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自然と共に生きるということ 楽園は心の中にある

By - 吉元 由美  公開:  更新:

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吉元由美の『ひと・もの・こと』

作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。

たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。

自然と共に生きるということ

人は自然とどう向き合っていけばいいのか。台風19号の甚大な被害に、言葉がありません。河川の氾濫、堤防の決壊によって住宅地、農地は泥水に埋まりました。水が引くのを待ち、泥を掻き出すことから始まる復旧作業、そして生活を立て直していく。ゲリラ豪雨で半地下が2回浸水し、その復旧作業だけでも大変でした。これほどの被害からの復旧の苦労は想像をはるかに超えます。

日本は災害の多い国です。台風、地震、噴火…。古来、天災によって何度も生活を壊され、復旧、復興を繰り返してきた歴史があります。このような気候風土が日本人の忍耐力や、受容する精神を培ってきたと、何かの本で読んだことがあります。生活が壊されたら、立て直していくしかない。誰も代わりにやってくれないのですから。生きるということの根本的な厳しさを感じます。

自然の中に八百万の神を見出している古の日本人にとって、雨、風、空、雲の変化はとても重要でした。種まき、田植えの時期、収穫のタイミング。暦はとても大切なものでした。季節の行事の多くは、五穀豊穣を願う神事として行われました。例えば『お花見』は、田の神に供物を捧げそのお下がりをいただくという神事に由来します。

また日本語に自然、気象に関する美しい言葉がとても多いのは、古の日本人の自然科学の観察力の賜物、そして和歌を嗜んでいた感性によるところが大きいと思います。

例えば、雨についての言葉は400以上あると言われています。秋に降る雨は、夏から秋に変わる時期に降る雨を秋雨、秋の長雨を秋黴雨(あきついり)、断続的に降る強い雨を白驟雨(はくしゅうう)など、しみじみとした味わいの言葉が多くあります。

日本語と同じようにハワイ語も自然、気象に関する言葉が豊かな言語です。30年近く前、杏里のハワイレコーディングのアルバムのタイトルをつけるにあたり、ハワイ語の辞書を隅から隅まで読み込みました。そのとき気づいたのは、ハワイ語にはネガティブな言葉が少ないこと、そして自然、気象を表す言葉が多くあることでした。

古代ハワイアンの人々も自然の中に神を見出し、そして自然と共に生きてきました。農耕、海で漁をするときに、自然、気象の変化は重要です。特に海の状態を表す言葉の多さに、ハワイの人々が海と共に生きてきたことが窺えます。アルバムの『モアナ・ラニ』「天国(ラニ)のような海(海)」というタイトルで、「楽園は心の中にある」というテーマを表しました。

人間もまた、自然の一部。自然と共に生きることに、感謝と祈りを通して心を寄せる時期が来たように思います。日常の備え、心の備えを。楽園というと軽く聞こえますが、心の中の楽園とは、どんなことがあっても希望を見出していく気持ちの力そのものでもあるのです。

※記事中の写真はすべてイメージ

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[文・構成/吉元由美]

吉元由美

作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
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