テレワークにおける人事評価の3つの課題 対策例から事例まで By - grape編集部 公開:2022-01-07 更新:2022-03-16 テレワーク Share Post LINE はてな コメント 働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、多くの企業が従業員の多様性や、働く環境の柔軟性を考慮しています。 その一環として、テレワークを導入したり、導入を検討したりする企業は珍しくありません。 テレワークにはいくつかのデメリットがあり、特に代表的なデメリットが人事評価です。 テレワークを導入するなら、前もって人事評価について考えておきましょう。 当記事では、テレワークにおける人事評価の課題と、適切な評価施策などを解説します。 テレワークの導入やマネジメント方法にお悩みの人は、ぜひ参考にしてくださいね! 目次 1. テレワークにおける人事評価の課題とは?1.1. 勤務態度が評価しづらい1.2. 評価基準があいまいになる1.3. コミュニケーションを取る機会が減る2. テレワークに適した人事評価を実現する対策例5つ2.1. 評価項目・基準を明確にする2.2. 評価方法を統一する2.3. 目標管理制度を導入する2.4. 従業員が自己PRをする機会を用意する2.5. プロセスと成果の両方をバランスよく評価する3. テレワークにおいて評価制度を改善した事例3.1. カルビー株式会社3.2. シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社4. まとめ テレワークにおける人事評価の課題とは? ※写真はイメージ テレワークで働く従業員の人事評価を難しいと考える人は多く、管理職だけでなくマネジメントされる側の従業員も、疑問や不安を感じやすいでしょう。 テレワークの人事評価が難しいと考えられる背景には、さまざまな要因があります。 ここでは、テレワークを実施する際の人事評価の課題を3つご紹介します。 勤務態度が評価しづらい 人事評価を行う際、日本企業の多くが勤務態度を重要視しています。 遅刻や早退の有無、仕事に取り組む姿勢、周囲への協調性などを基にして評価することが多い傾向です。 オフィスでの勤務の場合、上司は部下の勤務態度を日頃から目にしているため、判断材料を得ることは難しくありません。 しかし、テレワークの場合はそれぞれが異なる場所で仕事をします。 そのため、上司が部下の勤務態度を知ることが困難になり、オフィス勤務と同じ判断材料による人事評価が難しくなってしまうでしょう。 評価基準があいまいになる 日本では、テレワークの導入を急速に進めている企業が多く見られます。 しかし、仕組みが整備されないままテレワークを実施すると、一連の業務の中でどの部分を切り取って評価をするのかが個人の裁量に委ねられます。 その結果、評価基準にばらつきが生じてしまうことも。 評価基準にばらつきが生じると、従業員から不満が出る可能性が高まってしまうでしょう。 コミュニケーションを取る機会が減る 人事評価が単独ではなく複数人で行われている企業では、評価プロセスそのものが滞る可能性があります。 役職者や人事担当者などが複数で評価を決定する場合は、細かい情報共有や密な相談、積極的な意見交換が必要になることが一般的です。 オフィスワークでは打ち合わせが簡単にできますが、担当者同士がテレワークの場合、コミュニケーションを取る機会が少なくなる可能性があります。 すべての判断材料を集約することが困難になるため、評価プロセスに影響が出る可能性もあるでしょう。 テレワークに適した人事評価を実現する対策例5つ ※写真はイメージ テレワークを行う従業員に対しては、オフィスで働く人とは異なる人事評価の基準が必要です。 しかし、どのような点に注目し人事評価制度を整えるべきか、悩むことも多いでしょう。 ここでは、テレワークに適した人事評価を実現するための対策例をご紹介します。 評価項目・基準を明確にする ※写真はイメージ テレワークでは、上司が部下の仕事の様子を直接目にすることができません。 そのため、成果や実績以外にも『作業項目・基準』を明確にする必要があります。 成果までの経過の確認には、定期的に状況を報告することのほか、『いつまでに』『何を行うか』などの具体的な目標設定が効果的です。 業務スピードや業務対応など速さの計測が可能であれば、評価材料としてより有効です。 オフィスワークを前提とした基準を、テレワークにも合う基準に変えることが求められます。 評価方法を統一する ※写真はイメージ テレワークの導入時は、従業員が評価基準の変更に戸惑うだけでなく、評価をする側の上司も新しい評価方法に慣れていません。 しかし、あいまいな評価制度のままテレワークを推進すると、部下が不公平感を抱く可能性があります。 評価方法の変更と同時に、社内で評価方法を統一することが重要です。 例えば、複数人で評価を行う場合は情報を集約し、担当者だけがアクセス権を得られるような仕組みを設けると効率的です。 また、評価の偏りの有無を別の視点から確認する過程を加えたり、明瞭なガイドラインを作成したりすれば評価の質は向上するでしょう。 