人の話を聞くのが苦手なあなたへ…ヒントになるかもしれない探偵小説の話
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「名探偵」という言葉を聞いて、大抵の人がまず最初に思い出すのはシャーロック・ホームズだろう。イギリスの作家アーサー・コナン・ドイルが生み出したこのキャラクターは、今でも世界中に多くのファンを持っている。彼の活躍を描いたシリーズは推理小説の古典ともいうべき存在だが、日本版『シャーロック・ホームズ』があるのを御存知だろうか。
舞台は江戸。探偵は、半七という岡っ引きである。
岡本綺堂の『半七捕物帳』(光文社文庫ほか)は、物語の構造が興味深い。シャーロック・ホームズの活躍が助手のワトソンによって記されたものなら、半七の方は、作中の現代(=大正)に生きる新聞記者の青年が、年老いた半七の口から聞いた話を書き留めたものが元となっている。
タイトルにある「捕物帳」というのは、岡っ引きの上司である与力や同心(今でいう刑事のような人々)が事件に関する報告を受け、それを更に町奉行所へ報告するために書き留めるのに使った帳面のこと。捜査報告書のような物だろう。
新聞記者の青年はかつての与力や同心たちと同じように、自らの手帳に半七老人が語った話を書き留めていく。彼なりの捕物帳を作るのだ。
事件の数は、実に68篇にも昇る。たとえ記したのが簡単なメモ書き程度だとしても、事件の顛末までわかるように書いたとなるとなかなかの分量になる。現に主人公は、「一冊の手帳は殆ど彼の探偵物語でうずめられてしまった」と語っている。
メモ書きというのは手軽に出来るようでいて、実用的な物を作ろうと思うと結構難しい。まして、人の話を記録する際には、相手が話す情報をなるべく余さず汲み取る必要がある。そのまま録音出来るのなら良いが、文字だけとなると相手が言葉に込めた微妙なニュアンスが失われてしまう可能性が大いにある。結果的に、話し手が本来伝えたかったことが伝わらない文章が出来上がる。
半七老人によって語られる事件には、王道の殺人事件もあれば一見怪談に見える事件の真相を突き止めるものなど様々な種類がある。
しかし、そのどれもが江戸という時代に生きる人間たちが起こしたことであり、事件の裏にはそれなりの動機が隠れている。『半七捕物帳』では、そうした江戸時代の人々の「生の姿」を垣間見ることが出来る。これは、半七老人の話を余さずメモに記した青年の功績ではないか。
残念ながら、青年がどんなメモで手帳を埋めたのかは知る術がない。私たちが目にすることが出来るのは、彼が残した68篇の「成果」としての小説だけだ。
だがひょっとすると、これが答えなのかもしれない。短編小説を書くぐらいの心持ちでメモを取る。これぐらい前のめりで人の話を聞けば、実用的なメモで手帳を埋められるのかもしれない。
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