『形が悪い』廃棄されていく大量の野菜 農家の工夫に称賛の声
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スーパーや青果店に並ぶ、色とりどりの野菜。色合いやサイズもほぼ同じ野菜が並んでいるのが、消費者である私たちにとっては当たり前の光景です。
しかしご存知でしょうか。店頭に並ぶまでに、「形が悪い」というだけで、鮮度や味、品質的にはまったく問題のない野菜や果物が、大量に廃棄されている現状を。
そんな状況を改善すべく、独自のプロジェクトを立ち上げ注目を集めている農家がありました。
味、品質は一級品。しかし、サイズが違うだけで安くなる野菜
「きつい、給料が低い、結婚できないが、農家の『3K』です」
そう笑いながら話すのは、山梨県中央市に農園を構える『ヨダファーム』の功刀隆行さん。それほどまでに、農家が直面している現状は深刻です。
農協が決めた野菜の規格は、それぞれA・B・C級の3つに分類され、A級品から徐々に値段は落ちていくといいます。
たとえばトマトでいうと、丸々と実ったものがA級品。功刀さんは「形が楕円になっていくにつれて、B級、C級と落ちていく」と語ります。
しかし味や品質には問題なく、ただ「形が悪い」というだけで通常価格を大幅に下回った価格で取引きされるのだとか。
ちなみに、C級品の野菜にいたっては「10円ほどで取引きされることもある」というのですから驚きです。
個人が栽培する野菜で、すべての野菜を整った形で収穫まで育てるのは難しいもの。収穫する段階では、さまざまな形があって当たり前です。
しかし、整った形のものが消費者に好まれる傾向があり、不ぞろいなものは廃棄されるかタダ同然の値段で取引きされてしまいます。
そんな状況を改善すべく、功刀さんが始めたことは至ってシンプルでした。それは「形が悪くても、おいしい野菜はある」という認知を広めることです。
実際に食べた人からはリピーターも続出
株式会社bondsが運営する『生活マルシェ』では、功刀さんが作った野菜、しかも売れ残ってしまい本来廃棄されるはずだった野菜を店頭に並べています。
「どれほど売れるのかが分からなかったので、お試しという形で置き始めた」と語るのは、株式会社 bondsの代表である田中類さん。
しかしただ置くだけでなく、田中さんは店頭で野菜の味や品質については何も問題がないことを消費者に直接アピールしていきました。
すると、功刀さんが作る野菜の味のよさにリピーターが続出。現在では「次は、いつ入荷するのか」と聞いてくる消費者もいるほどの評判です。
同様の取り組みはさらに広がり、2020年2月15日には、田中さんが運営するイベント『enダイニング』に功刀さんも参加。
規格外であるがために安く取引きされる野菜をその場で調理し、イベントの参加者に味わってもらいました。
イベント当日、出されたのはネギと大根。そのすべてが「大きすぎる」という理由で規格外扱いされる野菜ばかりです。
「知っているネギの味じゃない。甘い!」「多少高くても買いたい味」と参加者からはその味のよさに驚く意見が相次ぎ、イベントは大盛況のうちに幕を閉じました。
「農業を次世代に繋ぎたい!」
功刀さんが、新たな取り組みを始めるのは、廃棄される野菜を減らすことだけが理由ではありません。
「きつい、給料が低い、結婚できないが、農家の『3K』です」と功刀さんが語るように、若い世代で率先して農家を始める人は年々、減少しているといいます。
事実、30年前には約10人に1人いた農業者が、今やわずか1.4%にまで減少。今後5年間で農業者は半数にもなるといわれており、功刀さんは一農業者として危機感を抱いていました。
国の促す法人化・少人数での大量生産型への風潮は、古くから農業の基盤を作り上げてきた「いい物を作ろう!」というこだわりや信念を持つ『農家』にとってはとても生きにくいのが現状です。
いくら妥協せず、こだわりぬき、寝る間を削っておいしいトマトを作っても、今の農業界のシステムでは農家を存続していくことはできません。
そうも語る功刀さんは、クラウドファンディングサイト『Makuake』を使い、その現状を変えるプロジェクトも開始。功刀さんのその熱い思いはクラウドファンディングサイトやSNSを通じて、多くの人の心を動かしています。
出典:Makuake スクリーンショットより
超高齢産地のトマト農家が新たな挑戦
繁忙期には16時間も働くこともあるという農家の現状。普段は家族4人で行っている作業も、時には親戚総出で行うといいます。
それでも農家の3Kの1つ「給料が低い」ことに変わりはありません。
功刀さんが始めた活動は、農家が立たされている厳しい現状を知らせるとともに、食品ロスの問題を含め、この状況変えていくためには消費者である私たち一人ひとりの意識にかかっていることを教えてくれます。
[文・構成/grape編集部]