目標管理制度を導入する ※写真はイメージ 目標管理制度『MBO(Management By Objective)』とは、組織としての目標以外に個人が業務目標を定めて実行し、結果に基づいた評価を行う方法のことです。 テレワークでは自己管理が求められる場面も多いため、目標管理制度を取り入れることは非常に効果的な手段です。 従業員一人ひとりが業務前に期間内の目標を立てた上で、実現に向けた具体的な方法や取り組み方を計画し、中間目標を設定します。 業務後には必ず振り返りを行い、評価や目標達成度を上司に共有する過程を整えてくださいね。 従業員が自己PRをする機会を用意する リモートワークにより部下の仕事が見えないことは、評価の際に上司の頭を悩ませるだけではなく、仕事ぶりをアピールしづらい部下側の不満を増加させます。 決められた仕事をどこまで行えたか、どのような結果を得られたかなど、部下自身が自己評価をしてアピールできる機会を与えることが重要です。 また、従業員自身による自己PRは、会社側が気付かなかった評価材料を収集でき、部下が仕事に対して重要視している要素を理解することにも役立ちます。 評価に対する部下の不安を減らし、自身のマネジメント意識の向上にもつながりますよ。 プロセスと成果の両方をバランスよく評価する テレワークを実施する際の人事評価において、成果主義はもっともシンプルな考え方です。しかし、成果主義は従業員のモチベーションを下げてしまうことがあります。 また、担当業務によっては数値化が不可能な場合もあるため、評価が難しくなるという問題点も見過ごせません。 成果主義を取り入れる場合は『プロセス』『成果』のバランスを考慮し、どのような評価項目を設定するべきかを検討することが重要です。 また、評価項目は組織の事情や風土に応じた内容になるよう配慮し、正しい評価ができる仕組みを検討することも、従業員の意欲向上につながります。 テレワークにおいて評価制度を改善した事例 テレワークを導入した上で、評価制度の改善に成功した企業はたくさんあります。 ここでは、テレワークにおける評価制度を改善した事例を2つ紹介します。 あくまでも一例ではあるものの、自社のテレワーク導入や業務改善に役立つ部分があれば、ぜひ参考にしてくださいね。 カルビー株式会社 カルビー株式会社は、『ライフワークバランス(ワークライフバランス)』と『成果主義』を人事評価の2本柱として掲げる企業です。 個人の成長を重視する考えのもと、人事評価には業務目標に応じた絶対的評価が設定されています。 また、テレワークの推奨期間を設けつつ在宅勤務制度を導入し、役職者や管理者を巻き込みながら制度の利用を繰り返しうながしたことが特徴です。 管理者の理解や利用機会を意図的につくることで、希望者がテレワークを選択しやすい環境づくりが実現しました。 オフィスに縛られない働き方を実現させながら、同時に生産性を高めるという意識を社内にもたらすことができている事例です。 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社は、ソフトウェアの開発や販売などを取り扱う米国企業の日本法人です。 ライフワークバランスの向上を目指し、テレワークを推奨しています。 人事評価には裁量労働制を導入しており、従業員は労働時間を個人の裁量によって決めることができます。 評価の対象は1日の仕事の成果で、高いパフォーマンスが評価につながる仕組みです。 従業員を対象にした満足度調査の結果は非常に高評価で、「生活の質が向上している」という声が上がっています。 従業員が個々に効率のよい方法を選べるようになっただけでなく、企業も質の高い労働力と従業員からの信頼を得ることに成功した事例です。 まとめ これまで人事評価において勤務態度を重要視してきた企業では、テレワークを導入した際、従来の人事評価では対応が難しいケースが増えるでしょう。 人事評価制度があいまいなままでは、従業員が不安や不満を抱く恐れがあるため、早急な整備が必要です。 評価制度を整備する際は、明確な基準を設けることや、評価者同士の連携をスムースにする仕組みづくりを行うことなどが重要です。 テレワークは従業員のライフワークバランス、仕事の意識、自己管理能力の向上につながります。企業の風土に合わせて適切な評価方法を検討してくださいね。 [文・構成/grape編集部] 出典 カルビー株式会社/シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 Share Post LINE はてな コメント
働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、多くの企業が従業員の多様性や、働く環境の柔軟性を考慮しています。
その一環として、テレワークを導入したり、導入を検討したりする企業は珍しくありません。
テレワークにはいくつかのデメリットがあり、特に代表的なデメリットが人事評価です。
テレワークを導入するなら、前もって人事評価について考えておきましょう。
当記事では、テレワークにおける人事評価の課題と、適切な評価施策などを解説します。
テレワークの導入やマネジメント方法にお悩みの人は、ぜひ参考にしてくださいね!
