【『初恋の悪魔』感想8話】離れても健やかにという祈り・ネタバレあり
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大倉忠義「何かが間違っている」 飲食店に嘆きコメント、同情の声アイドルグループ『SUPER EIGHT(スーパーエイト)』の大倉忠義さんが、2024年11月15日にXを更新。焼き鳥店に行きづらい、嘆きの投稿に同情の声が集まりました。
あの童謡を歌っていた、ののちゃん!? 成長した姿に「美人になった」「別人級」と驚きの声あんなに小さかった、ののちゃんが…!6歳になった姿に「別人級に成長」「大きくなった」と驚きの声が相次いでいます。
Twitterを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。
2022年7月スタートのテレビドラマ『初恋の悪魔』(日本テレビ系)の見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
仕事絡みの知人が亡くなって通夜に行く。ご親族に挨拶をするけれども、その人について語れる思い出は多くないから、少し居心地が悪い。
外に出て会葬のお礼状を読み、こんな人だったのかと驚く。書かれた趣味や家族への愛情は職場で見た印象とは随分違う。人ってやっぱり複雑なものだなと思う。
スマホの手がかりから兄・馬淵朝陽(毎熊克哉)の意外な生前の姿を追っていく悠日(仲野太賀)の姿を見ていて、ふとそんな自分の最近のほろ苦い思いが浮かんでくる。
悠日がスマートなエリートだと思っていた兄・朝陽は、『七転び八起き』という言葉を必死で抱きしめて生きていた。弱さも悩みも、悠日の知っている朝陽とは違っていた。
脚本家・坂元裕二の紡ぐ言葉はフィクションの中からするっと這い出してきて、見ている私たちの人生に忍び込んでくる。
一度箱に詰めた過去の感情が、軽妙なセリフや磨き抜かれた言葉が鍵になって不意に開く。最終章が始まる第8話は、そんな坂元脚本の醍醐味が詰まった回だった。
凶悪事件マニアで変人の刑事・鹿浜鈴之介(林遣都)、兄の不審死を調べた結果、上司に疎まれ退職に追い込まれた総務課職員の悠日、生活安全課の刑事だが、二重人格でその不審死の真相の鍵を握る摘木星砂(松岡茉優)、警察署にいながら警察組織が嫌いな経理課の小鳥琉夏(柄本佑)。
上下関係の堅固な組織の中にありながら、そこに馴染めないまま生きている4人が連続殺人事件の謎を追う『初恋の悪魔』(日本テレビ 土曜22時)。
刑事の星砂は悠日と、もう一人の人格の星砂は鈴之介と、それぞれに惹かれあっているため、3人は奇妙な三角関係になっていて、小鳥が飄々と立ち回って4人が空中分解しないように絶妙にバランスを取っている。
坂元脚本といえば、テレビドラマ『カルテット』(2017年 TBS系)の3話の名セリフ「泣きながらご飯食べたことある人は生きていけます」が有名(今回、そのシーンと同じ定食屋らしき店が登場していた)だが、今作でも食事の場面は印象的で8話はとりわけそれが際立っていた。
冒頭、鈴之介はいちごとマスカットのショートケーキを一つずつ買って帰り、まず星砂にどちらか好きな方を選んで食べてほしいと思っている(残った方を自分が食べるという目論見で、そんな無垢な浮かれ方が鹿浜鈴之介というキャラクターの何ともいえない魅力である)。
「同じケーキを二つ買う」でも十分愛情表現として良いと思うが、あなたが楽しそうに選ぶ表情が見たいという高揚が恋の純度だと思う。
結果として星砂も同じ二種類のケーキを買っていて鈴之介に選んでほしいと待っていたというオチで、キスよりもハグよりも、恋としてより深いものを示唆する描写はさすがである。
この時、鈴之介がもう1人の星砂に対して、この先離れていても会えなくても、どこかで生きてほしいと願う言葉が切なくて印象深い。
もう一つ、印象的なシーンは、星砂が悠日から渡されたカレーを食べる場面だった。
鈴之介と惹かれあうもう1人の星砂がレンジで温めておいたカレーを、入れ替わりの直後になぜそこにカレーがあるのかよく分からないままに刑事の星砂は食べる。
一口食べて、それは恋人が作った味だとすぐに気づいて涙が溢れてくる。
食べ終えてから星砂はタッパーに貼られたメモで、悠日が自分を案じてくれていること、一緒にいられないならばとせめてもの思いでカレーを託したことを察して、悠日の元に帰ろうと雨の中を走り出す。
「食べてください」は「生きてください」だと、そして理屈やどうしてよりも前にある無条件の愛おしさが満ちて溢れだす、胸にせまる美しい場面である。
ロマンチックなラブストーリーとして、切れ味ある社会派のドラマとして、謎が混迷するサスペンスとして、自在に魅力を変えていくこの複雑なドラマを成立させるための根幹にして、かつ一番の難関は『ヒロインが記憶喪失を伴う二重人格』という設定だと思う。
そこに揺るがないリアリティを得るために、松岡茉優の卓越した演技力が必須だったのだと改めて痛感する。
宅配便を受け取りサインを書く。その瞬間に星砂の人格は入れ替わる。
ためた間があるから、もしやと見ている私たちは固唾をのむわけだが、星砂が宅配業者に「あぁ」と短く低い声で答えるそのとき、その声のトーンだけで既に私たちはわかってしまう。
これまで緻密に積み上げた松岡茉優の演技が、私たちを鳥肌が立つようなその瞬間に連れて行ってくれるのである。
最終章の皮切りになるこの回で、初めて『初恋』というタイトルに絡む言葉が提示された。悠日の兄の朝陽が発したその言葉の意味は、崇拝であり盲信なのだろう。
そこに連なる『悪魔』は、どんな姿をしているだろうか。おそらく多面的で、複雑で、やるせないものになるのだと思う。
そんな複雑さごと私たちはこのドラマを愛している。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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