そんな干し方しないで! 防犯のプロが教える『洗濯物の盲点』にゾッ
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特殊詐欺に遭いかけた30代男性 冷静さを失った電話内容に「巧妙だ…」警察官を名乗る相手から「『マネーロンダリング』の事件の捜査線上にあなたの名前が上がっている」と告げられたら…。筆者にかかってきた電話の事例と、警察庁への取材内容をもとに、特殊詐欺の巧妙な手口と被害を防ぐための対策を解説します。

「ご飯、何がいい?」「簡単なものでいい」 この会話、なぜイラッとする?本記事では何気ない日常の中で、夫婦間のトラブルになりがちなセリフについて、専門家の監修のもと、解説しています。
多くの人が日常的に行う、洗濯物を干すという行為。実は『防犯』とも深く関係しています。
女性の中には、外から見えにくいように干すなど、日頃から意識している人も少なくないでしょう。
しかし、対策をしたつもりでも『わずかな油断』が被害につながるケースもあるのです。
本記事では、元警察官である筆者の現場経験をもとに、あなたの普段の意識を少しアップデートできるよう、洗濯物と防犯の関係を解説します。
若い女性だけじゃない!?下着泥棒被害の実情
筆者は警察官として下着泥棒の現場を数多く経験してきましたが、被害者の年齢や被害現場は思ったよりもさまざま。
まず、筆者が体験したある現場について紹介します。
当時の現場は、住宅街のアパートの1階。ベランダには女性物の衣類や下着が干されており、外からでも容易に見える状態。
犯人は、通勤途中にその部屋の前を通りかかった際、偶然下着を目にして興味を持ち、数日後に再び現場を訪れ犯行に及んでいました。
つまり『偶発的な盗み』のようでいて、実際には何日も様子を見て『狙える』と判断していたわけです。
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一方で、もっと計画的に狙うケースもあります。
中には、被害者と面識がある人物が、SNSなどで得た情報をもとに尾行し、住まいを特定して下着を盗むという事件もありました。
こうした犯行に年齢は関係ありません。若い女性だけでなく、40代や50代の人が被害に遭うこともあります。
共通していた多くは、居住者に男性がおらず、ベランダが人目につかない場所であること。
犯人側から見れば『見られにくく、反撃されにくい』という環境が整っていたのです。
洗濯物は『生活情報』の発信源になる
なぜ、洗濯物が狙われやすいのかというと、生活の一部がそのまま外に『見えてしまう』からです。
洗濯物には、性別・家族構成・勤務時間など、さまざまな情報が含まれています。
例えば、女性物の衣類しか干されていなければ「この部屋は一人暮らしの女性かもしれない」と分かりますし、いつも同じ時間に干され、同じ時間に取り込まれていれば、生活のリズムまで読み取れてしまうのです。
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実際に警察からも「洗濯物の干し方やゴミの出し方から、家族構成や在宅時間を推測される恐れがある」と注意を呼びかけられています。
つまり、何気ない『生活のワンシーン』が、犯人にとってはターゲットを選ぶ手がかりになるのです。
洗濯物は本来、清潔で穏やかな日常の象徴。
しかし、防犯の視点で見れば『もっとも無防備な情報発信』でもあるということを忘れてはいけません。
『見せない・悟らせない』干し方の具体策
洗濯物の基本は『見せないこと』と『生活パターンを悟らせないこと』。以下のような日常のちょっとした工夫で、リスクは大きく下げられます。
・下着は屋内干しが原則:外に出すなら必ず衣類の内側に隠す。下着単体で見える状況はもっとも危険。
・時間に変化をつける:毎日同じ時間に干す、取り込むことは犯人に生活リズムを読ませる最大の原因。可能な範囲で『干す時間』『取り込む時間』をずらす工夫を。
・家族構成の『見せかけ』を作る:一人暮らしの家であれば、男性物のシャツやタオルを混ぜて干すことで、心理的抑止につながることも。
・低階層アパートは特に注意:1〜2階のベランダは死角になりやすい。人目がないなら屋内干しを優先。
・つきまとわれていないかをチェック:帰宅途中やSNSの発信など異変がないかをチェックする。一方的な好意を寄せた犯人が下着泥棒をはたらく可能性もあるため、違和感があれば早めに警察に相談を。
・取り込みは早めに:洗濯物を長時間放置すると『在宅パターン』を示すことになるため、帰宅してからすぐ取り込む習慣をつける。特に夜間の干しっぱなしは注意。
これらは特別な防犯グッズを買う必要もなく、普段の干し方を少し変えるだけでできる対策です。
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洗濯物の干し方は、何気ない家事のようでいて『生活情報』を外に出す行動です。
どんな人が住んでいるのか、どんな時間に行動しているのか…。その小さなサインが、思わぬ形で犯罪者に利用されることがあります。
防犯の基本は『見せない』『悟らせない』。少しの意識と工夫で、被害を防ぐ確率は間違いなく上がります。
今日の洗濯物を干すその一瞬から、防犯を意識してみてください。
記事執筆 りょうせい
元警察官。警察歴10年。
交番勤務を経て、生活安全課の捜査員として勤務。
行方不明やDVなどの「人身関連事案」を対応しつつ、防犯の広報・企画業務を兼務。
現在は警察の経験を生かし、Xや音声配信(StandFM)にて、防犯情報を発信中。
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[文・構成/りょうせい]