テレワークにおける人事評価の課題とは?
※写真はイメージ
テレワークで働く従業員の人事評価を難しいと考える人は多く、管理職だけでなくマネジメントされる側の従業員も、疑問や不安を感じやすいでしょう。
テレワークの人事評価が難しいと考えられる背景には、さまざまな要因があります。
ここでは、テレワークを実施する際の人事評価の課題を3つご紹介します。
勤務態度が評価しづらい
人事評価を行う際、日本企業の多くが勤務態度を重要視しています。
遅刻や早退の有無、仕事に取り組む姿勢、周囲への協調性などを基にして評価することが多い傾向です。
オフィスでの勤務の場合、上司は部下の勤務態度を日頃から目にしているため、判断材料を得ることは難しくありません。
しかし、テレワークの場合はそれぞれが異なる場所で仕事をします。
そのため、上司が部下の勤務態度を知ることが困難になり、オフィス勤務と同じ判断材料による人事評価が難しくなってしまうでしょう。
評価基準があいまいになる
日本では、テレワークの導入を急速に進めている企業が多く見られます。
しかし、仕組みが整備されないままテレワークを実施すると、一連の業務の中でどの部分を切り取って評価をするのかが個人の裁量に委ねられます。
その結果、評価基準にばらつきが生じてしまうことも。
評価基準にばらつきが生じると、従業員から不満が出る可能性が高まってしまうでしょう。
コミュニケーションを取る機会が減る
人事評価が単独ではなく複数人で行われている企業では、評価プロセスそのものが滞る可能性があります。
役職者や人事担当者などが複数で評価を決定する場合は、細かい情報共有や密な相談、積極的な意見交換が必要になることが一般的です。
オフィスワークでは打ち合わせが簡単にできますが、担当者同士がテレワークの場合、コミュニケーションを取る機会が少なくなる可能性があります。
すべての判断材料を集約することが困難になるため、評価プロセスに影響が出る可能性もあるでしょう。
テレワークに適した人事評価を実現する対策例5つ
※写真はイメージ
テレワークを行う従業員に対しては、オフィスで働く人とは異なる人事評価の基準が必要です。
しかし、どのような点に注目し人事評価制度を整えるべきか、悩むことも多いでしょう。
ここでは、テレワークに適した人事評価を実現するための対策例をご紹介します。
評価項目・基準を明確にする
※写真はイメージ
テレワークでは、上司が部下の仕事の様子を直接目にすることができません。
そのため、成果や実績以外にも『作業項目・基準』を明確にする必要があります。
成果までの経過の確認には、定期的に状況を報告することのほか、『いつまでに』『何を行うか』などの具体的な目標設定が効果的です。
業務スピードや業務対応など速さの計測が可能であれば、評価材料としてより有効です。
オフィスワークを前提とした基準を、テレワークにも合う基準に変えることが求められます。
評価方法を統一する
※写真はイメージ
テレワークの導入時は、従業員が評価基準の変更に戸惑うだけでなく、評価をする側の上司も新しい評価方法に慣れていません。
しかし、あいまいな評価制度のままテレワークを推進すると、部下が不公平感を抱く可能性があります。
評価方法の変更と同時に、社内で評価方法を統一することが重要です。
例えば、複数人で評価を行う場合は情報を集約し、担当者だけがアクセス権を得られるような仕組みを設けると効率的です。
また、評価の偏りの有無を別の視点から確認する過程を加えたり、明瞭なガイドラインを作成したりすれば評価の質は向上するでしょう。
目標管理制度を導入する
※写真はイメージ
目標管理制度『MBO(Management By Objective)』とは、組織としての目標以外に個人が業務目標を定めて実行し、結果に基づいた評価を行う方法のことです。
テレワークでは自己管理が求められる場面も多いため、目標管理制度を取り入れることは非常に効果的な手段です。
従業員一人ひとりが業務前に期間内の目標を立てた上で、実現に向けた具体的な方法や取り組み方を計画し、中間目標を設定します。
