80年間ありがとう!九大生の集会所『三畏閣』にお別れ

By - TOGGY  公開:  更新:

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ボンジョルノ!建築好きが高じて事務所スタジオと茶室を建て、毎月の返済に追われているTOGGYです。

ロンドン留学の際に自国の建築史研究の必要を感じた辰野金吾。その教え子伊東忠太が「法隆寺が日本最古の建築であること」を学問的に論じ、日本の建築史の第一歩が記されたと言われています。

中国建築の影響を受けながらも近代は西欧の影響を強く受け、しかし日本の風土・文化に合わせた独特の展開も見られ奥が深い。煉瓦や石で壁を築いてゆく西洋建築と、柱・梁を基本構造とする日本建築は対照的な存在であり、20世紀モダニズムの時代に入ると、近代建築の理念を先取りした点があるとして世界的にも注目されるようになりました。

などと、客員教授的な話をすると長くなるのですが・・・

世界的な評価を得る建築家を多く輩出し、現代建築のレベルは上がった日本。その反面、経済性・合理性ばかりが優先され全国の都市で駅前の風景は同一化し、都市の美観など期待できなくなってきています。

福岡市東区箱崎にある九州大学・箱崎キャンパス。明治44年に九州帝国大学が設立されてから100年以上の時が流れ、大学は現在福岡市西区の伊都キャンパスへ学部単位で順次移転しています。僕は2年前の番組取材で、この移転に際して貴重な近代建築が失われてしまう事実を知りました。

個人の力ではどうにもできないもどかしさから、作っては壊す20世紀の消費型開発ではない21世紀の循環型開発ができる環境を目指し『九大跡地ファンクラブ』などの活動もなされています。

そのキャンパス外の敷地に長く存在し続け、学生と教師の交流の場として大切な役割を果たしてきた建築物が『三畏閣(さんいかく)』。三畏とは『論語』にいわれる君子の畏れるべき『天命・大人(人格が高い人)・聖人の言』のこと。

1937年、学生の福利厚生を充実していくことで思想善導を図る観点から建てられた設計者不明の純和風のこの集会施設は、入母屋造、妻入、桟瓦葺の2階建に上下あわせて5室。玄関広間の左手には床の間のほかに、縁側、出窓付きの大集会場が。また池のある和風庭園を挟んで書院の向こうには四周を縁側で囲まれた特別集会室があり、炉が切られ茶道部の茶会や練習に利用されていたそうです。

先日、隣地と共にこの建物・土地が10億円を超える額で落札され、新たな運命を辿ることが決まりました。

今回は2日間限定で開催された「三畏閣」最後の一般公開に2年ぶりに足を運びお別れを。

玄関には既に取り外された三畏閣の額が里帰りしていました。直前の告知にも関わらず、述べ200名近くの方々が来られたと聞きます。

解体される部材の一部から、記憶を残すためのプロダクト(SUNAOLAB.さんのデザインを活かした折り畳み式の鍋敷き「なべしきハウス」)と映像を作るクラウドファンディングも立ち上がっています。

集会所に腰を下ろすと、鍋を囲み酒を酌み交わし、泣き笑いしながらも将来の日本について真剣に答弁する、そんな学生や教員達の言霊が宿っているように感じました。

歴代の九大生の学生集会所として栄えた『三畏閣』が、その80年の歴史を閉じます。


[文・構成 TOGGY]

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福岡の茶人・DJ TOGGY(トギー)

波瀾万丈の人生経験・元ミュージシャンの感性・モテ声トークを武器に様々なメディアでLifeStyleを発信し続ける「イタリア系九州男児」福岡市内の山中にサロン・スタジオ・茶室を建築し専ら草むしりの日々。
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