「自殺に関する5つの誤解」に考えさせられる 『新国立』の23歳現場監督、過労自殺で
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2020年の東京五輪・パラリンピックのメインスタジアムとなる新国立競技場の地盤改良工事に従事していた、23歳の建設会社社員の男性が自殺しました。
一部報道によると、原因は月200時間を超えることもあったという時間外労働。産経ニュースは次のように報じています。
男性の時間外労働は、失踪前の1か月で212時間。仮眠室のない職場で徹夜を行うこともあり、1日の平均睡眠時間は2~3時間だったといわれています。
※写真はイメージ
一度決まったデザイン案が白紙撤回されるなど、着工が遅れ、急ピッチで建設が進められている新国立競技場。
こういったさまざまな要因が、現場の労働環境を悪化させる一因になっているとも指摘されています。
未来ある若者が、自ら命を断つという痛ましいニュースに「なぜ周囲の人は気付けなかったのか」という疑問の声も上がっています。
『自殺についての5つの誤解』とは?
そんな中、東京都福祉保健局のウェブページに掲載されている『自殺についての5つの誤解』が注目を集めています。
「自殺について一般に広く信じられていることは、事実とはかなり異なっています」という一文から始まる5つの誤解とその理由に、多くの人が「考えさせられた」と語ります。
誤解1.『死ぬ・死ぬ』という人は本当は自殺しない
「死ぬ、死ぬ」と口にする人は、実際には行動に移さないなどともいわれますが、これは誤解だといいます。
実際に、自殺した人の8~9割は実行する前にサインを出しています。
「死ぬ」と口にしている人は、周囲に知ってもらいたいとサインを出している可能性があるのです。
誤解2.自殺の危険度が高い人は死ぬ覚悟が確固としている
本当に自殺すると決めた人を止めることはできない…これも誤解です。
ほとんどの人は「自殺しよう」と決心したつもりでも、「生きたい」と心が揺れています。
だからこそ、周囲が「生きたい」「助けてほしい」というサインを見逃さないことが重要なのです。
誤解3.未遂に終わった人は死ぬつもりなどなかった
未遂に終わった人に対し、「本気で死ぬつもりなんてなかったんだ」と考えるのは危険です。
医療関係者にも、こう考える人がいるといいますが、それは間違い。
『確実に命を断つ方法』をとらなかったとしたら、それは気持ちが揺れ動いているにすぎず、「死ぬつもりがなかった」というわけではないのです。
※写真はイメージ
誤解4.自殺について話をすることは危険だ
自殺について、人と話すことは滅多にありません。タブー視されているといってもいいでしょう。
しかし、自殺について話したからといって、相手に自殺という選択肢を与えることにはなりません。
むしろ、自らの心境や置かれている立場を客観的に見ることにつながり、自殺を遠ざられると考えられています。
誤解5.自殺は突然起き、予測は不可能である
周囲の人からすると、自殺は突然起こるものですが、実際にはそうではありません。
多くの場合は、長い期間をかけてさまざまな要因が蓄積された結果、あるキッカケによって自殺を選んでしまうのです。
逆にいえば、周囲が自殺を察知するための期間は決して短くないということ。自殺を止めるチャンスもまた少なくないのです。
自殺は、ある日突然現れて、親しい人間であっても気付けず、一瞬で実行されてしまうもの…そんな印象を持っている人もいるでしょう。
しかし、『自殺についての5つの誤解』を読むと、そんな考えが間違っていることに気付かされます。
もちろん、自殺の原因が長時間労働にあるとすれば、まず解決すべきは労働環境であることはいうまでもありません。
それでも、自分のちょっとした気付きや振る舞いで、身近な誰かの命を守れるとしたら…親しい友人や周囲の人間に対し「おかしいな」と感じたら、まずはその人と向き合うことが大切なのです。
東京都福祉保健局「自殺に関する5つの誤解」全文
[文・構成/grape編集部]