【『大奥 Season2』感想6話】瀧内公美、愛希れいか、古川雄大 華やかなキャストによる幕末編の開幕
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死の伝染病を克服し男女の人口比が戻った江戸の町には、多様性がもたらす揺らぎがあった。
現代社会にも相通じるその揺らぎの中を、瀧内公美演じる阿部正弘が、笑ったり落ち込んだりしながら駆けていく。
その明るい景色は滅びの覚悟に沈んでいた暗い家光の時代とも、滅びの克服を決意した悲壮な吉宗の時代とも違っていて、そこには選択肢があり、だからこその悩みがあった。
男子だけが罹る伝染病・赤面疱瘡(あかづらほうそう)により男の数が激減した架空の江戸時代。将軍は女だった。労働も女たちが担った。
だが世代を超えた研究者や医師らの苦闘により赤面疱瘡は克服され、再び社会は男性優位に戻ろうとしていた。
そんな時代の流れの中、徳川に代々仕えた名門・阿部家では長男が気弱のため隠居を選び、娘が正弘と名乗り家督を継ぐことになる。
そして奇しくも同じ頃、将軍として即位したのもまた、女子であった。
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医療編という仄暗い夜明け前のようなエピソードに続き、華やかなフィナーレの幕末編が始まろうとしている。
その物語は遊郭、しかも男のみが集められた遊郭から始まる。
幕閣として頭角を現しながらも男ばかりの中で何かと気を遣う、しかしかつての女達のようにがむしゃらに仕事するのも少し違う。とかく気持ちがすり減る阿部正弘のため息は、まるで現代に生きる若い女性のようだ。
前回のラストに将軍家斉(中村蒼)と交わした「赤面疱瘡の頃には、才能ある男がそれを発揮せずに終わることもあったでしょう」という言葉でも分かる通り、正弘は視野の広い、フェアな考えの人物である。その視野の広さで、ますます気を遣って疲れてしまう。
しかし困惑気味の笑顔を貼り付けて、時に思わずため息をついてしまう瀧内公美が演じる阿部正弘は、まるで大切な女友達の一人のようでとてもキュートである。
そして、そんな正弘を男がもてなす遊郭に誘うのは遠山金四郎(高島豪志)、つまり『遠山の金さん』である。
さしずめ期待の若手社員が生真面目で悩んでいるのを、さばけた上司が新宿二丁目やホストクラブに気晴らしに連れて行くようなものだろうか。
そこで正弘が偶然出会う美しく聡明な陰間・瀧山を演じるのは古川雄大。
舞台で磨きぬいた美しい所作と、優雅な声で語る廓詞(くるわことば)で私たちを魅了する。
瀧山が自身の花魁姿の由来を説明し、正弘が感心するシーンは有能な者が同じく有能な者を鋭い嗅覚で嗅ぎ当てるかのようで見ていてわくわくする。
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また、原作にないドラマオリジナルの場面として、一度は身請けを辞退した瀧山を、正弘が遠山金四郎を連れて再び説得に訪れる場面も胸が躍った。ちなみに原作でも遠山金四郎は登場しているが、瀧山との接点はない。
組織には様々な出自・由来の人物が必要だという正弘の説得は、まさに現代にも通じている。
今回のドラマ化にあたっては、吉宗(冨永愛)が馬で疾走する場面は『暴れん坊将軍』を、大岡忠相(MEGUMI)の描写が多くなったのは『大岡越前』を、そして今回の『遠山の金さん』と、歴代の名作時代劇へのオマージュがあちこちに見られることも楽しい。
同時に、こういった時代劇の面白さを世代で繋いでいくことの必要性にも改めて思いを馳せた。
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もう一つ、ドラマ化にあたってのオリジナルの描写は将軍・家定(愛希れいか)の、将軍としての資質である。
原作でも家定は聡明な女性として描かれるが、ドラマでは更にそのリーダーとしての資質が強調されて描かれている。
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実父から性加害を受け傷ついた家定を案じ、薩摩からの御台輿入れの申し出を断ろうとする正弘に、家定は薩摩を引き入れれば正弘の政治の役に立つはずと、自身の意志で薩摩の男を伴侶にすると決心する。この一連はドラマのオリジナルだ。
「そなたの為に将軍になった。そなたが自在に空を飛ぶためにここに座っておるのだ、私は」
仕える身として、これ以上に心を揺さぶる信頼の言葉は無いのではないかと思う。
そして親からの理不尽な暴力にも、長く誰も救ってくれなかった孤独にも、損なわれなかった高貴な魂を体現するのに、愛希れいかの真っ直ぐな瞳の輝き以上に相応しいものも無いだろう。
そして今回のラストでは胤篤(天璋院)が登場する。シーズン1で家光(堀田真由)の夫・有功を好演した福士蒼汰が、再び「運命の夫」を演じる。
大奥の始まりと終焉。その二つを見届ける人物として、福士蒼汰は今回の映像化を象徴する存在になるだろう。
シーズン2でも、どんな心震える演技を見せてくれるか、楽しみだ。
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SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2023年10月スタートのテレビドラマ『大奥 Season2』(NHK)の見どころを連載していきます。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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