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美少女として生きる自分 VTuber『バーチャル美少女ねむ』×着ぐるみアーティスト『たくろう』対談

By - grape編集部  公開:  更新:

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本記事は、2020年7月15日にgrape Japan編集部の外国人記者により掲載されたインタビューの内容を、再編集してお届けするものです。

今や世界的に新しい概念となった『kawaii(かわいい)』という言葉。

日本のサブカルチャーでは、アニメやマンガに登場する美少女キャラクターが『かわいい』の代表的なものとされています。

その発祥となった少女漫画はもともと女性を対象にしていましたが、1970年代以降は男性の間でも美少女キャラクターが人気を博すようになりました。

現在、一部のサブカルファンは、美少女を愛するだけに飽き足らず「自分自身が美少女になりたい」という願望を実現するようになりました。

彼らはなぜ美少女として自分を表現することを選んだのでしょうか。この答えを求め、日本のサブカルチャーコミュニティ『着ぐるみパフォーマー』と『バーチャルストリーマー』の世界を覗いてみましょう。

今回、着ぐるみマスク制作ユニット『ひょっかめ』のたくろうさんと、世界最古の個人系VTuberであるバーチャル美少女ねむさんにインタビュー。

司会は、grape Japan編集部のBen Kと、ジュネーブ大学の人類学者Liudmila Bredikhina(ミラ)さんでお届けします。

VTuber『バーチャル美少女ねむ』×着ぐるみアーティスト『たくろう』

Ben K

まず、お2人が今の姿をするようになった経緯について教えてください。
たくろうさんが多様性を目指すプロジェクト『True Colors Academy』のインタビューを受けた際、ディレクターの石川楼丈さんは「誰しもが、その人自身の中に複数のアイデンティティを持っていると思います」といっていましたよね。そこを話の出発点にしたいと思います。

ねむ

私はもともと『アバターがアイデンティティに及ぼす影響』に興味があり、技術的な調査の一貫として、今でいうバーチャルYouTuber(VTuber)のようなことを始めました。
実際に美少女に変身して自分に語りかけているうちに、新しい自我が目覚めたような感覚になり、その日の夜には配信を初めていました。これが、私が『世界初の個人系VTuber』となった経緯です。

ねむ

続けていくうちに「これこそが個人のアイデンティティであり、社会経済のありかたをアップデートし、差別や戦争のない究極の理想世界を作る鍵だ」と確信し、『人類美少女計画』と題して活動を始めました。
VTuberのHow-toも発信し、2017年のクリスマスに起こったVTuberブームにも貢献できたと思っています。

たくろう

自分の場合は、子供の頃から「着ぐるみを着たい」という気持ちがあったのですが、恥ずかしくて人にいえませんでした。
でも大人になってから、ある雑誌で美少女着ぐるみの活動をしている人を知って「自分もやってみよう!」と思いました。
ただ『おしるこちゃん(画像の着ぐるみキャラクター)』のように、かわいい女の子であるということに徹底的にこだわっています。
ディティールは幼少期にたくさん考えていたので具体的にイメージできていて、それを実現させている…という感じです。

2人にとっての『美少女の姿』とは

ミラ

もし『バーチャル美少女』や『美少女着ぐるみ』じゃなかったら、お2人はどのような存在になっていたのでしょうか。
物理的な人体としてではなく、お2人が作ったペルソナ(人格)の『バーチャル美少女ねむ』や『おしるこちゃん』としての活動は、いつかなくなってしまうのですか?それとも、ペルソナは永遠に生き続けるということでしょうか?
また、各々が考える『美少女としての存在』という概念についても教えてください。

たくろう

分かりません。ただ、能力や過去の経歴を考慮すると、美少女の着ぐるみ以外に思いつかないんです。
これまで私は、女装やアイドルの追っかけ活動、女性キャラの格闘ゲーマー、着ぐるみアクター、ラブドールメーカー勤務などを経験してきました。また、性同一性障害、性的指向確認の診断を受けました。

たくろう

もし10年遅く生まれていたら、上記の経歴にVTuberが加わっていたかもしれませんね。
例えば、『おしるこちゃん』のお面や衣装、映像などが私のリタイア後に残っていて、別の人が引き継いでくれたら残っていくと思います。
また、漠然とですが『おしるこちゃん』としての活動を、保存可能な形にして作品として残したいとも思います。

ねむ

私が『バーチャル美少女』になったのは偶然による部分が大きいので、『ほかの自分』というのは想像しづらいです…。
美少女の永続性については、本当なら「美少女はネットのミームとして永遠に生き続ける」と答えたいところですが…私の答えは「NO」です。

ねむ

『VOCALOID』の初音ミクちゃんのように『共通イメージに基づく作品群』としてはありえるかもしれません。
でも、バーチャル美少女として存在するということは、VTuberに代表されるように『ネットを通してリアルタイムに喋ることができ、VRを通して実際に触れ合うことのできる「血の通った」バーチャル美少女』だと思います。

Ben K

お2人は違った姿をされる際、『別のアイデンティティ』だと認識されている…ということでしょうか?

