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父の生き方に学ぶ 『未知の領域』への心の準備と、大切にしたい時間

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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遠くを見つめる女性の写真

吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

「未知の領域」をどう生きようか

93歳の父の姿から、歳を重ね、人生の最終章の生き方を見せてもらっている。

この1年、明らかに変化しているのを感じます。

人生最終章の生き方は、若い頃のように自由に選べるわけではありません。

体の衰えがあり、それまでできていたことが、できなくなる。気持ちはしっかりしていても、体がついていかなくなる。また認知などの症状が出てくることがある。

手をとっている写真

私も60歳を過ぎたときに、(これから「未知の領域」に入っていくのだ)と思いました。確かに、自分自身にもいろいろ「未知だったこと」が体に出てきました。

それが90歳を超えたとなれば、 想像はできないでしょう。

入院している人の写真

父は夏の終わりに肺炎を患い緊急入院をし、一気に弱ってしまいました。

もうこのままなのだろうか……と思った一方で、大丈夫だろうという確信のようなものも。

酸素マスクをつけ、虚ろな姿の中に、一片の生命力を感じました。

それから療養のために転院したのですが、そこに穏やかで、やさしい時間を過ごすことになりました。

花畑の写真

若い頃、働き盛りの頃の父は、どちらかというと自己中心的であり、私たち家族は時折、激しい嵐に見舞われるような時期を過ごしました。

何度も頭を抱えるようなことがあり、母は苦労をしたと思います。

そのような中で家族の気持ちがばらばらにならなかったのは、母の心の強さに支えられていたからなのかもしれません。

そんな父でしたが、母が病気で倒れ、大手術を受けたときから、人が変わってしまったように気持ちは母中心になったのです。

もしかしたら生きて帰れないかもしれないという手術をする母を見送りながら、私と妹たちは涙が止まらなかったのですが、ふと見ると父も涙を拭うことなく、ぽろぽろと泣いていたのでした。

父の人生の中で、この時のことが変容する大きなきっかけだったのではないかと思います。

夏の終わりのイメージ写真

ほぼ毎日、誰かしら父のお見舞いに出向きました。

自分の状況を受け入れているのかわからない。達観したのかもしれない。面会時間の30分は、穏やかな、やさしい時間になりました。

近況を話すとうれしそうに「そうかそうか」と笑い、60年も前の出来事をつい数年前のことのように詳細に語ります。

アルバムを見ている写真

そんな話を聞きながら、これはかけがえのない時間をもらっているのだとつくづく思うのです。

人生をどう仕上げていくか。それを見せてもらっている気がします。

自分がどのように老いていくのか。健康に気を配り、運動をし、仕事を続けていたとしても、何が起こり、どうなるのかわかりません。

今できることを悔いなくやる。大切な人を大切にしながらうららかに、楽しみ、この瞬間を味わう。

それが今のところの「未知の領域」への処方箋でしょうか。これも父が自らの姿から教えてくれたことなのです。

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※記事中の写真はすべてイメージ


[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
吉元由美オフィシャルサイト
吉元由美Facebookページ
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