「百聞は一見にしかず」には続きがあった 有名な故事成語の意外な結末
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「百聞は一見にしかず」といえば、日本人になじみ深い故事成語のひとつ。「人から聞くより、自分の目で見るほうがよくわかる」ということを意味し、日常生活でも何かと使える言葉です。
そんな名文句、じつは書き出しのほんの一文だったのをご存じですか。世の真理を端的に言い表したフレーズの続きとは、いったいどのような教えなのでしょうか。
前漢時代に誕生した「百聞は一見にしかず」
「百聞不如一見(百聞は一見にしかず)」とは、中国の書物『漢書』に記された言い伝えに由来する故事成語です。
前漢時代の武将・趙充国(ちょうじゅうこく)が作戦の立案をしていた際、「前線から遠く離れた場所で戦略を立てるのは難しい。聞いたことだけであれこれ考えるよりも、一度敵の様子を見てから作戦を練ろう」と話したのが始まりだとされています。
趙充国の有能ぶりが垣間見える逸話。そうと聞けば、このあとにどう続くかが余計気になります。さて、「百聞は一見にしかず」の結末とは。
壮大なメッセージが込められていた
百見は一考にしかず:見るだけでなく、自分で考えなければならない。
百考は一行にしかず:考えるだけでなく、行動しなければならない。
百行は一果(効)にしかず:行動するだけでなく、結果を出さなければならない。
百果(効)は一幸にしかず:結果を出すだけでなく、幸せに繋がらなければならない。
百幸は一皇にしかず:自分の幸せだけでなく、みんなの幸せを考えなければならない。
まさに名文句! 思わず膝を打つ含蓄のある成句が並びます。さすが名将と謳われる趙充国と言いたいところですが、続きの文は後世の創作といわれていて、漢書には記述がありません。
とはいえ学校報や会社の朝礼でもたびたび引き合いに出されるなど、付け足された文章の説得力は折り紙付き。考えを行動に移し、結果を出し続けて自分や周りを幸せにする。確かに現代のビジネスシーンにも置き換えられるマインドかもしれません。
まだまだあった! あのことわざの続き
こうした続きの文が多いのが、日本のことわざです。初夢で見ると縁起のいいものの順番を表した「一富士二鷹三茄子」に続くのは「四扇五煙草六座頭(しおうぎごたばころくざとう)」。末広がりの扇、芸者が吸う煙草、弾き語りをする法師など、当時の暮らしを反映したおめでたいものが挙げられています。
「柔よく剛を制す」は、柔らかくしなやかな者が剛強な者に勝てることを表します。その続きは「剛よく柔を断つ」。剛強な力が柔軟性のあるものを断ち切れる、ということを表す一文が続いていたのです。上の句と下の句を続けて読んでみると、しなやかなさと強さの両方の重要性を説いているのがわかります。
一部だけがフォーカスされて広まってしまった故事成語やことわざ。全文を知ることでより深く意味を理解できるかもしれませんね。
[文・構成/grape編集部]