「お世話になっております」言葉と感性に命を
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
言葉と感性に命を吹きこむ〜「お世話になっております」という「挨拶」から
「いつもお世話になっております」
メールなどの冒頭の挨拶でよく交わされる言葉です。
手紙では「拝啓」「前略」などの頭語がありますが、仕事上のメールではお世話になっているかなっていないに関わらず、「いつもお世話になっております」が頭語にとって代わっているようです。
この場合の結語は「敬具」ではなく「よろしくお願い申し上げます」でしょうか。特別な決まり、形式があるわけではありませんが、いつの頃からかこのような表現が一般的に使われるようになりました。
直接的な形で「お世話になる」ことはなくても、めぐりめぐってご縁がつながることは、とてもありがたいことです。
言葉が記号になってはいけない。これは常々思っていることです。
「お世話になっております」「ありがとうございます」と口にするとき、文字にするとき、そのありがたさを本気で感じる、思うことが大切だと思います。
めぐりめぐるご縁のどこかにある恩恵を思う。言葉にこもっているエネルギー……それを言霊とも言いますが、そのエネルギーを伝える気持ちを持ってみる。
すると、先方にそのエネルギーが伝わります。よくよく意識してみると記号のように、スタンプを押すように伝える言葉の空虚さに気づくでしょう。
多くの情報が行き交うこの時代の中に思うのは、利便性、合理性を優先する先に行き着くであろう感動の「質」です。例えば旅行に行くときに、現地の情報を集めます。
自然の美しさ、絶景、街並み、楽しみにして出かけます。そしていざその地に立ったとき、(写真と同じ)または(写真ではもっときれいだったのに)と思うことはないでしょうか?
情報を入れすぎるために、「確認」になってしまう。「思い込み」が感性を鈍らせる。不思議なことを解釈しようとする。
感情を脳の仕組みに当てはめる。時にはそれも有効ですが、不思議なことを解釈すれば、空の青さも、夕日の美しさもなんでもないものになります。
人の気持ちの揺らぎを脳の仕組みで説明すれば、誰かを好きになることも脳の仕業になります。そんな味気ないことがあるでしょうか。
私たちをつないでいる何か。心を震わす何かは、説明のつかない非合理的なものなのかもしれません。
言葉のエネルギーも、美しいものに触れたときの感動も人生を豊かにしてくれます。本気で伝える。あるがままに心を震わせる。
命を吹き込まれた言葉や感性は、日常をもいきいきと躍動させるのです。
いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」