「あの人、ゲイなんだって」 カミングアウトした男性を待っていた現実 By - 山下さちこ 公開:2018-03-01 更新:2020-04-28 LGBT Share Post LINE はてな コメント 深田恭子さんと松山ケンイチさん主演のドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)や、トランスジェンダーが主人公の『女子的生活』(NHK)。 さらに、元力士の把瑠都さんが主要キャストの1人として登場することで話題を呼んでいる『弟の夫』(NHK)など、LGBTにスポットを当てたドラマが目立つようになってきました。 LGBTへの社会的関心が高まっていることの表れのようにも思えますが、実際の生活では、マジョリティを公言することはなかなか難しいことです。 LGBTであることを明かしたことで「同僚の風当たりが強くなった」「親から勘当された」など、人間関係に支障をきたしたといった声を耳にすることは珍しくありません。 職場でゲイをカミングアウトしている40代男性 ゲイであることを、職場でカミングアウト(公言)している、都内在住のYさん(仮名)。公言したことによって、周囲の反応はどう変わったのか、どう受け入れられているのか…話を聞きました。 ――最初から職場の人にカミングアウト(公言)していたんですか? 最初はいうつもりではなかった。でも、カミングアウトしたきっかけは、前の職場の時にすごい面倒見てくれていた先輩が「ゲイじゃないの?」って聞いてきたんだよね。 自分は聞かれたらいうスタンスだったから「あ、バレちゃった?」みたいな感じでいったら、先輩が「私が全面的にサポートするからいいなよ」っていってくれたの。 また、当時勤めていた職場が大手アパレルブランドで移動も頻繁にあったことから、ほかの店舗のスタッフにまでYさんがゲイであることが人伝てに広まっていきました。 ――初めての店舗のスタッフの反応は、どんな感じでしたか? 最初は遠巻きに観察されている雰囲気は感じた。でも、聞かれたら答えるしね。 そこでゲイであることに興味を持ってもらえて、そこから広がっていって…だから、あまり自分から積極的にカミングアウトしたって感じはないかな。 ――自分のいないところで、自分の話題を出されることは気にならないんですか? ならない。逆にラッキーみたいな(笑) ――カミングアウトする手間がはぶけたって感じですか? やっぱ、カミングアウトするほうとしては、タイミングとかもあるから。改まっちゃうと変な雰囲気になるじゃん(笑) 勝手に話が広まってくれて、あっちが知りたいことを聞いてくれるほうが楽なんだよね。 そうすると、自分も隠さなくていいし。自分からいうタイミングを計る必要もないし。 「必ずしも、受け入れられるわけではない」 笑顔を絶やさず語ってくれるYさんが印象的だった、今回のインタビュー。しかし、ゲイであるという事実を受け入れてもらえることばかりではなかったといいます。 ――「聞かれたら答える」というスタンスになった経緯は? ゲイを快く思わない人もいるんだよね。学生のころとか、飲み会の席でカミングアウトしたら雰囲気が凍っちゃったことがあって。それで、離れていった友達もいるし。 だから、あんまり自分からいうのはよくないことなのかも…って思ったりもした。 かといって、ゲイであることを隠していると、どんどん話しづらくなるから、「聞かれたら答える」って感じになっていったかな。 また、転職を経て、現在の職場では『性的指向を隠す人の気持ち』を知ったというYさん。 いまの職場でも、自分がゲイであることが話題になった時は「え?」っていう人も、やっぱりいて(笑) 意識して男らしい言葉を使ったり、振る舞いをするわけではないけれど、自分を制御している感じはあるかも。だから、会社でいえない人の気持ちって「こういうことね」って。 ――制御していると感じるのは、どういうところですか。 普通の会話とかを、めっちゃ気を付ける。前の職場では、お客さんでイケメンがきたら「あの人、すごいカッコいい」とかいってたけど、いまの職場ではしない。 ――LGBTの人たちが自分らしくいるために、周囲ができることはなんですか。 うーん…知りたいと思うことかな。同性愛者への戸惑いは、誰もが絶対どこかで持っていると思うの。 でも、お互いに聞いたり教えたりしないと、そもそもLGBTの話題に触れる機会がなくなっちゃう。それは、どうかと思うんだよね。 LGBTの話題を遠ざけてしまう要因とは? 実は、以前にもゲイであることでテレビ局から取材の依頼を受けたことがあるというYさん。 事前に話を聞いたところ、テレビ側は「LGBTであることによって、虐げられていたけれど、いまは自由です」といった人物像を求めていたことが分かったといいます。 しかし、そういった経験がないことを伝えたところ「じゃあ、取材は結構です」と断られたことがあったのだそうです。 メディアで紹介される性的マイノリティは、誰もがつらい経験を経てきた人ばかり。そうした人がいるのは事実です。 しかし、Yさんのように、オープンなスタンスを持っている人もいます。 LGBTに対する「虐げられている」といったイメージが先行してしまうと、『腫れもの』のように扱われてしまうことにつながりかねません。 そうした先入観が、よりLGBTを話題にすることを遠ざけている要因につながるというのは、考えすぎでしょうか…。 LGBTというマイノリティを前にして、どう接していいのか戸惑ってしまうのは仕方がないこと。しかし、相手を知りたいという気持ちにまで蓋をしてしまう必要はありません。 マイノリティの人たちが、勇気を持ってカミングアウトしたように、マジョリティの人たちも一歩踏み込んで相手の話を聞こうとする勇気が必要なのではないでしょうか。 【お詫びと訂正】 記事掲載時、マイノリティとマジョリティの表記を誤って記載しておりました。訂正し、お詫び申し上げます。 [文・構成/grape編集部] Share Post LINE はてな コメント
深田恭子さんと松山ケンイチさん主演のドラマ『隣の家族は青く見える』(フジテレビ系)や、トランスジェンダーが主人公の『女子的生活』(NHK)。
さらに、元力士の把瑠都さんが主要キャストの1人として登場することで話題を呼んでいる『弟の夫』(NHK)など、LGBTにスポットを当てたドラマが目立つようになってきました。
LGBTへの社会的関心が高まっていることの表れのようにも思えますが、実際の生活では、マジョリティを公言することはなかなか難しいことです。
LGBTであることを明かしたことで「同僚の風当たりが強くなった」「親から勘当された」など、人間関係に支障をきたしたといった声を耳にすることは珍しくありません。
職場でゲイをカミングアウトしている40代男性
ゲイであることを、職場でカミングアウト(公言)している、都内在住のYさん(仮名)。公言したことによって、周囲の反応はどう変わったのか、どう受け入れられているのか…話を聞きました。
――最初から職場の人にカミングアウト(公言)していたんですか?
