美しい『言葉』をどれだけ伝えていける? 瞬く間に過ぎていく時間の中で考える
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
瞬く間に過ぎていく時間の中で、伝えたいこと
音楽大学で週に一度授業を担当するようになり、一週間が過ぎていく早さを今まで以上に感じるようになりました。入念に授業の準備をし、90分の授業を終え…ほっとするのもつかの間、週末になり、週が明け、また大学へ行く曜日になります。
時間が過ぎる早さは、年齢と共に早く感じるようになる。これを19世紀のフランスの哲学者であるポール・ジャネは、
「感じられる時間の長さは年齢と反比例関係にある」
と定義しました。つまり、加齢に伴い、時間が経つのが早く感じられるようになる。確かに、小学生の頃の夏休みは長かったし、一年も長く感じていたように思います。
ジャネーの法則については、科学的根拠は曖昧である…というのが一般的な評価のようですが、20代で時間が過ぎる『体感速度』は加速し、30代、40代では嵐のように過ぎていきました。ついこの前、半世紀生きたか…と思っていたのですが、瞬く間に年月を重ねました。
そして今年も、もう秋。この前、おせち料理を作った気がするのは、私だけではないでしょう。
18歳、19歳の学生たちを見ながら、自分が同じ年齢だった頃のことを思います。ほとんどの友達が、片想いでも両思いでも恋をしていました。楽しさも、淋しさもせつなさも、様々な感情がカオスのように渦巻いていました。
恋人を振った、振られた、盗った、盗られたなど、すったもんだのドラマが繰り広げられました。車の助手席に女の子を乗せて海に行くのが男子の目標、好きな曲をカセットに入れて女の子にプレゼントしたり。「チャラい」と言えばそれまでですが、それなりに活気があった昭和の大学生活でした。
そんな中で就職の時期を迎え、それぞれに普通の大人になることを選択していく。祭りが終わっていくような淋しさと、新しい扉を開くことへのわくわく感があったことを思い出します。
音楽はデジタル化され、配信という形で手に入れる時代になりました。好きな曲だけダウンロードする。それもストリーミングで、定額で何曲でも手に入る。音楽が手軽に手に入る便利さの一方で、『言葉』に対する感性、捉え方がどこか希薄になった感が拭えません。
配信で手に入れる歌に歌詞カードはありません。耳で聞いて、そのサウンドが好きかどうか。ピンと来た言葉だけが残る。歌詞カードを見ながら歌を聴いて、歌詞を味わっていた私たちの時代とは大きく違う。この違いは、とても大きいと思います。何よりも、『物語』がなくなり、「どうしようもない人間の思い」の描き方が希薄になった感があるのです。
どちらがいいとか、そういうことではなく、人間の感性が時代を作り、そして時代が人間を作っていくということ。それは、人間の宿命なのかもしれません。
「慮る」感性、想像力は、深く豊かな心と感性の源です。年を重ねるごとに、瞬く間に過ぎていく時の流れの中で、美しい『言葉』とどれだけ出会い、美しい『言葉』をどれだけ伝えていけるか。ここが私たち世代と若者世代のギャップを埋めていくところなのかもしれません。
※記事中の写真はすべてイメージ
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作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」