日本人11年連続イグノーベル賞 メスにオス器官の昆虫発見で生物学賞受賞
公開: 更新:

写真はイグノーベル賞授賞式に出席したMichael Skuhersky 氏

しゃっくりを止めるメカニズムがついに解明された!?ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。 しゃっくりを止める...

16分間も水の中に潜るトカゲを発見!その秘密はスキューバタンク方式?ニッポン放送で「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターなどを務め、現在はBayFMでITコメンテーターとしても出演中の土屋夏彦が、最近のIT・科学・経済のニュースを独自の目線で切り取ります。 え、トカゲが16分...






毎年「人々を笑わせ、そして考えさせてくれる研究」をテーマに、ノーベル賞のパロディとして1991年に創設されたイグ・ノーベル賞。
27回目の授賞式が(日本時間)9月15日、アメリカのハーバード大学で行われ、昨年に続き日本人の研究が受賞、その模様が全世界に向けてライブ配信されました。日本人の受賞は2007年から11年連続、1991年からは22回受賞しています。
日本人研究者が「生物学賞」を受賞
受賞したのは、北海道大学の吉澤和徳准教授(46)と、慶応大学の上村佳孝准教授(40)。メスにオスのような伸縮可能な生殖器がある昆虫を発見したことがポイントとなって、見事『生物学賞』に選ばれました。
今回の受賞は、2014年に発表された論文がベースになっています。発表から3年を経て世界的な注目を集めた形で、受賞の知らせは研究者たちにとっても大きな驚きだったようです。
過去の受賞研究にも話題作が続々
これまでの受賞研究で話題になったものでは、2002年の犬の言葉を日本語に翻訳してくれる『バウリンガル』が平和賞に、1997年には日本人の労働時間がこの飼育に費やされたとして『たまごっち』が経済学賞を受賞、またドクター中松さんの36年にわたって自分の食べた食事を撮影して食べものが頭の働きや体調に与える影響の研究をして2005年に受賞されています。
「笑える、でも実はちゃんとした研究」という点がイグノーベル賞の真骨頂で、日本からの受賞が続いているのも、こうした独自の視点を持つ研究者が多いからかもしれません。
「トリカヘチャタテ」の交尾を解明した研究
そんなイグノーベル賞ですが、今回の受賞研究は、ブラジルの洞窟でみつかった新種のチャタテムシ『トリカへチャタテ』の交尾についての研究。
吉澤准教授と、上村准教授らがまじめに研究したところ、40~70時間と長時間にわたる交尾において、メスがオスのような突起物(ペニス)をオスに挿入することでオスとメスの交尾行為(器官)が完全に逆転することを解明、2014年に論文として発表したものです。
40~70時間という交尾時間の長さも、生物学的には異例の部類に入ります。この長さを確保するために、メス側が積極的な役割を担う形に進化したと考えられているようです。
チャタテムシの仲間は世界に5千種類ほど存在し、我々の生活圏内でもよく見かける種類もあるそうですが、交尾行為が逆転するのはブラジルの洞窟にいる4種類だけなのだそうです。これを吉澤准教授らが見つけ、さらに研究をすすめる中、メスが長い交尾を確実なものにするために、交尾行為が逆転するといった進化を遂げたのではないかと仮説を立てたということです。
洞窟という限られた環境の中で、栄養の少ない状況に適応した結果として、このような独自の進化が生まれたと研究チームは見ています。
この昆虫の命名については、平安時代後期の宮中を舞台に姉弟が性別を入れ替えて暮らす物語を描いた『とりかへばや物語』からトリカヘチャタテという和名を付けたそうです。研究内容と和名の由来がぴったりと重なる点も、イグノーベル賞らしいユーモアを感じさせますね。
授賞式は洞窟からビデオ中継で参加
研究チームは今回の授賞式の際に九州で洞窟の調査を行っていたため、洞窟から授賞式にビデオメッセージを送り、会場を沸かせました。受賞を知らされた後もフィールドワークを続けていたという点に、研究者としての姿勢が表れているようです。
「世界中の辞書には、男性の生殖器は男性のものと書かれていますが、私たちの発見によってすべて時代遅れになりました」(ビデオメッセージより)
このコメントは会場でも大きな笑いと拍手を呼んだそうで、まさにイグノーベル賞にふさわしいスピーチでした。
今年はほかにもユニークな研究が受賞
ちなみに今年のイグノーベル賞はほかにも、オーストラリアの「生きたワニとの遭遇がギャンブル嗜好(しこう)性に与える影響」(経済学賞)、イギリスの「なぜ老人の耳は大きいか」(解剖学賞)などの研究が受賞しています。
どれも一見すると奇妙なテーマに見えますが、その背後には真剣な調査と考察があります。「笑いながらも考えさせられる」というイグノーベル賞の精神が、今年も存分に発揮された授賞式だったようです。
[文・構成 土屋夏彦]
土屋夏彦
上智大学理工学部電気電子工学科卒業。 1980年ニッポン放送入社。「三宅裕司のヤングパラダイス」「タモリのオールナイトニッポン」などのディレクターを務める傍ら、「十回クイズ」「恐怖のやっちゃん」「究極の選択」などベストセラーも生み出す。2002年ソニーコミュニケーションネットワーク(現ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)に転職。コンテンツ担当ジェネラルプロデューサーとして衛星放送 「ソネットチャンネル749」(現アジアドラマチックTV★So-net)で韓国ドラマブームを仕掛け、オンライン育成キャラ「Livly Island」では日本初の女性向けオンラインで100万人突破、2010年以降はエグゼクティブプロデューサー・リサーチャーとして新規事業調査を中心に活動。2015年早期退職を機にフリーランス。記事を寄稿する傍ら、BayFMでITコメンテーターとしても出演中、ラジオに22年、ネットに10年以上、ソーシャルメディア作りに携わるメディアクリエイター。