日々、しあわせに「なる」ために生きている? By - 吉元 由美 公開:2025-03-23 更新:2025-03-23 エッセイ吉元由美連載 Share Post LINE はてな コメント 吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。 しあわせは、「なる」ものではなく「感じる」こと しあわせだなあとしみじみ思う瞬間。何ということのない、ふとした日常の中でそんな感慨が湧いてきます。 その思いに応えるように(そうだよね、しあわせだなあ)と素直に思います。 たとえば、夜ごはんの支度をしているとき、キッチンで野菜を刻んでいたり、お鍋を静かにかき混ぜているとき。 特別な何かがあったわけもないのですが、しあわせは手の届かないところにあるのではなく、いつもすぐ隣に在ることに気づかされます。 西島秀俊と内野聖陽主演のドラマ「きのう何食べた?」の中で、内野さん演じるケンジはエピソードの中で1回は「しあわせ……」と噛みしめるようにつぶやきます。 恋人のシロさんが作るおいしいごはんを食べてはつぶやき、シロさんのちょっとぶっきらぼうな優しさを感じたときに。 そこには好きな人と一緒にいられるしあわせもあるのですが、ケンジのつぶやく「しあわせ……」には、生きていることに、すべてのことへの感謝のも含まれているような感じがするのです。 日頃、私たちは「しあわせ……」と感じていても、言葉にしないことが多いのではないでしょうか。 思い返してみると、若い頃に「しあわせ……」としみじみ感じたことはそうなかったかもしれません。 しあわせのイメージは漠としていて、頑張らなくてはつかめないものと思っていました。何がしあわせだかわからない。だからしあわせに「なる」ために日々生きていたのです。 二十代の半ばからよくひとりで旅をしました。飛行機代が安くなる冬、パリの街を歩き回り、少し早めの夕食をとるために小さなビストロに入る。 ワインを頼み、自分と対話をしながら食事をしているとき、ものすごい幸福感に気づき、涙がこみあげてきたことがありました。 「私は生きている。仕事をして一人で生きていける。恵まれている。こうしてひとりで旅もできる。こんな美味しいものを選ぶ感性を持っている。この世に送り出してくれ、育ててくれた親がいる。大好きな友達がいる。私の書いた歌を聞いてくれる人がいる……」 何もかもがありがたく、多くの人に支えられていることがありがたく。感謝できることは何としあわせなことか。そんな思いがあふれました。 そして今では、ただただしあわせ。そこに理由もなければ、必要な何かもない。 老後のお金が心配だったり、健康面で気になることがありますが、それがこのしあわせ感を妨げることはありません。 それらは不安や心配事、という全く別の次元のものなのです。ただただしあわせを味わえる。 それが年齢を重ねて見えてきた景色であるなら、いまここにいること、そしてこれからの人生が楽しみになります。 しあわせは「なる」ものではなく、ただただ「感じる」こと。それは、生きることを「楽」にすることでもあるのです。 いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で吉元 由美1,584円(04/16 05:02時点)Amazon楽天市場YahooAmazonの情報を掲載しています ※記事中の写真はすべてイメージ 作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー [文・構成/吉元由美] 吉元由美 作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。 ⇒ 吉元由美オフィシャルサイト ⇒ 吉元由美Facebookページ ⇒ 単行本「大人の結婚」 ギャル曽根流のポテサラに「今日の夕飯決まった」「その発想はなかった」ギャル曽根さん親子が教える、ポテトサラダレシピに「奥が深い」「その発想はなかった!」の声が上がりました。 「本当に天才」「ペロッと完食」 ロバート馬場が教えるこんにゃくレシピが、激ウマ!味見のはずが…手が止まらない!馬場裕之さんが教えるこんにゃくレシピが絶品です。 Share Post LINE はてな コメント
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
しあわせは、「なる」ものではなく「感じる」こと
しあわせだなあとしみじみ思う瞬間。何ということのない、ふとした日常の中でそんな感慨が湧いてきます。
その思いに応えるように(そうだよね、しあわせだなあ)と素直に思います。
たとえば、夜ごはんの支度をしているとき、キッチンで野菜を刻んでいたり、お鍋を静かにかき混ぜているとき。
特別な何かがあったわけもないのですが、しあわせは手の届かないところにあるのではなく、いつもすぐ隣に在ることに気づかされます。
西島秀俊と内野聖陽主演のドラマ「きのう何食べた?」の中で、内野さん演じるケンジはエピソードの中で1回は「しあわせ……」と噛みしめるようにつぶやきます。
恋人のシロさんが作るおいしいごはんを食べてはつぶやき、シロさんのちょっとぶっきらぼうな優しさを感じたときに。
そこには好きな人と一緒にいられるしあわせもあるのですが、ケンジのつぶやく「しあわせ……」には、生きていることに、すべてのことへの感謝のも含まれているような感じがするのです。
日頃、私たちは「しあわせ……」と感じていても、言葉にしないことが多いのではないでしょうか。
思い返してみると、若い頃に「しあわせ……」としみじみ感じたことはそうなかったかもしれません。
しあわせのイメージは漠としていて、頑張らなくてはつかめないものと思っていました。何がしあわせだかわからない。だからしあわせに「なる」ために日々生きていたのです。
二十代の半ばからよくひとりで旅をしました。飛行機代が安くなる冬、パリの街を歩き回り、少し早めの夕食をとるために小さなビストロに入る。
ワインを頼み、自分と対話をしながら食事をしているとき、ものすごい幸福感に気づき、涙がこみあげてきたことがありました。
「私は生きている。仕事をして一人で生きていける。恵まれている。こうしてひとりで旅もできる。こんな美味しいものを選ぶ感性を持っている。この世に送り出してくれ、育ててくれた親がいる。大好きな友達がいる。私の書いた歌を聞いてくれる人がいる……」
何もかもがありがたく、多くの人に支えられていることがありがたく。感謝できることは何としあわせなことか。そんな思いがあふれました。
そして今では、ただただしあわせ。そこに理由もなければ、必要な何かもない。
老後のお金が心配だったり、健康面で気になることがありますが、それがこのしあわせ感を妨げることはありません。
それらは不安や心配事、という全く別の次元のものなのです。ただただしあわせを味わえる。
それが年齢を重ねて見えてきた景色であるなら、いまここにいること、そしてこれからの人生が楽しみになります。
しあわせは「なる」ものではなく、ただただ「感じる」こと。それは、生きることを「楽」にすることでもあるのです。
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」