業務後には必ず振り返りを行い、評価や目標達成度を上司に共有する過程を整えてくださいね。
従業員が自己PRをする機会を用意する
リモートワークにより部下の仕事が見えないことは、評価の際に上司の頭を悩ませるだけではなく、仕事ぶりをアピールしづらい部下側の不満を増加させます。
決められた仕事をどこまで行えたか、どのような結果を得られたかなど、部下自身が自己評価をしてアピールできる機会を与えることが重要です。
また、従業員自身による自己PRは、会社側が気付かなかった評価材料を収集でき、部下が仕事に対して重要視している要素を理解することにも役立ちます。
評価に対する部下の不安を減らし、自身のマネジメント意識の向上にもつながりますよ。
プロセスと成果の両方をバランスよく評価する
テレワークを実施する際の人事評価において、成果主義はもっともシンプルな考え方です。しかし、成果主義は従業員のモチベーションを下げてしまうことがあります。
また、担当業務によっては数値化が不可能な場合もあるため、評価が難しくなるという問題点も見過ごせません。
成果主義を取り入れる場合は『プロセス』『成果』のバランスを考慮し、どのような評価項目を設定するべきかを検討することが重要です。
また、評価項目は組織の事情や風土に応じた内容になるよう配慮し、正しい評価ができる仕組みを検討することも、従業員の意欲向上につながります。
テレワークにおいて評価制度を改善した事例
テレワークを導入した上で、評価制度の改善に成功した企業はたくさんあります。
ここでは、テレワークにおける評価制度を改善した事例を2つ紹介します。
あくまでも一例ではあるものの、自社のテレワーク導入や業務改善に役立つ部分があれば、ぜひ参考にしてくださいね。
カルビー株式会社
カルビー株式会社は、『ライフワークバランス(ワークライフバランス)』と『成果主義』を人事評価の2本柱として掲げる企業です。
個人の成長を重視する考えのもと、人事評価には業務目標に応じた絶対的評価が設定されています。
また、テレワークの推奨期間を設けつつ在宅勤務制度を導入し、役職者や管理者を巻き込みながら制度の利用を繰り返しうながしたことが特徴です。
管理者の理解や利用機会を意図的につくることで、希望者がテレワークを選択しやすい環境づくりが実現しました。
オフィスに縛られない働き方を実現させながら、同時に生産性を高めるという意識を社内にもたらすことができている事例です。
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社
シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社は、ソフトウェアの開発や販売などを取り扱う米国企業の日本法人です。
ライフワークバランスの向上を目指し、テレワークを推奨しています。
人事評価には裁量労働制を導入しており、従業員は労働時間を個人の裁量によって決めることができます。
評価の対象は1日の仕事の成果で、高いパフォーマンスが評価につながる仕組みです。
従業員を対象にした満足度調査の結果は非常に高評価で、「生活の質が向上している」という声が上がっています。
従業員が個々に効率のよい方法を選べるようになっただけでなく、企業も質の高い労働力と従業員からの信頼を得ることに成功した事例です。
まとめ
これまで人事評価において勤務態度を重要視してきた企業では、テレワークを導入した際、従来の人事評価では対応が難しいケースが増えるでしょう。
人事評価制度があいまいなままでは、従業員が不安や不満を抱く恐れがあるため、早急な整備が必要です。
評価制度を整備する際は、明確な基準を設けることや、評価者同士の連携をスムースにする仕組みづくりを行うことなどが重要です。
テレワークは従業員のライフワークバランス、仕事の意識、自己管理能力の向上につながります。企業の風土に合わせて適切な評価方法を検討してくださいね。
[文・構成/grape編集部]