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歌は悲しみをこえて 癒しとは、自分の中で生み出していくもの

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

歌は悲しみをこえて

悲しみを小脇に抱えて生きていく。大切な人を失った悲しみは、決して消えることはありません。時が経ち、風化することはあっても、そこに「ある」のです。でも、悲しみの中に居続けたら生きていくのはつらいものになる。だから、小脇に抱えて生きていく。小脇に抱えられるようになる…それが『癒し』であり、『再生』なのです。

18歳の息子さんを突然交通事故で亡くしたK子さんが言の葉塾とソングライティングクラスを受講されたのは、息子さんが亡くなって3ヶ月後のことでした。K子さんは毎回泣いていました。非日常が日常になっていく。悲しみを、喪失感を、K子さんは思いの丈を文章に、歌に綴りました。心に溢れ出るものを流すように言葉にする。これは、『癒し』のプロセスのひとつでした。

息子さんの一周忌を前に、K子さんは二つの歌詞を完成させ、曲をつけてもらい、レコーディングをしました。歌はシンガーソングライターの陣内大蔵さんとSinonさんに。せつなくて、温かくて、透明感のある歌になりました。そして、その歌を一周忌の時に流したそうです。

「風鈴」

「葉風」

息子さんが亡くなって3年が経った先月、K子さんは大切な人を亡くした人たちと、その思い出を歌で綴る小さなイベントを主催しました。思い出の歌とエピソードを紹介し、みんなで歌うのです。小さなライブハウスに70人あまりのお客様が集まっていました。これだけお客様を集めるだけでも大変なことです。

司会を務め、エピソードを紹介するK子さんの姿に、泣けました。そこに本当の癒しと再生を見たのです。歌と歌との間に涙を流しながら、自分のためにではなく会場にいる多くの人の思いに寄り添っている姿は、希望そのものでした。

癒しとは、人に施してもらうものではなく、自分の中で生み出していくもの。人は往往にして、外に癒しを求めるものです。癒されたい、という思いを募らせる。でも、外から与えられるものはきっかけでしかなく、そこからどう生きようとする力を生み出すか。そのプロセスが癒しなのだと思います。と同時に、それは人が再生する始まりでもあるのです。

作曲を担当した陣内大蔵さんと池間史規さんのミニライブもありました。もちろんK子さんの歌も披露されました。

泣きながら書いたK子さんの歌が、多くの人の心に寄り添うように伝わっていく。悲しみを小脇に抱えながら生きていこうとする希望を、歌が手渡すように伝えていました。

※記事中の写真はすべてイメージ

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[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
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出典
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