恐怖の恵方巻ノルマ!売れ残りの自腹購入を強要するのは違法じゃないの?
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2月3日は節分。「鬼はそと福はうち」と叫びながら豆を蒔き、年齢の数だけ食べることで邪気を払うことが本来の目的とされています。
そして最近は「恵方巻を食べる」ことも一般的に。元々関西地方で行われていた習慣だったようですが、商機と見たスーパーマーケットやコンビニがキャンペーンを展開し、現在は全国に浸透しているようです。
ノルマを課し社員に自腹購入を迫るケースも
そんな恵方巻きですが、最近は節分に合わせて大量生産し、すべて売るようノルマを課す店舗があるのだそう。そして目標販売数を達成できない場合、社員に「自腹購入」を迫ることもあるそうです。
無料配布ならともかく、買いたくもない恵方巻を買わされるのは、労働者としては納得がいきません。このような措置は違法ではないのでしょうか?琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に見解を伺いました。
自腹購入を迫ることは許されるのか?
川浪弁護士:「アルバイトに販売ノルマを課すこと自体に問題はありません。しかし、ノルマを達成できなかったからといって、自腹購入を迫ることは、その態様次第では違法と判断されて、店長及びその使用者(コンビニエンスストアの経営者)に損害賠償責任が発生する可能性があります。
あくまでアルバイトの自由意思を阻害しない範囲で自腹購入をお願いすることは許されます。しかし、アルバイトが明確に拒絶しているのにもかかわらず、高圧的な態度で執拗に自腹購入を求め続ける場合、または脅迫的な文言を用いて自腹購入を求める場合には、そういった言動が「アルバイトの人格権等を侵害する違法なものであり、不法行為(民法709条)に該当する」と評価され、民事上の損害賠償責任が発生する可能性があります。
そして、アルバイトの身体や自由、名誉等に対して害を加える旨を告知して脅迫したり、暴行を加えたりして、無理やり購入させた場合には強要罪(刑法223条1項)に問われる可能性(刑事責任を負う可能性)があります。
以上の通りですので、店長はノルマ不達成により在庫が余ったとしても、アルバイトに対して、自腹での購入をあくまでもお願いする程度にとどめるべきと考えます。ノルマを達成したか否かは、アルバイトの昇給にあたって考慮すればよいでしょう。
なお、仮にアルバイトが自腹購入に同意したとしても、勝手にアルバイトのバイト代から購入金額を控除することは賃金全額払いの原則(労働基準法24条1項)に反するので許されません。バイト代から控除するのであれば、そのことについてもアルバイトの同意を得ておかなければなりません」
ノルマそのものは問題ありませんが、アルバイトが拒絶しているにもかかわらず「自腹購入」を迫ることは、損害賠償の対象になり得るのですね。
店舗への自腹購入ノルマはどうなの?
恵方巻についてはコンビニエンスストアなど、フランチャイズ契約の店舗が本部から販売ノルマを課され、達成できない場合、同様に自腹購入を迫られることもあると聞きます。こちらは違法にならないのでしょうか? 琥珀法律事務所の川浪芳聖弁護士に見解を伺いました。
川浪弁護士:「フランチャイズ契約は、本部(フランチャイザー)と加盟店(フランチャイジー)の間で締結されるものですが、加盟店は本部から独立した事業者ですので、両者の取引には独占禁止法が適用されることになります。
フランチャイズ契約においては、一般的に、本部が加盟店に対して、継続的に経営上の指導や援助を行うことになっていますが、本部が指導の範囲を超えて、加盟店に対して無理なノルマを課し(加盟店の意思を無視して実際の販売に必要な範囲を超える商品を仕入れさせ)、ノルマを達成できない場合に自腹購入を迫るなどした場合には、本部が加盟店に対して「自己の取引上の地位が相手方(加盟店)に優越していることを利用して」、正常な商慣習に照らして不当に商品を購入させたといえ、独占禁止法が禁止する「優越的地位の濫用」に該当し得ます(独占禁止法2条9項5号、19条)。
(なお、本部が加盟店に対して「取引上優越した地位にあること」が同条項適用の前提となりますが、その判断は個別具体的になされます。)
この場合、公正取引委員会によって、本部は当該行為の差し止め等を命じられたり、課徴金の納付を命じられる可能性があります。
その他、本部の担当者が加盟店の責任者(担当者)に対して、脅迫や暴行を用いて商品を仕入れさせたような場合(ノルマを課した場合)には、1と同様に、同行為は、民事上は不法行為(民法709条)、刑事上は強要罪(刑法223条)に該当する可能性があります。これらに該当した場合、本部の担当者は個別に損害賠償責任を負い、本部は使用者責任(民法715条)を負います」
無理なノルマは違法になりうる
ノルマを課すこと自体は問題はありませんが、拒絶する人に自腹購入を迫ることは違法になり得ます。節分はスーパーマーケットやコンビニにとっては恵方巻を売る「商機」ですが、それが本来の目的とかけ離れていることはいうまでもありません。
無理な恵方巻ノルマは止めてもらいたいものですね。
*取材協力弁護士: 川浪芳聖(琥珀法律事務所。些細なことでも気兼ねなく相談できる法律事務所、相談しやすい弁護士を目指しています。)
*取材・文:櫻井哲夫(本サイトでは弁護士様の回答をわかりやすく伝えるために日々奮闘し、丁寧な記事執筆を心がけております。仕事依頼も随時受け付けています)
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