最初はいうつもりではなかった。でも、カミングアウトしたきっかけは、前の職場の時にすごい面倒見てくれていた先輩が「ゲイじゃないの?」って聞いてきたんだよね。
自分は聞かれたらいうスタンスだったから「あ、バレちゃった?」みたいな感じでいったら、先輩が「私が全面的にサポートするからいいなよ」っていってくれたの。
また、当時勤めていた職場が大手アパレルブランドで移動も頻繁にあったことから、ほかの店舗のスタッフにまでYさんがゲイであることが人伝てに広まっていきました。
――初めての店舗のスタッフの反応は、どんな感じでしたか?
最初は遠巻きに観察されている雰囲気は感じた。でも、聞かれたら答えるしね。
そこでゲイであることに興味を持ってもらえて、そこから広がっていって…だから、あまり自分から積極的にカミングアウトしたって感じはないかな。
――自分のいないところで、自分の話題を出されることは気にならないんですか?
ならない。逆にラッキーみたいな(笑)
――カミングアウトする手間がはぶけたって感じですか?
やっぱ、カミングアウトするほうとしては、タイミングとかもあるから。改まっちゃうと変な雰囲気になるじゃん(笑)
勝手に話が広まってくれて、あっちが知りたいことを聞いてくれるほうが楽なんだよね。
そうすると、自分も隠さなくていいし。自分からいうタイミングを計る必要もないし。
「必ずしも、受け入れられるわけではない」
笑顔を絶やさず語ってくれるYさんが印象的だった、今回のインタビュー。しかし、ゲイであるという事実を受け入れてもらえることばかりではなかったといいます。
――「聞かれたら答える」というスタンスになった経緯は?
ゲイを快く思わない人もいるんだよね。学生のころとか、飲み会の席でカミングアウトしたら雰囲気が凍っちゃったことがあって。それで、離れていった友達もいるし。
だから、あんまり自分からいうのはよくないことなのかも…って思ったりもした。
かといって、ゲイであることを隠していると、どんどん話しづらくなるから、「聞かれたら答える」って感じになっていったかな。
また、転職を経て、現在の職場では『性的指向を隠す人の気持ち』を知ったというYさん。
いまの職場でも、自分がゲイであることが話題になった時は「え?」っていう人も、やっぱりいて(笑)
意識して男らしい言葉を使ったり、振る舞いをするわけではないけれど、自分を制御している感じはあるかも。だから、会社でいえない人の気持ちって「こういうことね」って。
――制御していると感じるのは、どういうところですか。
普通の会話とかを、めっちゃ気を付ける。前の職場では、お客さんでイケメンがきたら「あの人、すごいカッコいい」とかいってたけど、いまの職場ではしない。
――LGBTの人たちが自分らしくいるために、周囲ができることはなんですか。
うーん…知りたいと思うことかな。同性愛者への戸惑いは、誰もが絶対どこかで持っていると思うの。
でも、お互いに聞いたり教えたりしないと、そもそもLGBTの話題に触れる機会がなくなっちゃう。それは、どうかと思うんだよね。
LGBTの話題を遠ざけてしまう要因とは?
実は、以前にもゲイであることでテレビ局から取材の依頼を受けたことがあるというYさん。
事前に話を聞いたところ、テレビ側は「LGBTであることによって、虐げられていたけれど、いまは自由です」といった人物像を求めていたことが分かったといいます。
しかし、そういった経験がないことを伝えたところ「じゃあ、取材は結構です」と断られたことがあったのだそうです。
メディアで紹介される性的マイノリティは、誰もがつらい経験を経てきた人ばかり。そうした人がいるのは事実です。
しかし、Yさんのように、オープンなスタンスを持っている人もいます。
LGBTに対する「虐げられている」といったイメージが先行してしまうと、『腫れもの』のように扱われてしまうことにつながりかねません。
そうした先入観が、よりLGBTを話題にすることを遠ざけている要因につながるというのは、考えすぎでしょうか…。
LGBTというマイノリティを前にして、どう接していいのか戸惑ってしまうのは仕方がないこと。しかし、相手を知りたいという気持ちにまで蓋をしてしまう必要はありません。
マイノリティの人たちが、勇気を持ってカミングアウトしたように、マジョリティの人たちも一歩踏み込んで相手の話を聞こうとする勇気が必要なのではないでしょうか。
【お詫びと訂正】 記事掲載時、マイノリティとマジョリティの表記を誤って記載しておりました。訂正し、お詫び申し上げます。
[文・構成/grape編集部]