北極で奏でるピアノ 溶け行く氷の中でピアニストが伝えたいこととは…
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何も語らずとも心に響く音楽がある、心に響くメッセージがある…ということをこの映像を見ていただけるとわかると思います。
ここがどこかわかりますか?想像がつかないのではないでしょうか。そう、北極です。合成でもセットでもありません。2016年6月22日、北極圏(ノルウェー、スヴァーバル島)の氷上で撮影されたものです。
氷上でピアノを弾いているのはこの曲『Elegy for the Arctic』(北極エレジー)を作曲したイタリアの著名な作曲家、ルドヴィコ・エイナウディー氏です。「地球温暖化によって深刻な影響を受けている北極圏を救おう」、「地球温暖化問題がいかに深刻かをもっと多くの人に知って欲しい」という気持ちを込めて作ったそうです。
そして、この演奏は「この曲のメッセージを、最もストレートに伝えられる場所で演奏したい」というエイナウディー氏の志によって実現しました。
撮影場所に選ばれたスヴァールバル諸島は極地科学研究の世界的な拠点となっており、オゾン層破壊や大気の研究など環境分野に関する研究も行われていることでも知られています。美しく幻想的で悲愴感あふれるこの曲は、何も語らずとも強いメッセージをもって私たちの心に突き刺さります。何かしなくてはいけないという衝動さえ覚えます。
心のふかーーい部分に、遠い北極の言葉のない世界の悲哀やもがきのようなものが聴こえてきませんか?
実際、この曲を聴いた世界中の800万人が北極圏の保護を訴える署名運動に加わったそうです。
温暖化の深刻な影響を受ける北極圏
ルドヴィコ・エイナウディー氏はイタリア、トリノの名家に生まれ、ミラノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院でアツィオ・コルギに作曲を師事。クラシックがベースでありながら、彼の作り出す映像的で幻想的なミニマルミュージックは、ヨーロッパでは圧倒的な支持を得ている作曲家です。
今回の演奏は、地球温暖化によって深刻な影響を受けている北極圏を救おう、この問題がいかに深刻かをもっと多くの人に知って欲しいという気持ちを込めて行われました。
今、この瞬間にも氷山が溶け落ちていっているのです。
北極では、平均気温の上昇に伴い、氷の融解が進んでおり、この30年間で、100万平方キロメートルに相当する面積の海氷が溶けてなくなっています。これは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク(もしくは、テキサスやアリゾナ)をあわせたのと同じくらいの大きさです。
また、気温の上昇はホッキョクグマを始めとする生態系にも深刻な影響が出ています。北極には、オゾン層破壊によってガンを引き起こす有害な紫外線(UV-B)が降り注いでいます。現在の北極に住む人たちは、これまでの世代が浴びてきた量より30%も多く有害な紫外線(UV-B)を浴びており、彼らの健康にも大きな影響が出ているそうです。
エイナウディー氏はこう語ります。
「自分の目で今、北極で起きていること、その美しき純粋性、その脆弱性を見て、その場で演奏ができたことは最高の経験だった。また、このステージは私の作った曲がこれ以上ない形で表現でき、多くの共感をもって人々に伝わるのではないかと思う。私たちは、北極の重要性を理解し、破壊のプロセスを停止し、守っていくことが重要なんだ 」
地球温暖化について今こそ真剣に考える時だと思います。暮らしの中の省エネ、不必要な水を出しっぱなしにしていないか、エコバックを使うなど小さなことから地球を守る努力をしていきたいですね。