(約3千500㎞)やパシフィック・クレスト・トレイル(4千260㎞)など、数々の長距離自然歩道を制覇してきました。
カイルさんにはかけがえのないハイキング仲間がいます。それはメスの柴犬『カタナ』。
カタナはどこへ行っても人気者で、カイルさんと一緒にハイキングをしていると出会う人たちはみんな、彼女にメロメロになるのだとか。そのおかげで見知らぬ人からおやつをゲットする機会も多いといいます。
愛犬と一緒にハイキングを続ける理由
2019年1月、カイルさんとカタナは特別なハイキングに出発します。行先は約1千520㎞のフロリダ・トレイル。
カイルさんがこのハイキングに行くことを決めたのには理由がありました。
彼らがパシフィック・クレスト・トレイルを歩いている途中でカタナが緑内障を発症したのです。2016年のことでした。
このハイキングを終えた後、カタナは左目を摘出。その後は残った右目で普通に生活をしていましたが、2018年にその右目も緑内障になり、摘出することになったのです。
完全に光を失ったカタナはなかなかその状況に慣れることができずにいたといいます。
ウェブメディア『The Dodo』によると、冒険好きで自信に満ちあふれた彼女は、慎重で何をするにもビクビクしてしまう臆病な性格になってしまったのです。
そんなカタナを見たカイルさんは、「カタナに再び自信を取り戻させるために」フロリダ・トレイルのハイキングに行くことを決心します。
フロリダ・トレイルはほとんどが平たんな道ですが、ぬかるみや沼などがあり、目が見えないカタナが自力で歩き進むには困難な場所が多いのだそう。またヘビやワニなども生息しているため、常に危険と隣合わせなのです。
そのためカイルさんは、安全でないところはすべてカタナを背中に背負って進みました。
「こっちだ、おいで。大丈夫だ。安全だよ。そうだその調子。もう少しだぞ。いい子だな」
大きな水たまりで戸惑うカタナ。しかしカイルさんが励ましながら声をかけると、勇気を出して進み始めます。
こうしてカタナは少しずつ、知らない場所を歩く恐怖を乗り越え、自信を取り戻していったのです。
彼らは3月後半に、フロリダ・トレイルのゴール地点に到着しました。カタナは約320㎞を自力で歩き、残りはカイルさんが彼女を背負って歩きました。
ゴールした時、カタナはもう出発時の臆病な犬ではありませんでした。彼女は以前のような好奇心旺盛で自信に満ちあふれた犬になっていました。
「たとえ目が見えなくても、『自分はまたハイキングに行けるんだ』ということをカタナに信じてもらいたい」
カイルさんのそんな願いで挑んだハイキングは、カタナに再び自信を取り戻させてくれたのです。
カタナにとっては両目を失ってから、初めてのハイキング。
大好きなカイルさんと一緒に歩きながら、きっと彼女の心の目にはしっかりと以前に見たのと同じ壮大な大自然の景色が映っていたことでしょう。
日常生活に戻ってからも、すっかり自信を取り戻したカタナは元気いっぱいで走り回っているといいます。
カイルさんは今後も、カタナを連れていろいろなところへ行くつもりなのだそう。
彼らの冒険が、この先まだまだ何年も続いていくといいですね。
[文・構成/grape編集部]