【SUPER RICH感想 1話】眉なし、すっぴんで吠えるヒロインの強烈な存在感・ネタバレあり
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2021年秋スタートのテレビドラマの見どころを連載していきます。
かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。
女性起業家。ある程度裕福であること。会社には彼女を慕う忠実な男性の役員、あるいは部下がいること。仕事自体はシビアにこなしていること。
会社では部下に見守られつつ、ヒロインは会社の外で誰かに出会い、恋に踏み出す(出会う相手は若かったり、機会の平等に恵まれない貧しい男性だったりが多い)。
2021年になって、こんな設定から始まるドラマが増えた。
皮切りは『大豆田とわ子と三人の元夫』(フジテレビ系)で、同時期の『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)も、この形に近い。
夏ドラマでは『推しの王子様』(フジテレビ系)。そして秋ドラマでは今作『SUPER RICH』(フジテレビ系)と『最愛』(TBS系)。
これだけ近い設定のフィクションが続くとき、そこには何らかの世の中の願望が反映されているはずだと思う。
※写真はイメージ
だが設定は似ていても、それぞれのドラマが描きたいものは大きく違っている。
木曜22時放送の、江口のりこ主演ドラマ『SUPER RICH』(フジテレビ系)第1話を見て、今作ではより純度を高くして幸福を描くための思考実験のベースとして「お金がありすぎる」と「なさすぎる」を往還するべく女性起業家の設定なのだと思った。
江口のりこの存在感が活かされた第1話
まずはヒロイン・氷河衛を演じる江口のりこの突出した存在感に目をみはる。
ストーリー自体は序盤から、ヒロインの不遇な生い立ちや信頼してきた相手の裏切りで息苦しいような展開が続くが、主人公の衛は泣きもわめきもせず、淡々と会社と雇用を守るために金策に走る。
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自分の財産すべてを換金する算段を考える。
そういうタフな女性なのかと思わせる一方で、食事を数日忘れて体力の限界で卒倒し(健康なのに食欲に異常が発生するということは、自身を大事に扱えないことに直結している)、自分を裏切って会社の金を持ち逃げしたと思われる共同経営者の一ノ瀬亮(戸次重幸)のことを切り捨てられない。
財産はあるが天涯孤独な衛と、根っからの悪人というよりは、薄っぺらい男であろう一ノ瀬との、恋愛とも家族愛ともつかない関係が妙にリアルだ。
かつての上司、今の部下たち。
衛以外の全員が、一ノ瀬という男の害を見抜いてアドバイスしているのに、一ノ瀬に依存している衛ひとりがそれを全く見ぬけずに一ノ瀬が自分の人生にもコミュニティにも不可欠な存在だと信じている。
そんな危うい衛の前に現れるのが、貧乏学生の春野優(赤楚衛二)である。
衛の会社でのインターンを希望しつつ、困ったひとを助けて大事な試験に遅れる。名の通り優しい青年なのだろう。
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でも遅刻の連絡も失念し、土下座で衛に採用を懇願して無策ぶりを印象づけてしまう。
そこで面倒なやつ、これ以上関わるべからずと、手切れ金めいたお金を渡されれば普通は心が折れるところ、春野青年は図太かった。
その後も金策に奔走する衛の周囲に諦めずに出没する。あらゆる機会の平等から見放された青年は、しかし、社会の善なるものを強く信じているように見える。
社会的には強者だがどこか危うい衛と、社会的に持たざる者だが精神的には滅法タフな優の二人が、ようやく接点としてまともな会話を交わす場がラーメンの屋台だということはとても象徴的だった。
どんな生き方の人間も、どんな階層の人間も、何かを食べねば生きられない。
最初は自分一人だけラーメンを食べていた衛が、やがて優に分けようと思いつき、ラーメンと煮卵を二つに分ける。
自分がまずはある程度満たされねば他人に分け与えることはできない。そして食べ物を美味しいと感じられる恩恵は、誰にでも平等である。
現代に生きる我々に繋がること
第1話を終えて、衛の会社の金は持ち逃げされたまま。
取引先が反社であるという疑惑も解決していない。だが、経営者としての孤独のなかで衛は自分の人生での金銭の意味を考えなおそうと決める。
そこでふと気づく。
2021年、感染症対策の日々の中、様々なことを自分自身で判断せねばならない寄る辺のなさ、相談しようにも人に会えない状態で、私たちは何が自分にとって幸福なのかをもう一度考え直さねばならなくなっている。
そんな模索と、孤独な経営者としてのヒロインの模索が重なり合っているのだと。
これから主人公が選び取る道を、楽しみに見届けたいと思う。
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[文・構成/grape編集部]
かな
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