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サッカーの試合でゴールを決め、喜びのあまりユニフォームを脱いだり、アンダーシャツに書いたメッセージをアピールしたりする選手を見たことはありますか。
競技規則によると、試合中にユニフォームを脱ぐ行為は、過度な喜び方であるとして、イエローカードの対象となっています。
また、選手が発するメッセージは時として政治や宗教にかかわることもあり、主張によって起こりうる議論や、それ以上の問題を避けるという側面も含んでいます。
しかし、選手がユニフォームを脱いだにもかかわらず、イエローカードを出さなかった審判がいました。
シャツに書かれた『R.I.P ATSU』 その意味とは
2023年2月19日、オランダ・アムステルダムで行われた、エールディビジ第22節のアヤックス対スパルタ・ロッテルダム戦。
アヤックスに所属し、ガーナ代表メンバーでもある、モハメド・クドゥス選手が、後半39分に直接フリーキックでゴールを決めました。
クドゥス選手は得点後、自身のユニフォームをまくり上げ、『R.I.P ATSU(アツよ、安らかに)』と書かれたシャツをあらわにしました。
アヤックスのTwitterアカウントが、その時の様子を公開しています。
『ATSU』とは、元ガーナ代表の、クリスティアン・アツ選手のことです。
トルコのサッカークラブに所属していたアツ選手は、2023年2月6日にトルコ南部で発生した大地震で被災。
行方不明となっていましたが、同月18日に、残念ながら亡くなったことが発表されました。
クドゥス選手は、同じガーナ出身のアツ選手に対する追悼として、ユニフォームを脱ぐパフォーマンスを行ったのです。
「リスペクトを感じた」 ボーケル主審が示した姿勢
クドゥス選手のパフォーマンスは、競技規則に従えば、イエローカードに相当する行為です。
しかし、当日の試合を担当したポール・ファン・ボーケル主審は、クドゥス選手に口頭で何かを伝えた後、イエローカードを出さずにその場を離れました。
試合後、クドゥス選手はスポーツメディア『ESPN』のインタビューに応じ、ボーケル主審との場面について、次のように話しています。
SNS上では一連のシーンに対して、「素晴らしい主審だ」「人情味のある話」「主審にフェアプレー賞を与えてほしい」といったコメントが世界中から寄せられました。
一方で、「選手はイエローカードを覚悟していたのでは」「追悼したい気持ちは分かるけど、ルールはルールとして見てほしい」のように、規則を尊重すべきではないかという意見も出るなど、さまざまな考え方が混在しています。
試合中にユニフォームを脱いだクドゥス選手の行動と、『クドゥス選手の意志をくみ取った上で、イエローカードを出さない』というボーケル主審が下した判断は、どちらも競技規則の上では正しくありません。
しかし、行動の背景にあった意図と感情が、多くの人の心を打ったのでしょう。
[文・構成/grape編集部]