【『ラストマン』感想4話】今田美桜と永瀬廉、二人が物語に添える虹のいろ
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Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2023年4月スタートのテレビドラマ『ラストマン』(TBS系)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
罪と同じくらい、罪の周辺について考えさせられるエピソードだった。
許しがたい性犯罪をめぐって加害者の家族側と被害者側として、女性たちの立場が捻じれあう展開は重苦しかった。
その重苦しさを『怒る男』護道心太朗(大泉洋)と護道泉(永瀬廉)、そして『包み込む男』皆実広見(福山雅治)の両方で突破して見せた回になった。
アメリカから警察庁の交換留学生として来日したのは、全盲のFBI捜査官・皆実。
全盲だが高い能力と判断力を持ち、捜査を終わらせる『ラストマン』と敬意を込めて呼ばれている。
本来は形式的な留学だったはずの皆実は、アテンド役の護道心太朗をバディとして現場に乗り出し、捜査一課の難事件を次々と解決していく。
『ラストマン-全盲の捜査官-』(TBS系日曜21時)、4話目は一人の男性毒殺死に端を発する事件である。
皆実と心太朗、そして吾妻ゆうき(今田美桜)のチームが男性の死因を探るうちに同様の不審死をした男性数人があぶり出されるが、彼らには痴漢行為の加害者あるいは被疑者という共通点があった。
捜査が徐々に進んでいく中、過去に同種の事件でトラウマを負う吾妻は、性犯罪の加害者が被害者であるというねじれに、自身の捜査の意味を見失いかけて苦しむ。
被害、加害、両方から性犯罪をめぐる女性達の苦悩が明かされ、それを見る視聴者側の気持ちもオセロのように白と黒がめまぐるしく入れ替わる。
最終的に事件が解決しても残る湿った重さは、これまでの開放感あるエピソードとはまた異なる見応えがあった。
刑事ドラマとしては苦い後味だったが、見る側の記憶に長く残るエピソードだと思う。
重い展開ではあったが、大泉が絶妙な福山のものまねを差し込んで視聴者をニヤリとさせたり、クライマックスの地下鉄の中で皆実と心太朗が阿吽の呼吸を見せたりと、バディは絶好調である。
バディを演じている本人達の互いへの信頼が、二人の演技を更に半歩踏み込ませているようだ。
そして今回特筆すべきは、やはり心太朗の甥・護道泉を演じる永瀬廉と、吾妻ゆうきを演じる今田美桜の演技だろう。
吾妻ゆうきは、陸上に打ち込んでいた学生時代に、いわゆるアスリート盗撮をされた上にストーカー被害まで受けて深く傷ついている。
望まない見られ方に傷ついた少女は、見えない人生を自らの力で切り開いて生きるFBI捜査官の存在を知り、彼を人生の道しるべとして歩き出す。
普段は控えめだが、迷いながらも過去の傷から逃げずに立ち向かう吾妻の強さを、今田美桜が懸命に、健気に演じていた。
そして警察エリート一家・護道家の息子、護道泉を演じる永瀬廉も回を追うごとに存在感を増している。
心太朗に恋心をいじられて上司部下から甥と叔父の口調になるのも、吾妻を案じて捜査から外れるよう勧め、すげなく断られて目線を落とす表情も、永瀬廉の演技はいつも名前のつけられない繊細なグラデーションで出来ている。
とりわけ、父の護道京吾(上川隆也)から、「大人になりたければ、清濁併せのむことを覚えろ」と諭された時の、どうにものめないことを自覚している微かな憂いの表情は印象に残った。
事件の解決後、皆実は傷を負った吾妻に「残酷で理不尽なことばかりですが、ある日突然目の前に虹がかかることがある。人生というものは、やはり素晴らしいものですね」と、彼女の心身の傷を包み込むように語りかける。
その言葉に、軽やかに生きているように見える皆実のこれまでの痛みや、若い吾妻がこれからも警察の中で立ち向かわねばならないだろう理不尽が透けて見えるようだ。
それでも、生きていれば虹はかかる。うつむかなければ虹を見る日が来る。
勇気を出して綴った点字の手紙と、10年忘れなかった優しさの間に虹がかかったように。
時に善悪の境界線さえ見失ってしまいそうな混迷の日々を、懸命に生きていく人たちに届く言葉だと思った。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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