ダンボールの奥に眠っていた…17年前の母の手紙は、かけがえのない贈りもの By - 吉元 由美 公開:2025-05-04 更新:2025-05-04 エッセイ吉元由美連載 Share Post LINE はてな コメント 吉元由美の『ひと・もの・こと』 作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。 たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。 母からの贈りもの〜17年前の手紙から 片付けをしていると、思いがけないものとの出会いがあります。 仕事部屋を何度か引っ越したことがあり、開かずのダンボール箱が10数個そのままになっていました。 『CD』『本』『事務関係』などとシールが貼ってあるものの、何がどのくらい入っているのか忘れています。 ダンボールも傷んでいるので、一つ一つ開けて、必要なものと処分するものに仕分けをすることにしました。 『資料』とラベリングされた箱の中のものは、ほとんど資料としては古くなり処分するのですが、その中になぜか1通の手紙が入っていました。 宛名には娘の名前、母から娘への手紙でした。 日付を見ると2008年8月、娘は小学5年生でした。 その夏、アメリカの友人宅にホームステイをし、10日間のサマースクールに参加しました。 母は出発前にこの手紙を娘に渡したのでしょう。 「Yちゃん、アメリカに出発の日ですね。おめでとう。可愛い小さな孫だと思っていたら、あなたはあっという間に5年生の夏を迎えました」 こんな言葉で始まった手紙には、北京オリンピックが始まって、心を揺さぶるような感動をもらっていること、その反面悲しいことが世界では起こっていること。 みんな幸せになりたいのに、なぜこうなってしまうのか。 大人たちはもっと考えなければならない。 5年生はとても大事な年、おばあちゃんも5年生の時にすごい経験をしたこと。 そして、外から帰ったらうがい、手洗いをすること。 ステイ先のご家族や皆さんに可愛い笑顔で挨拶してね。ありがとうを心をこめて。 大きな社会の中で自分を発見してください…と、便箋6枚に母の思いが綴られていました。 私の知らないことも書かれていました。 孫の出発にと書き始め、筆の進むまま思いがけない思いがあふれてきたのかもしれません。 手紙の最後に「76歳のおばあちゃんは、孫たちの未来を想像しています。世界が平和でありますように。みんなそれぞれに自分の特徴を生かして、勇気を持って生きていけますように。人の心をわかり合える優しい気持ちを。感謝の気持ちを素直に言葉に表せる人に」と。 母が亡くなって9年という年月が過ぎました。 思いがけず書類の山の中から見つかった手紙は、私にとってもかけがえのない贈りものになりました。 母が私に命を与え、私が娘へと命をつなげたように、私も母のように娘にそうあるように祈っているのです。 きっとこのタイミングで、私自身、ちゃんと受け取ることが必要だったのかもしれません。 そんなことを思い、手紙をアメリカに住む娘へのパッケージの中に入れました。 大人になった今、もっと深く受け取ってくれることを願いながら。 いのちを紡ぐ言葉たち かけがえのないこの世界で吉元 由美1,584円(07/26 06:00時点)Amazon楽天市場YahooAmazonの情報を掲載しています ※記事中の写真はすべてイメージ 作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー [文・構成/吉元由美] 吉元由美 作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。 ⇒ 吉元由美オフィシャルサイト ⇒ 吉元由美Facebookページ ⇒ 単行本「大人の結婚」 北斗晶「海苔の代わりに…」 “最高のおにぎり”と称するアレンジとは?北斗晶さんが海苔の代わりに使ったのは?『最高のおにぎり』と称するアレンジがこちらです。 年の差婚で注目された芸能人夫婦、結婚後に見せた愛のかたちに感動を呼ぶ年の差婚を発表した芸能人たちの近況は?愛のカタチに年齢は関係ないようです! Share Post LINE はてな コメント
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
母からの贈りもの〜17年前の手紙から
片付けをしていると、思いがけないものとの出会いがあります。
仕事部屋を何度か引っ越したことがあり、開かずのダンボール箱が10数個そのままになっていました。
『CD』『本』『事務関係』などとシールが貼ってあるものの、何がどのくらい入っているのか忘れています。
ダンボールも傷んでいるので、一つ一つ開けて、必要なものと処分するものに仕分けをすることにしました。
『資料』とラベリングされた箱の中のものは、ほとんど資料としては古くなり処分するのですが、その中になぜか1通の手紙が入っていました。
宛名には娘の名前、母から娘への手紙でした。
日付を見ると2008年8月、娘は小学5年生でした。
その夏、アメリカの友人宅にホームステイをし、10日間のサマースクールに参加しました。
母は出発前にこの手紙を娘に渡したのでしょう。
「Yちゃん、アメリカに出発の日ですね。おめでとう。可愛い小さな孫だと思っていたら、あなたはあっという間に5年生の夏を迎えました」
こんな言葉で始まった手紙には、北京オリンピックが始まって、心を揺さぶるような感動をもらっていること、その反面悲しいことが世界では起こっていること。
みんな幸せになりたいのに、なぜこうなってしまうのか。
大人たちはもっと考えなければならない。
5年生はとても大事な年、おばあちゃんも5年生の時にすごい経験をしたこと。
そして、外から帰ったらうがい、手洗いをすること。
ステイ先のご家族や皆さんに可愛い笑顔で挨拶してね。ありがとうを心をこめて。
大きな社会の中で自分を発見してください…と、便箋6枚に母の思いが綴られていました。
私の知らないことも書かれていました。
孫の出発にと書き始め、筆の進むまま思いがけない思いがあふれてきたのかもしれません。
手紙の最後に「76歳のおばあちゃんは、孫たちの未来を想像しています。世界が平和でありますように。みんなそれぞれに自分の特徴を生かして、勇気を持って生きていけますように。人の心をわかり合える優しい気持ちを。感謝の気持ちを素直に言葉に表せる人に」と。
母が亡くなって9年という年月が過ぎました。
思いがけず書類の山の中から見つかった手紙は、私にとってもかけがえのない贈りものになりました。
母が私に命を与え、私が娘へと命をつなげたように、私も母のように娘にそうあるように祈っているのです。
きっとこのタイミングで、私自身、ちゃんと受け取ることが必要だったのかもしれません。
そんなことを思い、手紙をアメリカに住む娘へのパッケージの中に入れました。
大人になった今、もっと深く受け取ってくれることを願いながら。
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※記事中の写真はすべてイメージ
作詞家・吉元由美の連載『ひと・もの・こと』バックナンバー
[文・構成/吉元由美]
吉元由美
作詞家、作家。作詞家生活30年で1000曲の詞を書く。これまでに杏里、田原俊彦、松田聖子、中山美穂、山本達彦、石丸幹二、加山雄三など多くのアーティストの作品を手掛ける。平原綾香の『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在は「魂が喜ぶように生きよう」をテーマに、「吉元由美のLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信。
⇒ 吉元由美オフィシャルサイト
⇒ 吉元由美Facebookページ
⇒ 単行本「大人の結婚」