entertainment

ドラマタイトルの意味に納得… 『クジャクのダンス、誰が見た?』最終話

By - かな  公開:  更新:

Share Post LINE はてな コメント

SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している、かな(@kanadorama)さん。

2025年1月スタートのテレビドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)の見どころを連載していきます。以下、ネタバレが含まれます。

かなさんがこれまでに書いたコラムは、こちらから読めます。

どこかにいると思っていたクジャクは、既に死んでいた。

他人に殺人の罪をなすりつけて、のうのうと生き延びていると思われた真犯人は、そもそもどこにもいなかった。

踊ったクジャクは死んでいて、それを見たただ一人の人物は、自身の保身のために冤罪を黙殺していた。

だからこそ、この物語のタイトルは、クジャクのダンスを『誰が見た?』だったのだと、最終回を見届けた今、納得したのである。

クリスマスイブの夜に殺害された父は、娘の心麦(広瀬すず)に手紙を残していた。

犯人として逮捕される青年・遠藤友哉(成田凌)は冤罪であること、そのことを弁護士の松風(松山ケンイチ)の力を借りて明らかにしてほしいということ。

父の手紙を信じ、松風と事件を調べ始めた心麦は、次々と明らかになる虚実に迷いながらも、ようやく真実にたどり着く。

そこには、心麦自身の出生の秘密が深く絡んでいた。

『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写

今作ではさまざまな父子のありようが描かれている。

血は繋がらないが深い信頼関係のある心麦と春生(リリー・フランキー)。

『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写

幼い頃に生き別れても、切れぬ父子の縁を痛感する松風と久世(篠井英介)。

不遇な人生の中、同じような道を歩くことで初めて理解しあう友哉と力郎(酒向芳)。

『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写真

婚外子として互いに歪んだままの愛着を持つ阿南(瀧内公美)と鳴川(間宮啓行)。

そして最終回にもう一人、最後の父親として林川安成(野間口徹)が登場する。

『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写真

林川家という『家』を何より重んじる安成は、妻が無理心中で家族を殺害したというおぞましい事実を目の前に、「こんなことが世間に知られたら林川家は終わりだ」「林川家の名誉のために全員殺されたことにする」と現実から逃げ、自殺してしまう。

乳児を抱えた愛人の京子(西田尚美)も、生まれたばかりの乳児も、生きる意味として彼の眼中にはない。

『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写真

家という外形しか見なかった男が自ら選んだ破滅が、結果的に不幸な父と息子を冤罪に引きずり込んだのである。

そして、父と息子の二世代に連なる冤罪と欺瞞(ぎまん)を明るみにしたのが、そのときに『家』という外形からはじき出された乳児で、血の繋がらない家庭で愛情深く育てられた女であったというのは非常に示唆的だった。

『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写真

物語を通して、心麦と検察官の阿南は同じ『父の愛娘』として対照的な存在だが、原作にはない、阿南と鳴川のその後のやりとりがドラマで見られたのは、最終回の中でもとりわけ嬉しかった。

死刑囚として収監されていても、殺人の容疑でこれから裁かれる男であっても、罪をかぶって失踪した男であっても、子がそれを望めば、彼らは子にとっての父親でありえるというのは、救いである。

『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写

おそらく凄惨で映像として描くのが難しかったのかもしれないが、原作には京子が親のネグレクトで自身の弟を死なせ、廣島育美(池谷のぶえ)や赤沢正(藤本隆宏)と出会い、平穏に暮らしながらも深い闇を抱えて生きる様子が描かれている。

その薄ら寒さを感じるような描写もまた秀逸なので、興味をお持ちの方は原作もチェックしてほしい。

『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写真

長い物語は、春生が残した動画を心麦が見つける場面で終わる。

心麦に感謝の気持ちを述べる春生の言葉は、親を真に親たらしめるのは子の存在だと教えてくれる。親と子は、互いに照らし合うもので、どちらかの輝きだけで存在するものではないのだろう。

『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写

父性の持つ善の部分を純粋に体現するかのような、春生役のリリー・フランキーの素晴らしい演技は、物語全体の土台だった。

そして、暗い森の中を延々とさまようような展開の中で、心麦、松風、神井(磯村勇斗)、波佐見(森崎ウィン)らが交わす軽妙な会話は、まさに森に差し込む陽光だった。

『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写
『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写

きっと彼らはこの先、悲しみで食事できない誰かのために、その人にとっての『ちくわカレー』を作ったり、屋台のラーメンに誘ったりすることで、人生は苦しくとも生きる価値があると伝えるだろう。

あるいは子供にカーブの投げ方を教えることで、よりよい明日が来ることを伝えるだろう。

そんな未来に繋がるような、力強くも暖かな余韻の残る物語だった。

『クジャクのダンス、誰が見た?』場面写

『クジャクのダンス、誰が見た?』は、『TVer』で最新話を無料配信中。動画配信サービス『U-NEXT』『Netflix』では、最新話まで全話配信中です。


[文・構成/grape編集部]

かな

SNSを中心に注目ドラマの感想を独自の視点でつづり人気を博している。
かなさんのコラムはこちら

はいだしょうこさん

はいだしょうこ、新作の『スプーの絵』を披露 「泣く子も黙る」「さすが画伯」はいだしょうこさんが誕生日の記念に、スプーの絵を披露。ファンからは反響が上がっています。

杏さん

フィンランドに引っ越した杏 大切に持ってきた『セリア』で購入したものとは杏さんが引っ越し先のフィンランドに、セリアと無印良品のアイテムを持ち込み!視聴者からは「親近感がわく」「庶民的」の声が上がっています。

Share Post LINE はてな コメント

page
top