「ユーモアとは『にもかかわらず』笑うこと」ドイツのことわざに学ぶ、笑いの大切さ
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吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
ユーモアは世界をまろやかにする
「ユーモアとは『にもかかわらず』笑うことである」
これはドイツの有名なことわざです。悲しいにもかかわらず、ピンチにもかかわらず。本来なら笑えるような状況ではないときに、ふっと感じるおかしみ。人間は時に滑稽なことをしてしまいます。自分の滑稽さを客観的に眺めることができるかどうか。そしてそれを笑えるかどうか。「にもかかわらず」笑えることで気が楽になり、困難の中に光をもたらします。
まだ大学生だった頃のことです。午前中にプライドをズダズダにされるような事が起き、落ち込んで部屋にこもっていた日のことです。
考えたくないので寝てしまおうと、ベッドに潜っていました。夕方近く、食いしん坊の男子友達から電話がかかってきました。
「姉貴の友達からおっきなヒラメが届いたから、食べにおいでよ」
ヒラメ! 行く行く!
私は飛び起きて支度をして、友達の家に向かいました。ヒラメの薄造り、潮汁。おいしい!おいしい!と舌鼓を打ち、すっかりご機嫌になっていました。
地獄の午前中から天国の夜ごはん。この時、あれほど落ち込んでいたにもかかわらず、ヒラメでご機嫌になった自分のことがおかしくて、人間のおかしみを感じていました。この話を面白おかしく人に話すと皆んな喜んでくれます。直接ユーモアとは言えないかもしれませんが、自分の滑稽さを笑えたことで落ち込みから救われたのです。
ユーモアは場を和ませます。ユーモアの根底にあるのは心のふれあいであり、思いやりです。笑いが起き、リラックスした雰囲気が人間関係をまろやかにします。そういう意味で、ユーモアは愛なのです。
ジョークは、時に相手をばかにしたり、人をけなしたりする事で笑いをとります。自分の滑稽さを笑う。そこが大きな違いです。ユーモアには品があり、ほっこりとした雰囲気を作るのです。そこがユーモアとジョークの一線を画する所以です。
上智大学の名誉教授で「死生学」の研究をされているアルフォンス・デーケン先生は、死とユーモアの関係性について著書の中で述べています。
「私たちが人間らしく、よりよく生きていくためにはユーモアが不可欠」
「自分なりの死生観を身につけるためにもユーモア感覚は大切である」
困難の中で、ユーモアは一筋の光となり、病の床にあってユーモアを発揮することで、家族やまわりの人たちの心を和ませます。
「死ぬ瞬間まで、楽しく生きましょう」
このような言い方も、デーケン先生のユーモアあふれる表現です。なんだかほっこりします。上質のユーモアを持てるようになるために、人間の愛すべきところを見つけていく。そんな愛のこもった目で世界を眺めると、違った風景が見えてくるかもしれません。
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」