妊婦を運ぶ『陣痛タクシー』 日本交通に聞いた「車内で生まれたことは?」「運転手の本音は?」
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- 出典
- 日本交通株式会社
みなさんは『陣痛タクシー』をご存じでしょうか。『陣痛タクシー』とは、陣痛が起こった際に、妊婦が優先してタクシーの手配ができるサービス。
スムーズにかかりつけの病院などに行くことができるため、非常に助かるサービスとして重宝されています。
本記事では、『陣痛タクシー』のサービスを提供している、日本交通株式会社協力のもと、『陣痛タクシー』の乗車方法や利用時に注意すること、さらに『陣痛タクシー』の乗務員に聞いた思い出深いエピソードなどをご紹介します。
2012年から始まった『陣痛タクシー』とは
――『陣痛タクシー』とはどんなサービス?
『陣痛タクシー』は、かかりつけの病院など、事前に妊婦の情報を登録いただくことで、陣痛時に優先的にタクシーを手配し、病院までお送りするサービスです。
「妊婦の陣痛時にもタクシーを利用できる」ということを認知してもらうための1つのサービスとして、2012年から取り組みを始めました。
実は都内での取り組みは弊社が初めてなのです。
※写真はイメージ
――具体的な目的は?
『陣痛タクシー』の意義は、以下のように認識しています。
1.緊急時でも迅速に手配し、妊婦の負担をより少なく、安心して病院まで移動して頂く。
2.『陣痛タクシー』として認知いただき、利用者数が増えることで、陣痛時の救急車の利用を減らす。
特に、適正な救急車利用の促進につながることから、陣痛時のタクシー利用は消防庁からも推奨されています。
2023年現在、タクシー業界をあげて『陣痛タクシー』は社会貢献の取り組みであると認識しています。
2013年に東京消防庁から表彰された時の様子(提供:日本交通)
『陣痛タクシー』の利用方法を知っておこう
――どのくらいの人が利用している?
弊社では、2023年2月現在、累計で約34万件のご登録、約11万件のご利用をいただいています。東京都内の妊婦の2人に1人が登録されている状況です。
『陣痛タクシー』の利用方法を聞いたところ、以下のような流れで使えるとのことです。
1.専用の登録フォームから利用者情報を登録。氏名や連絡先だけでなく、かかりつけの病院、出産予定日や自宅など迎え先の住所といった情報も登録。
2.陣痛が来たら、かかりつけの病院に電話し、病院からの指示を仰ぐ。
3.登録した電話番号から、『陣痛タクシー』専用の電話番号へ電話する。その際、迎えに行くタクシーの無線番号(車体横に表示されている番号)と到着予定時刻が伝えられる。
4.迎えに来たタクシーに乗車。事前に病院は登録されているため、道中は行先の説明や道案内をする必要は不要。
※写真はイメージ
――タクシー料金や送迎料金以外に、別途料金が必要?
いいえ、料金は通常のタクシー利用と同等(メーター運賃+迎車料金300円)です。また、『陣痛タクシー』の登録料金もありません。産前・産後で健診に通院される際にもご利用いただけます。
ただし、登録は出産予定日の1か月後に解除になるので注意してください。
――そのほか、利用するうえで用意するものや注意点は?
陣痛時の利用では、大きめのバスタオルかレジャーシートなどを用意してタクシーの到着を待っていただきます。
また、登録完了まで1週間程度かかる場合もあるので、予定日の1か月前までを目安に、早目の登録をおすすめしています。
『陣痛タクシー』を手配いただく前に、必ずかかりつけの病院に連絡し、指示を仰いだうえで利用してほしいです。
『陣痛タクシー』の実情に迫ってみた
――どんな人が『陣痛タクシー』の運転手に選ばれる?
弊社の場合は、陣痛時にいち早くお迎えに上がれるよう、助産師による妊婦の送迎に関する講習を受講した上で、全乗務員を対象としています。
送迎に関する講習会の模様(写真:日本交通)
送迎中に起きた、3つの出産エピソード
『陣痛タクシー』の乗務員に「病院までの送迎中に赤ちゃんが生まれるケースもあったか」と聞いたところ、「病院へ妊婦を引き継ぐ前に、車内で出産にいたるケースが何度かあった」との回答が!
ここからは、陣痛タクシーを運転していた時の驚きのエピソードを3つご紹介します。
乗車5分後に破水が始まってしまったが…
1つ目は妊婦と母親の2名で乗車された時のエピソード。乗車時からすでに激しい陣痛が始まっており、かなり切迫した状況の中でタクシーは発進しました。
乗車5分後には破水が始まり、とても病院まで間に合う状況ではなかったので、狭い路地を走行中、冷静に広い道路に出てから停車し、行き先の病院に連絡をとったそうです。その電話中になんと出産!
その後、乗務員は車内の状況を病院に伝えながら、医師の指示の下で救急車を手配し、母子ともに無事、病院に搬送されました。
自身の子育て経験をいかして…
2つ目は病院へ向かう途中に陣痛が激しくなってしまったケース。初産のため夫婦で動揺されていましたが、乗務員には2人の子供がいるため、自身の経験を踏まえ、呼吸法を教えながら病院まで送ったそうです。
病院到着後、医師が駆けつける前に車内にて出産。後日お客さまから、感謝のお便りが届いたといいます。
担当した乗務員は当時のことを、次のように振り返りました。
母子ともに健康で、無事出産できたので大変よかったです。乗車前からすでに陣痛が始まっており、送迎中は実はかなり緊張しました。
「自分の身内だったら何ができるか」を考え、声掛けしながら送迎しました。
後日お客様から届いた感謝の手紙には、赤ちゃんの写真も入っており、改めてこの仕事してよかったと感じています。
続けて、「これからも1人でも多くの妊娠している人の力になれるように頑張ります」と語っており、その時の経験がモチベーションにつながっているようです。
不安を取り除くために何度も『声掛け』を!
最後は、妊婦と夫の2人で乗車してきた時のエピソードを紹介します。
乗車時には落ち着いていた妊婦が、直後から陣痛が始まったとのこと。
同乗する夫が病院に連絡を入れ、乗務員は妊婦の不安を取り除くべく「もうすぐですよ」と何度も声を掛けたそうです。
病院到着前には破水が始まり、到着して乗務員が後部左側ドアのほうに回り込んだ瞬間に出産!
すぐさま乗務員が受け止め、「寒いだろう」と思い、すぐに赤ちゃんをバスタオルで包み、先生が駆けつけるまで10分間抱きかかえていたといいます。
その後、「出産後、赤ちゃんを抱いた時の感激は忘れられない」とのことで、汚れたシャツは感動のまま記念に残したいと語っていたそうです。
社会的意義のある『陣痛タクシー』
――やりがいや魅力について、乗務員からはどんな声がある?
先ほどのエピソードのように、緊急時など乗務員にとっても非常に緊張する場面があります。
しかし、「人の役に立っている」ということは乗務員にとって、大きなモチベーションや励みになっています。
『陣痛タクシー』は、陣痛時にスムーズに病院まで行くことができるだけでなく、救急車の正しい利用の促進にも貢献する社会的な取り組みです。
徐々に認知度も高まっていますが、「知らなかった」という人は、もしもの時のために利用方法などを覚えておくといいでしょう。
[文/デジタル・コンテンツ・パブリッシング・構成/grape編集部]