ねむ

普段はVTuberとは全く関係のない仕事をしていますし、私は家族や職場の人にもVTuberのことは秘密にしています。
HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を被って『バーチャル美少女ねむ』の姿になると、バーチャル世界で美少女アイドルに変身した自分になります。
一人称も変わりますし、話し方も変わります。アバターを着替えることはアイデンティティを切り替える行為です。記憶は共有しているので、多重人格というわけではありませんが…。

たくろう

美少女着ぐるみを趣味にしている人の中でも大きく違いが出る所ではありますが…私の場合は「最初は特に気にしないけれど、続けていくうちに違ってくる場合もある」という感じでしょうか。

現代社会で『美少女』として生きること

ミラ

友人や家族、大切な人に対して、自分が『バーチャル美少女』や『美少女着ぐるみ』であることを打ち明けたいと思いますか?
打ち明けたくない場合、秘密にしたい理由はなんなのでしょうか。

たくろう

秘密にしたい理由としては、職場や学校などはしがらみが多く、デリケートな話題は他人に話すことにリスクが大きいためです。
また、家族や友人など関係が近しい人たちにもうまく説明する自信がなく、理解してもらえるか不安でした。
今は仕事が活動と一致してるので、「隠したい」という気持ちはなくなりつつありますね。

たくろう

現在はパフォーマンスや撮影などの活動に協力者が必要なので、ある程度は打ち明ける必要が出てきました。一方で、見た人がガッカリしないように秘密にする必要がある場面もあります。
なので、意識的に情報を制限している…という意味では「秘密にしたい」という理由であるかもしれません。

ねむ

予想もしていなかったことですが、テレビ番組に出演したり、小説で賞を頂いたり、ライブの全国ツアーで歌わせてもらえることになったりと『バーチャル美少女ねむ』としての実績が大きくなってしまったので、打ち明けたい気持ちがゼロかというと嘘になりますね。
ただ、今の社会はまだ『バーチャル美少女』を受け入れるほど寛容ではないと思います。家族や職場にバレたら確実に悪影響が及ぶと思いますし…。

ねむ

また、『バーチャル美少女ねむ』は「誰でも美少女になれる!」という普遍的なメッセージがテーマなので、私のリアルな属性が紐付いて色眼鏡で見られてしまうのは避けたいです。
私は『バーチャル美少女』とは『人間が肉体の殻を脱ぎ捨てて、魂そのもので活動している姿』だと考えているので、究極的には「中の人が誰だろうがみんな気にしない」という状況が理想的ですが…それはまだ先の未来の話だと思っています。

Ben K

その『魂そのもので活動している姿』というのは、3Dモデルや着ぐるみの違いによって複数存在しているのでしょうか?

ねむ

私のモデルはいろんなモデラーさんに作ってもらっていて、それぞれ印象が違いますが、どれもあくまで『バーチャル美少女ねむ』としてのモデルです。
モデルを切り替える行為はお化粧みたいなイメージです。とはいえ、例えばモデルによって年齢が違うため、お化粧より自由度がありますね。幼い自分、しっかりした自分、強い自分、弱い自分…と、使い分けています。
最新のモデルでは、活発さを強調したくて少し幼い外見にしてもらいました。それによって性格も影響を受ける気がします。

ねむ

衣裳も同様です。例えばステージ衣裳だと気合いが入るけど、ずっとステージ衣裳だとちょっと疲れてしまいます。
くつろぐときはパーカーとか、ゆるい服に着替えます。これは現実で着替えるのと同じです。
でも、どれもあくまで『バーチャル美少女ねむ』のモデルなので、アイデンティティが切り替わるわけではないと思っています。

たくろう

自分の場合は『どういうお面か』が関わってくるので、一概になんともいえません。美少女の着ぐるみなのか、ウサギの着ぐるみなのか…など。
例えば何かのキャラクターマスクであれば、そのキャラになりきる必要があるので、むしろアイデンティティは邪魔になりますよね。
また、何かのキャラを演じ続けていくうちに、自分のアイデンティティを意識し始めることはよくあるので、それを表現するために使う着ぐるみを作る人も多く存在します。

ミラ

お2人は、別のタイプのキャラクターを具現化することを想像できますか?別の美少女キャラということではなく、例えば美少年とか…。
そして、もしありましたら美少女であることにおけるデメリットについて教えてください。

たくろう

私が着ぐるみを着るのは、いろいろな考え方に基づいているんです。例えば過去に『仮面ライダー』の着ぐるみショーのアルバイトをやったことがありますし、最近でも某ゲームのキャラクターになったことがあります。
それらの経験は、美少女になる時に参考になりました。デメリットについては、特に思いつきませんね…。

ねむ

VRChatでは、デフォルトのアバターが読み込まれないエラーが起こるとロボットの姿のデフォルトアバターになるのですが、そんな時は自分が失われて色あせてしまったような悲しい気分になります。
アバターのインポートに対応していない、新しいVR SNSを試している時も同じです。なので、あまり考えられませんね。
美少女であるデメリットは…スカートの中が映らないように、カメラの位置や動きに気を使う必要があるくらいでしょうか(笑)

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